個人能力の市場価値評価、キャリアチェンジがあることは当たり前!

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1. 能力の市場価値算出の背景

 よく、ヘッドハンティング会社や人材紹介会社のホームページで、「あなたの市場価値はいくら?」というようなキャッチフレーズを見かけます。実際には、人の能力は金額の多寡ではありませんが、残念ながら仕事の能力として市場価値が存在することは事実です。これを謙虚に受け入れて、今後どうするかを考えればよいと思います。ここで取り上げた市場価値のアルゴリズムは、大手人材コンサルタント会社と共同で試行錯誤したときのノウハウを参考に、簡易的にまとめ直したものです。具体的には、好業績を上げている技術者、シニアマネジメント層、中堅技術者などに協力をしていただき、体系化したものと同等です。この連休にでも概算を確認して、そこから気づきを得ていただければと思います。

 

2. あなたの年収を自己査定

 「キャリアショック」(高橋俊介著:東洋経済新報社)の中で、著者は、「キャリアショックの先進地である米国のビジネスマンだと転職を意味するジョブチェンジが9~12回、キャリアチェンジが3~5回ある。そうすることで、コンピテンシー(思考・行動特性)を高めていく。」と言っていました。もはや、日本でもサラリーマン人生でキャリアチェンジが2~3回あることは当たり前となっており、それをポジティブに受け入れる時代となっています。

 「市場価値」を金額で判断すること自体ナンセンスであるとする意見もあります。しかしそれはそれとして、どのような基準で評価されているのか、多くのサンプルを使い調査しました。その結果、客観的データとして、キャリアパスの目標設定および軌道修正のツールができあがったのです。また、市場で必要とされるコンピテンシー(思考・行動特性)の裏付けも把握できてきました。なお、「市場価値」調査の目的は、次のように定めました。

  • ①研究・技術開発領域での社員の能力の市場価値をマトリクス的に測定し、テンプレート化する。それを活用し、キャリアパスの目標設定および軌道修正のツールとする。
  • ②市場の求める人材像から、コンピテンシー(思考・行動特性)項目を抽出し変換する。
  • ③新しい専門職制度構築の価値基準の一つとして、市場での報酬との整合性を図る。

 

 市場価値評価のアルゴリズムとしては、2つに分類できます。1つ目の算定アルゴリズムは、現在の報酬を基準として専門スキル、コンピテンシー(思考・行動特性)、資格、役割などをプラス要因およびマイナス要因で、係数を掛け合わせて算出する方法です。2つ目の算定アルゴリズムは、年齢や企業特性や役職などをベースにしたモデル給与を決めておき、専門や語学スキル、コンピテンシー(思考・行動特性)、資格、技術分野の市場のニーズをプラス要因およびマイナス要因で係数を掛け合わせて算出する方法です。それらは、アルゴリズムこそ違え、現時点の技術者の市場価値を的確に表していたように思われます。

 図1では、モデル給与を年齢ではなく業務経験として、その幅を小さく設定しています。業務経験年数を設定した狙いは、反面教師としての失敗経験や先輩諸氏から受け継がれているノウハウを評価したものです。キャリア・コンピテンシー要因には、貢献利益を用い、できるだけ数値化します。この貢献利益は、それぞれの企業に合わせて運用することになるでしょう。ここでは、係数1.0を給与+αレベル、係数1.2を給...

1. 能力の市場価値算出の背景

 よく、ヘッドハンティング会社や人材紹介会社のホームページで、「あなたの市場価値はいくら?」というようなキャッチフレーズを見かけます。実際には、人の能力は金額の多寡ではありませんが、残念ながら仕事の能力として市場価値が存在することは事実です。これを謙虚に受け入れて、今後どうするかを考えればよいと思います。ここで取り上げた市場価値のアルゴリズムは、大手人材コンサルタント会社と共同で試行錯誤したときのノウハウを参考に、簡易的にまとめ直したものです。具体的には、好業績を上げている技術者、シニアマネジメント層、中堅技術者などに協力をしていただき、体系化したものと同等です。この連休にでも概算を確認して、そこから気づきを得ていただければと思います。

 

2. あなたの年収を自己査定

 「キャリアショック」(高橋俊介著:東洋経済新報社)の中で、著者は、「キャリアショックの先進地である米国のビジネスマンだと転職を意味するジョブチェンジが9~12回、キャリアチェンジが3~5回ある。そうすることで、コンピテンシー(思考・行動特性)を高めていく。」と言っていました。もはや、日本でもサラリーマン人生でキャリアチェンジが2~3回あることは当たり前となっており、それをポジティブに受け入れる時代となっています。

 「市場価値」を金額で判断すること自体ナンセンスであるとする意見もあります。しかしそれはそれとして、どのような基準で評価されているのか、多くのサンプルを使い調査しました。その結果、客観的データとして、キャリアパスの目標設定および軌道修正のツールができあがったのです。また、市場で必要とされるコンピテンシー(思考・行動特性)の裏付けも把握できてきました。なお、「市場価値」調査の目的は、次のように定めました。

  • ①研究・技術開発領域での社員の能力の市場価値をマトリクス的に測定し、テンプレート化する。それを活用し、キャリアパスの目標設定および軌道修正のツールとする。
  • ②市場の求める人材像から、コンピテンシー(思考・行動特性)項目を抽出し変換する。
  • ③新しい専門職制度構築の価値基準の一つとして、市場での報酬との整合性を図る。

 

 市場価値評価のアルゴリズムとしては、2つに分類できます。1つ目の算定アルゴリズムは、現在の報酬を基準として専門スキル、コンピテンシー(思考・行動特性)、資格、役割などをプラス要因およびマイナス要因で、係数を掛け合わせて算出する方法です。2つ目の算定アルゴリズムは、年齢や企業特性や役職などをベースにしたモデル給与を決めておき、専門や語学スキル、コンピテンシー(思考・行動特性)、資格、技術分野の市場のニーズをプラス要因およびマイナス要因で係数を掛け合わせて算出する方法です。それらは、アルゴリズムこそ違え、現時点の技術者の市場価値を的確に表していたように思われます。

 図1では、モデル給与を年齢ではなく業務経験として、その幅を小さく設定しています。業務経験年数を設定した狙いは、反面教師としての失敗経験や先輩諸氏から受け継がれているノウハウを評価したものです。キャリア・コンピテンシー要因には、貢献利益を用い、できるだけ数値化します。この貢献利益は、それぞれの企業に合わせて運用することになるでしょう。ここでは、係数1.0を給与+αレベル、係数1.2を給与の20倍レベル、係数1.5を給与の50倍レベルと定義しておきます。個人の属性的なスキルは、語学と保有資格の2つだけとしました。この意味は、資格などを取得した結果を評価するのではなく、“難しい資格などに挑戦してそれを達成するプロセス”を評価しています。これがコンピテンシーの正体なのです。さらに、技術の市場ニーズや業界特性などを加味します。それらを掛け合わせると250万円~3500万円までの幅で評価が可能で、企業も技術者も納得できる透明性のある報酬体系となるのではないでしょうか。  

人材の市場価値

図1 簡易版市場価値評価のアルゴリズム

参考文献

粕谷茂:プロエンジニア(コンピテンシー構築の極意)、株式会社テクノ、2002

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この記事の著者

粕谷 茂

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