人的資源マネジメント:自律性(その3)

更新日

投稿日

◆自律した人になるために必要な2つのこと

 

1. 「ロウソク問題」回答

 
 前回はロウソク問題を紹介し、「やる気」にはいろいろな種類があって、創造性を必要とするヒューリスティックな問題には報酬や罰則による動機づけは逆効果であることを解説しました。ロウソク問題、解いてみましたか。解くのにどのくらい時間がかかりましたか。だいたい5~10分かかると言ったので、焦って余計に時間がかかった人もいるのではないでしょうか。 回答を載せていなかったので図28にそれを載せておきます。箱は画びょうを入れるものという「機能的固着」というとらわれをなくすことができるかどうかがポイントでした。まさに、ヒューリスティックな思考が要求される問題です。
 
人的資源マネジメント
図28.「ロウソク問題」回答
  
 このような問題に対する有効なやる気は、モチベーション3.0と呼んでいる内発的動機づけであること、そして、モチベーション3.0のためには自律性が重要であることも解説しました。今回は「自律」についてもう少し考えたいと思います。
 

2. 自律のためのスキル

 
 「自律」を大辞泉で調べると次のように書いてあります。
 

 【自律】

 他からの支配•制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること ↔ 他律。
 カントの道徳哲学で、感性の自然的欲望などに拘束されず、自らの意志によって普遍的道徳法則を立 て、これに従うこと ↔ 他律。
 
 自律のイメージをより明確にするために、反対語である「他律」についても見ておきましょう。
 

 【他律】

 自らの意志によらず、他からの命令、強制によって行動すること ↔ 自律。
 他の領域に支配されること。カントの道徳哲学で、意志が理性の先天的な法則に従わず、感性の、自然的欲望に拘束されること ↔ 自律。
 
 「律」とは、ある価値観や信条にもとづく規範やルールのことで、判断や行動の基準となるものだといえそうです。「自律」とは、他人の言動や起きた出来事などの自分の外のことに支配されることなく、自分自身の判断基準にしたがって物事を判断し、自分の意志で自発的に行動するということと言えるでしょう。
 
 自律性は生まれつき備わっているものではありません。後天的に身につけるものであり、誰もが自律性を手に入れ高めることができます。そのために必要となるものは何でしょうか。 ひとつは【認知をコントロールするスキル】、もう一つは【意志決定のスキル...

◆自律した人になるために必要な2つのこと

 

1. 「ロウソク問題」回答

 
 前回はロウソク問題を紹介し、「やる気」にはいろいろな種類があって、創造性を必要とするヒューリスティックな問題には報酬や罰則による動機づけは逆効果であることを解説しました。ロウソク問題、解いてみましたか。解くのにどのくらい時間がかかりましたか。だいたい5~10分かかると言ったので、焦って余計に時間がかかった人もいるのではないでしょうか。 回答を載せていなかったので図28にそれを載せておきます。箱は画びょうを入れるものという「機能的固着」というとらわれをなくすことができるかどうかがポイントでした。まさに、ヒューリスティックな思考が要求される問題です。
 
人的資源マネジメント
図28.「ロウソク問題」回答
  
 このような問題に対する有効なやる気は、モチベーション3.0と呼んでいる内発的動機づけであること、そして、モチベーション3.0のためには自律性が重要であることも解説しました。今回は「自律」についてもう少し考えたいと思います。
 

2. 自律のためのスキル

 
 「自律」を大辞泉で調べると次のように書いてあります。
 

 【自律】

 他からの支配•制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること ↔ 他律。
 カントの道徳哲学で、感性の自然的欲望などに拘束されず、自らの意志によって普遍的道徳法則を立 て、これに従うこと ↔ 他律。
 
 自律のイメージをより明確にするために、反対語である「他律」についても見ておきましょう。
 

 【他律】

 自らの意志によらず、他からの命令、強制によって行動すること ↔ 自律。
 他の領域に支配されること。カントの道徳哲学で、意志が理性の先天的な法則に従わず、感性の、自然的欲望に拘束されること ↔ 自律。
 
 「律」とは、ある価値観や信条にもとづく規範やルールのことで、判断や行動の基準となるものだといえそうです。「自律」とは、他人の言動や起きた出来事などの自分の外のことに支配されることなく、自分自身の判断基準にしたがって物事を判断し、自分の意志で自発的に行動するということと言えるでしょう。
 
 自律性は生まれつき備わっているものではありません。後天的に身につけるものであり、誰もが自律性を手に入れ高めることができます。そのために必要となるものは何でしょうか。 ひとつは【認知をコントロールするスキル】、もう一つは【意志決定のスキル】だと考えます。これらを、ひとつずつ解説したいと思います。
 
 ここで、先に進める前にひとつワークの提案です。自律した人とはどういう振る舞いをするのかをリストアップしてみてください。次回の自律性(その4)を読み進めるのに、突っ込みたいところが増えて面白いと思います。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
受験勉強の環境と試験の合格率とは無関係

 今回の解説は、「技術士第二次試験での受験勉強の環境と試験の合格率とは無関係である」という内容です。   1. 受験勉強の環境の3パターン  技...

 今回の解説は、「技術士第二次試験での受験勉強の環境と試験の合格率とは無関係である」という内容です。   1. 受験勉強の環境の3パターン  技...


事務の生産性向上とは【連載記事紹介】

    事務の生産性向上が無料でお読みいただけます!   ◆事務の生産性向上とは 政府も「生産性向上」を重要施...

    事務の生産性向上が無料でお読みいただけます!   ◆事務の生産性向上とは 政府も「生産性向上」を重要施...


「作業」から「仕事」へ 勤勉な国民性を正しく生かし生産性向上を

 日本センターの招請で2週間ほどロシアに出張しました。日本センターは外務省の後援するNPO組織で、ロシアで我が国のカルチャーやビジネスの広報活動を行ってい...

 日本センターの招請で2週間ほどロシアに出張しました。日本センターは外務省の後援するNPO組織で、ロシアで我が国のカルチャーやビジネスの広報活動を行ってい...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:感情は感染する

 この数回は、感情に注目した話題、とくにポジティビティとネガティビティについて解説してきました。どちらも重要ですが、内発的動機づけのモチベーションに強く関...

 この数回は、感情に注目した話題、とくにポジティビティとネガティビティについて解説してきました。どちらも重要ですが、内発的動機づけのモチベーションに強く関...


人的資源マネジメント:実行力の鍛え方 (その3)

   5. 必要なのは完全主義とのお別れ    さて、これでやることが決まり、やる気持ちもでたのではないかと思います。...

   5. 必要なのは完全主義とのお別れ    さて、これでやることが決まり、やる気持ちもでたのではないかと思います。...


人的資源マネジメント:幸せは何からできている(その2)

 今回は、充実感、満足感、幸福感を実感できるよりよい日常を過ごすためのポジティブ心理学を、その理論やデータとともに紹介したいと思います。前回のその1に続い...

 今回は、充実感、満足感、幸福感を実感できるよりよい日常を過ごすためのポジティブ心理学を、その理論やデータとともに紹介したいと思います。前回のその1に続い...