中間管理職に改善推進者になってもらうためには 人材育成・組織・マネジメント(その11)

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生産マネジメント

 

【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として「人材育成・組織・マネジメント」をテーマに連載で解説します。第11回目となります。

 

◆ 改善の抵抗勢力は中間管理職

1. 中間管理職の抵抗は職場全体に影響

 会社の組織構造を描くと一般的にピラミッド型になります。その三角形の上にはトップがあり、その下にはマネジャーがいて、その下が一般社員となります。この真ん中のマネジャーは中間管理職とも呼ばれる階層です。最近では口コミ効果の影響が大きくあるようで、コンサルティングを依頼されるのは直接トップからの依頼が多くなっています。従来はマネジャーの方々がセミナーや工場見学、視察をしてコンサルタントを知り、会社に持ち帰ってトップを何とか口説いていることがほとんどで皆熱心でした。

 しかしトップ自らがコンサルタントを呼ぶようになってからなのか、最も反対をして抵抗勢力となっているのがこの中間管理職になってきたことを感じます。特にこの数年間はリーマン・ショックなどの影響で、世界中の製造業の市場変化におけるスピードが一層速くなってきてから、このことをますます感じます。上下に挟まれ、身動きが取りにくくなったのか、時代の変化に付いていく気がそがれたのか分かりませんが、残念な気持ちです。

 トップとしては自分の会社は自身の財産でもあるわけで、これらを守り生き残ることを使命として捉えられておられますので、それこそ本気になって改善に取り組みます。さらにコンサルタントを呼んででも、会社や工場を何とか改善しようと思う気持ちも人一倍持っておられます。また一般社員は実際に製造現場で物を取り扱っているので、市場変化の状況を肌で感じ、積極的に生産活動に取り組んでいますので、実際にコンサルティングに入ると、トップや一般社員は本当にやる気を持って取り組まれていることを感じます。

 しかしマネジャー自体が抵抗勢力となると、その職場全体に影響してしまうので、組織的にも大きな問題になってきます。特に部下がやる気を出しても、そのやる気を削ぐような言動を発すると部下は何もできなくなります。さらに上司への信頼を喪失してしまうので、期待した成果を出せなくなってしまいます。部下が家に帰ってから、家族とのコミュニケーションも気まずくなることが想像できます。それほど上司の影響が大きいことを、トップと中間管理職の皆さんには再認識してもらいたいのです。

 

2. マネジャーは改善のエンジン

 なぜ中間管理職の人たちは改善に反対するのでしょうか?それは今までやってきた仕事を変えたくない気持ちがまだ強く残っているからではないでしょうか。また本来のマネジャーとしての業務を忘れてしまい、目の前の業務に没頭して何も考えていないこともありそうです。さらには定年まであと少しだしこのままやって定年を迎えておさらばしたい、今さら新しいことをやるのは面倒だ、上からも下からも突き上げられホトホト参っている、などと色々なみえない本音がありそうです。

 言い訳が上手いのもこの階層ですから、トップからの説得もやっかいなことでしょう。コンサルティングで訪問していても、表面上は大賛成のような態度を取っていても、著者が帰ると手のひらを返したように元に戻してしまうことを何度も経験してきました。

 

 中間管理職は、上と下をつなぐ関節のようなもので、組織全体として活動していく要になっているはずです。部下を抱えて仕事しているわけですが、実は部下の下には見えない家族がいることを忘れているかもしれません。また自分の出世のことだけを考えているかもしれません。見えている部下だけのことしか見えない上司はマネジャーとして失格だと考えます。他の人よりも仕事が上手くできたからマネジャーになったのではありません。もっと大切な人のことを考えて、職場や組織の人間関係をよくしていくのがマネジャーとしての本来の仕事だと考えます。組織で仕事をしていることを忘れてはなりません。そのことを頭ではなく、腹の底から納得することが大切です。

 このように反対していた人たちの考え方と行動を変えることは難しいことですがそれが可能です。実は反対派の9割は、何度かワークショップを体験していくとある時に気づきます。気づけば改善活動に賛成して、推進者にもなっていきます。彼らは何かこだわりを持っているので、それらを納得できるようにしてあげることが必要です。

 それには、十分なコミュニケーションの場を持つことが大切です。そして本気になって取り組めば、改善をして社員を引っ張る力を持っている階層でもあるのです。この人たちが本気になって改善に取り組めるように説得する必要があります。まずは本音を聞き出して、必要によりガス抜きをしながら彼らを認めることです。そして適正な評価をして褒めてあげ、少しずつ彼らの心を開かせて、自ら気づかせるようにします。この階層の協力があれば、改善を継続する強力なエンジンに変身されます。

 

3. 改善推進者になってもらう

 この中間管理職の人たちに賛成派となってもらうためには、前述の内容に加え次の2点があります。

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生産マネジメント

 

【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として「人材育成・組織・マネジメント」をテーマに連載で解説します。第11回目となります。

 

◆ 改善の抵抗勢力は中間管理職

1. 中間管理職の抵抗は職場全体に影響

 会社の組織構造を描くと一般的にピラミッド型になります。その三角形の上にはトップがあり、その下にはマネジャーがいて、その下が一般社員となります。この真ん中のマネジャーは中間管理職とも呼ばれる階層です。最近では口コミ効果の影響が大きくあるようで、コンサルティングを依頼されるのは直接トップからの依頼が多くなっています。従来はマネジャーの方々がセミナーや工場見学、視察をしてコンサルタントを知り、会社に持ち帰ってトップを何とか口説いていることがほとんどで皆熱心でした。

 しかしトップ自らがコンサルタントを呼ぶようになってからなのか、最も反対をして抵抗勢力となっているのがこの中間管理職になってきたことを感じます。特にこの数年間はリーマン・ショックなどの影響で、世界中の製造業の市場変化におけるスピードが一層速くなってきてから、このことをますます感じます。上下に挟まれ、身動きが取りにくくなったのか、時代の変化に付いていく気がそがれたのか分かりませんが、残念な気持ちです。

 トップとしては自分の会社は自身の財産でもあるわけで、これらを守り生き残ることを使命として捉えられておられますので、それこそ本気になって改善に取り組みます。さらにコンサルタントを呼んででも、会社や工場を何とか改善しようと思う気持ちも人一倍持っておられます。また一般社員は実際に製造現場で物を取り扱っているので、市場変化の状況を肌で感じ、積極的に生産活動に取り組んでいますので、実際にコンサルティングに入ると、トップや一般社員は本当にやる気を持って取り組まれていることを感じます。

 しかしマネジャー自体が抵抗勢力となると、その職場全体に影響してしまうので、組織的にも大きな問題になってきます。特に部下がやる気を出しても、そのやる気を削ぐような言動を発すると部下は何もできなくなります。さらに上司への信頼を喪失してしまうので、期待した成果を出せなくなってしまいます。部下が家に帰ってから、家族とのコミュニケーションも気まずくなることが想像できます。それほど上司の影響が大きいことを、トップと中間管理職の皆さんには再認識してもらいたいのです。

 

2. マネジャーは改善のエンジン

 なぜ中間管理職の人たちは改善に反対するのでしょうか?それは今までやってきた仕事を変えたくない気持ちがまだ強く残っているからではないでしょうか。また本来のマネジャーとしての業務を忘れてしまい、目の前の業務に没頭して何も考えていないこともありそうです。さらには定年まであと少しだしこのままやって定年を迎えておさらばしたい、今さら新しいことをやるのは面倒だ、上からも下からも突き上げられホトホト参っている、などと色々なみえない本音がありそうです。

 言い訳が上手いのもこの階層ですから、トップからの説得もやっかいなことでしょう。コンサルティングで訪問していても、表面上は大賛成のような態度を取っていても、著者が帰ると手のひらを返したように元に戻してしまうことを何度も経験してきました。

 

 中間管理職は、上と下をつなぐ関節のようなもので、組織全体として活動していく要になっているはずです。部下を抱えて仕事しているわけですが、実は部下の下には見えない家族がいることを忘れているかもしれません。また自分の出世のことだけを考えているかもしれません。見えている部下だけのことしか見えない上司はマネジャーとして失格だと考えます。他の人よりも仕事が上手くできたからマネジャーになったのではありません。もっと大切な人のことを考えて、職場や組織の人間関係をよくしていくのがマネジャーとしての本来の仕事だと考えます。組織で仕事をしていることを忘れてはなりません。そのことを頭ではなく、腹の底から納得することが大切です。

 このように反対していた人たちの考え方と行動を変えることは難しいことですがそれが可能です。実は反対派の9割は、何度かワークショップを体験していくとある時に気づきます。気づけば改善活動に賛成して、推進者にもなっていきます。彼らは何かこだわりを持っているので、それらを納得できるようにしてあげることが必要です。

 それには、十分なコミュニケーションの場を持つことが大切です。そして本気になって取り組めば、改善をして社員を引っ張る力を持っている階層でもあるのです。この人たちが本気になって改善に取り組めるように説得する必要があります。まずは本音を聞き出して、必要によりガス抜きをしながら彼らを認めることです。そして適正な評価をして褒めてあげ、少しずつ彼らの心を開かせて、自ら気づかせるようにします。この階層の協力があれば、改善を継続する強力なエンジンに変身されます。

 

3. 改善推進者になってもらう

 この中間管理職の人たちに賛成派となってもらうためには、前述の内容に加え次の2点があります。

  • マネジャー本来の業務を再確認してもらうために業務の5Sを実施する
  • マネジメントができる環境を整備して、組織として部下と一緒に取り組めるようにする

 つまり改善を推進していくには、まず現状、あるべき姿や将来のビジョン、さらに問題や課題が見えることが前提になります。それには「見える化」がヒントになります。一度仕事の棚卸を徹底的にやることが、見直しのよいスタートになります。

 具体的には生産管理板や改善管理板など、目で見る管理ツールを活用しますが、重要なのはできるだけ毎日手描きで記入することです。曖昧(あいまい)だった業務や作業分担、目標、日々の状況などが次第にみえるようになります。朝礼やシフト交代時にマネジャー自らがこの管理板を使って、思いや考え方などを毎日語り掛けていきます。次第に結果が出るように、毎日現場に入ってフォローすることで、部下も上司のやる気を感じ、一緒に行動するようになっていきます。そうしていくと、部下にその業務(責任も権限も)を任せられるようになり、負担も減って次第に改善ができるようになります。マネジャーが行動できるように、当然トップも現場に出て熱意を示す必要があります。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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