技術者能力の評価基準 -成果を出し続ける技術者の要件-

更新日

投稿日

1. 能力の評価基準策定の背景

 前回、個人能力の市場価値評価、キャリアチェンジがあることは当たり前を解説しました。今回は、成果を出し続ける技術者の要件です。人の能力は、点数だけで測れるわけではありません。しかし現実の厳しさを実感してもらい、継続教育や技術者のキャリア開発の重要性を訴えるために、研究・技術開発者キャリアの市場価値を社外専門家によりアセスメントしてみました。その結果、もはや学歴や知識は一部の職種を除いて評価されていませんでした。評価されていたことは、成果を出している方法、環境変化に対応できる適応力、リーダーシップ、マーケティング対応力、人材育成力、グローバルなものの考え方などのここでいうコンピテンシー(思考・行動特性)項目でした。

 その評価を受けて、実際に約10,000人のデータから、顕著な成果を出し続けている企業の技術者能力をいくつかの視点で切り分けて、統計的に分析してみました。それらを基に、不確実性の時代に生き残れる技術者像を、平易な文言で整理してみました。検討のたたき台の一つとして活用していただきたいと思います。

 

2. 8つの評価基準

 これから求められる人材像については、いろいろな考え方があると思います。ここでは、技術者に絞り例示しました。図1は、筆者がある企業の専門職制度を構築した時に、求められる人材像の任用要件をまとめ直し、図示したものです。能力評価の狙いを、差別化能力、発想能力などの社会で表現されている項目にコンピテンシー(思考・行動特性)辞書で定義した項目を当てはめ、そのレベルをガイドラインとして提示しています。

 ここで、コンピテンシーレベルの考え方として、その一部を紹介すると次のようになります。

  • (1) レベル5: その分野でのトップクラスの指導力がある(社外でもトップレベルである)。
  • (2) レベル4: その分野でリーダーが務まる(社内でトップレベルである)。
  • (3) レベル3: その分野で主担当者になれる(部門内で専門家として認められる)。

 技術者能力の評価基準

 図1 8つの能力の評価基準

 

3. 現場で技術力を磨くには、どうすればよいのか

 筆者はこれまでことあるごとに、技術力を次のように定義してきました。

  •  技術力=課題設定力+手段・工夫の明確化

 (発明=課題設定力+手段・工夫+技術的効果)

 「課題設定力」とは、どういう問題があるとか何のためにそれをやらなければいけないのかを、総合的に判断する能力です。「手段・工夫の明確化」とは、その課題を、創造性を発揮して、どのような方法やプロセスでブレークスルーしたかということです。つまり、発明の定義とほぼ一致しています。

 結論として、技術力を効率的に早期に高めるには、8つの能力をOJTを主体として高めの目標に向かってチャレンジし続けることがポイントなのです。

 なお、別の記事...

1. 能力の評価基準策定の背景

 前回、個人能力の市場価値評価、キャリアチェンジがあることは当たり前を解説しました。今回は、成果を出し続ける技術者の要件です。人の能力は、点数だけで測れるわけではありません。しかし現実の厳しさを実感してもらい、継続教育や技術者のキャリア開発の重要性を訴えるために、研究・技術開発者キャリアの市場価値を社外専門家によりアセスメントしてみました。その結果、もはや学歴や知識は一部の職種を除いて評価されていませんでした。評価されていたことは、成果を出している方法、環境変化に対応できる適応力、リーダーシップ、マーケティング対応力、人材育成力、グローバルなものの考え方などのここでいうコンピテンシー(思考・行動特性)項目でした。

 その評価を受けて、実際に約10,000人のデータから、顕著な成果を出し続けている企業の技術者能力をいくつかの視点で切り分けて、統計的に分析してみました。それらを基に、不確実性の時代に生き残れる技術者像を、平易な文言で整理してみました。検討のたたき台の一つとして活用していただきたいと思います。

 

2. 8つの評価基準

 これから求められる人材像については、いろいろな考え方があると思います。ここでは、技術者に絞り例示しました。図1は、筆者がある企業の専門職制度を構築した時に、求められる人材像の任用要件をまとめ直し、図示したものです。能力評価の狙いを、差別化能力、発想能力などの社会で表現されている項目にコンピテンシー(思考・行動特性)辞書で定義した項目を当てはめ、そのレベルをガイドラインとして提示しています。

 ここで、コンピテンシーレベルの考え方として、その一部を紹介すると次のようになります。

  • (1) レベル5: その分野でのトップクラスの指導力がある(社外でもトップレベルである)。
  • (2) レベル4: その分野でリーダーが務まる(社内でトップレベルである)。
  • (3) レベル3: その分野で主担当者になれる(部門内で専門家として認められる)。

 技術者能力の評価基準

 図1 8つの能力の評価基準

 

3. 現場で技術力を磨くには、どうすればよいのか

 筆者はこれまでことあるごとに、技術力を次のように定義してきました。

  •  技術力=課題設定力+手段・工夫の明確化

 (発明=課題設定力+手段・工夫+技術的効果)

 「課題設定力」とは、どういう問題があるとか何のためにそれをやらなければいけないのかを、総合的に判断する能力です。「手段・工夫の明確化」とは、その課題を、創造性を発揮して、どのような方法やプロセスでブレークスルーしたかということです。つまり、発明の定義とほぼ一致しています。

 結論として、技術力を効率的に早期に高めるには、8つの能力をOJTを主体として高めの目標に向かってチャレンジし続けることがポイントなのです。

 なお、別の記事でも紹介したGEの元CEOジャックウェルチも、筆者の持論とほぼ同じことを必要な能力要件として提示していました。「私が本当に求めているのは、何事かを達成しようとする情熱と意欲をもっている人間だ。自分を信じ、やればできるという気概をもつことこそ、私が自分の人生で一貫して求め続けてきたことだ。」

 このジャックウェルチのメッセージのキーワードをコンピテンシーで表現すれば、「達成しようとする意欲」が「やりきる力(達成思考力)」のことであり、「やればできるという気概」が「チャレンジし続けること(挑戦心)」のことになります。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

粕谷 茂

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを実施中。

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを...


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
相手の理解度を下げないやさしい伝え方とは

  【この連載の前回:あなたの「 やる気スイッチ 」はソコにある!へのリンク】   ある方から、「WEB研修に参加する機会が...

  【この連載の前回:あなたの「 やる気スイッチ 」はソコにある!へのリンク】   ある方から、「WEB研修に参加する機会が...


研修成果の出る組織と出ない組織はどこが違うのか、効果を高めるには

  今回は、研修効果を出す組織についておはなしします。研修効果を最大にするノウハウがここにあります。   【目次】1. 研修...

  今回は、研修効果を出す組織についておはなしします。研修効果を最大にするノウハウがここにあります。   【目次】1. 研修...


研修講師に必要なスキルとは

  1.研修講師に必要なスキルは、専門性だけではない 研修講師を選ぶ場合、実績はもちろん、その専門性を見極めて選択することが大切です。し...

  1.研修講師に必要なスキルは、専門性だけではない 研修講師を選ぶ場合、実績はもちろん、その専門性を見極めて選択することが大切です。し...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
【SDGs取り組み事例】自然と社会との共生を目指して 日本テクノ株式会社

従業員主体で環境保護、サステナビリティへの取り組み SDGs(持続可能な開発目標)の観点からみても重要な取り組みとして注目されている「エコチューニン...

従業員主体で環境保護、サステナビリティへの取り組み SDGs(持続可能な開発目標)の観点からみても重要な取り組みとして注目されている「エコチューニン...


人財教育・人材育成、相手の思考、相手を知るために直接相手に語ってもらう

  【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「行動科学」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュ...

  【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「行動科学」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュ...


‐能力開発のシステム創り 製品・技術開発力強化策の事例(その47)

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その46に続いて解説します。      (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確...

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その46に続いて解説します。      (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確...