課題や阻害・成功の要因 オープンイノベーションとは(その5)

更新日

投稿日

 
  技術マネジメント
 

 

【オープンイノベーションとは 連載目次】

 オープンイノベーション白書 第二版の中から興味深い内容をピックアップして、解説しています。今回は、その5です。
 
 「第5章 我が国のオープンイノベーションの 課題・阻害要因・成功要因」では2〜4章の事例から課題や阻害・成功の要因がまとめられています。この記事では、その中から気になった内容を3点あげました。
 

1. 目的の明確化

 
 何に挑戦するにしても目的ありきで決める必要性がオープンイノベーションへの取り組みでも明言されています。既にオープンイノベーションに取り組んでいる企業であっても、自社が何を実現したいかという定義や目的が曖昧なまま進め、オープンイノベーションを行うことが、組織の戦略・目標となってしまっている例が見受けられる。
 
 オープンイノベーションに限らず、手法ばかり目を向けるのではなく、何を実現したいのか、その後にはじめて実現するための手段は何かという順を守って考えたいものです。
 
 あくまでオープンイノベーションは課題を解決するための手段であり、誰もが理解できる目的を表明して進めることで、新規事業創出の機動力へとつながるはずです。
 

2. 組織風土の改革

 
 ここで興味深かった事例に、森永製菓における 「やりたければ自ら全工程を自分で行ってしまっても良い」 という制度を 作り、研究所員が外部を活用し、最終商品を上市できる 『森永新研究所』 というフロー を作ったというものです。
 
 一見さらっと進めたように見えますが、社内では混乱があったのではないかと推測します。私自身も経験があるのですが、自前主義の文化です。
 
 ある書籍にも記載されていたのですが、A、B同じような能力の組織があった場合、人は無条件に自分の組織が優秀だと思い込んでしまうというものがあります。極論を申しますと、自社が最も優秀だという思考です。
 
 「何をするか」の後の「どうやって実現するか?」では、外部資源と内部資源を客観的に評価し、自前前提にしない検討をした方が、本当に実現したい事業への近道となるのではないでしょうか?
 

3. 外部連携先の探索

 
 実現したい何かが決まり、いざ実現方法を検討するといった段階における外部連携先の探索は非常に骨が折れる作業です。理想の連携先の要件がまとまっていたとしても、完全にマッチするということは稀なのかもしれません。
 
 事例の中で、オープンイノベーションの取り組みが活発化している企業ほど外部連携先の探索に多様な手法を取り入れていることがわかる、という記載があります。
 
 マッチングサービスや人脈を使ったリサーチ方法以外に...
 
  技術マネジメント
 

 

【オープンイノベーションとは 連載目次】

 オープンイノベーション白書 第二版の中から興味深い内容をピックアップして、解説しています。今回は、その5です。
 
 「第5章 我が国のオープンイノベーションの 課題・阻害要因・成功要因」では2〜4章の事例から課題や阻害・成功の要因がまとめられています。この記事では、その中から気になった内容を3点あげました。
 

1. 目的の明確化

 
 何に挑戦するにしても目的ありきで決める必要性がオープンイノベーションへの取り組みでも明言されています。既にオープンイノベーションに取り組んでいる企業であっても、自社が何を実現したいかという定義や目的が曖昧なまま進め、オープンイノベーションを行うことが、組織の戦略・目標となってしまっている例が見受けられる。
 
 オープンイノベーションに限らず、手法ばかり目を向けるのではなく、何を実現したいのか、その後にはじめて実現するための手段は何かという順を守って考えたいものです。
 
 あくまでオープンイノベーションは課題を解決するための手段であり、誰もが理解できる目的を表明して進めることで、新規事業創出の機動力へとつながるはずです。
 

2. 組織風土の改革

 
 ここで興味深かった事例に、森永製菓における 「やりたければ自ら全工程を自分で行ってしまっても良い」 という制度を 作り、研究所員が外部を活用し、最終商品を上市できる 『森永新研究所』 というフロー を作ったというものです。
 
 一見さらっと進めたように見えますが、社内では混乱があったのではないかと推測します。私自身も経験があるのですが、自前主義の文化です。
 
 ある書籍にも記載されていたのですが、A、B同じような能力の組織があった場合、人は無条件に自分の組織が優秀だと思い込んでしまうというものがあります。極論を申しますと、自社が最も優秀だという思考です。
 
 「何をするか」の後の「どうやって実現するか?」では、外部資源と内部資源を客観的に評価し、自前前提にしない検討をした方が、本当に実現したい事業への近道となるのではないでしょうか?
 

3. 外部連携先の探索

 
 実現したい何かが決まり、いざ実現方法を検討するといった段階における外部連携先の探索は非常に骨が折れる作業です。理想の連携先の要件がまとまっていたとしても、完全にマッチするということは稀なのかもしれません。
 
 事例の中で、オープンイノベーションの取り組みが活発化している企業ほど外部連携先の探索に多様な手法を取り入れていることがわかる、という記載があります。
 
 マッチングサービスや人脈を使ったリサーチ方法以外にもイベント主催やCVC、アクセラレータープログラムの実践などの事例があがっていますが、注目したいのは、多様な手法に取り組むことです。
 
 新規事業の創出は、大手企業であってもベンチャー企業であっても、また個人事業主であっても成功するまで多様な手法を試し続けることであると確信しています。企業の開発リーダー、担当者が折れずに開発を進めるには、起業家精神の育成が必須なのかもしれません。
 
 次回は、JOICの活動を解説します。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
あなたには部下からの提案があるか?~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その25)

【目次】   国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコムでは、製造業に関するセミナーを常時...

【目次】   国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコムでは、製造業に関するセミナーを常時...


『価値づくり』の研究開発マネジメント (その19)

      研究開発担当者のオープンイノベーションへの抵抗の要因として、前回のその18で解説した「組織のホメオスタシス」の他に...

      研究開発担当者のオープンイノベーションへの抵抗の要因として、前回のその18で解説した「組織のホメオスタシス」の他に...


技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その38)

   前回は、アイデアを創出する活動として隣接可能性とMECEを説明しました。良いアイデアを創出するための大きな枠組みには『発散』と『収束...

   前回は、アイデアを創出する活動として隣接可能性とMECEを説明しました。良いアイデアを創出するための大きな枠組みには『発散』と『収束...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
精密鍛造金型メーカーが自社技術を起点に新商品開発に取り組んだ事例

※イメージ画像 1. 自社技術起点に新商品開発  今回は、精密鍛造金型メーカーとして創業し、現在は研究開発から部品製造まで精密鍛造に関するトータル...

※イメージ画像 1. 自社技術起点に新商品開発  今回は、精密鍛造金型メーカーとして創業し、現在は研究開発から部品製造まで精密鍛造に関するトータル...


新事業開発のステップを事例で考える

 中小ものづくり企業が自前のヒット商品を開発し、販売まで行うのは容易なことではありません。しかし、だからと言って下請け仕事を続けていて、利益を上げることは...

 中小ものづくり企業が自前のヒット商品を開発し、販売まで行うのは容易なことではありません。しかし、だからと言って下請け仕事を続けていて、利益を上げることは...


‐現場観察のチェックポイント‐  製品・技術開発力強化策の事例(その8)

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...