国際生産成功のための基本的要点(その7)

その6)は13人の方が「いいね!」と言ってくださったのは、「溶け込みと混じり合い」について関心を持って頂けたからかな、と思っております。金子みすずの詩に「・・・ すずと、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんな いい。」というのがありますが、これが「混じり合い」の精神ですね。これが身についていれば、「いじめ」など起こるはずなないと思うのですが如何なものでしょうか。

 

(本論に入ります)

4.コミュニケーションのための英語

 三たびSさんのシンガポール体験譚に耳を傾けよう。

 『シンガポールでは公用語として、マレイ語、英語、中国語、タミール語の4つあるが、日常使われている言葉はそれだけにとどまらず、中国語の場合でいえば標準語としての北京官語、福建語、潮州語、広東語、福州語、上海語、海南語、客家語など、全く発音の違う多くの方言が話される。もちろん華人の場合、自分の固有の方言(mother tongue マザー・タングといっている)のほか2,3の方言を理解するのは普通のようであるが、それでも互いに通じあわないことがある。また標準語として中国語は学校で習う言葉ではあるが、大多数のシンガポール人にとってはマザー・タングではない。

 ここでマザー・タングの異なる人々の間での会話は、お互いに知っている言葉を使わなければならない。片方がマザー・タングを使えることもあるが、双方ともマザー・タングではない、いわゆる外国語を使うことが日常である。

 公用語のひとつである英語は、英領時代からの統治、管理用語であり、現在でも法律は英語が正文となっている。そして今日ではシンガポール大学卒、あるいは英米への留学経験者など英語国民と同等に英語を使いこなせる人々を頂点として、読み書きは出来ないが会話は日常の仕事に大体差し支えない人々まで含めると7割位は英語が出来る(筆者注:40年前の話で今ではほぼ100%)といってよいと思う。(中略)混じり合いの社会でこのように不自由なコミュニケーションの上に立って取引をし、会社を運営し、あるいは国造りをしていくためのポイントは何であろうか。限られた伝達手段で双方が理解し合うためには、まず論旨がはっきりしていなければならない。つまり論理の枠組をはっきり相手に伝えることだと思う。この点、日本人間の日本語のやり取りは、たいていお互いが同じベースに立っていることを前提としているので、情緒的であり、きめ細かい日本語を上手に使って、論理の枠組みをお互いに汲み取ってもらうのが普通である。日本人の間ではいきなり論理の枠組みだけを相手にぶつけるやり方は、大体うまくいかないように思う。

 ところが混じり合いの社会、多言語の社会では、まず相互に理解し合える最小限の表現で論理の枠組みをはっきりさせないことには意志の伝達は出来ない。日本語で一番苦労したのは、言葉で論理的にものごとを叙述(describe)するということだった。自分の受けた教育・訓練や経験のなかに、言葉で論理的に叙述するということが余りなく、そのため、その必要性を痛感しながらもなかなかうまくいかなかったのである。

 造船所の役員会でシンガポール側の役員に会社の現状、将来の見通しなどを説明する場合にも、日本ならば説得力があると思われるグラフや表を使っての説明ではなかなか理解してもらえない。特に議事録として後に残しておきたいようなことは、あらかじめきっちりとした文章にして提示しておかないと充分理解されないし、経営上重要な事項として扱われないことになる。グラフの説明をいざ文章で論理的にまとめるとなると、相手が英文だけにいつも苦労させられた。(中略)日本人がこれから国際社会でもっと自由に活動してゆくためには、日本人に対する日本語の教育においても、もっと論理的叙述の訓練が行われる必要があると私は考える。そうすれば外国語の力は充分でなくとも、相手に論旨を伝えることはもっと容易になる筈である。次にわれわれ日本人の英語力のことである。日本人が一般的に外国語下手であることは、お互いに認めているところであるが、実際にシンガポールで自由に英語を使って会話している人々と較べて、おそらく読むこと書くことの能力はそれ程劣っていないのではなかろうか。もちろん本格的に英語教育を受けた人々は別として、日常は英語を使っているシンガポールの人でも、書くことになるとかなりあやしい人も多い。しかし聞いたり話したりには全く不自由なく、言いたいことをどんどん言っているのである。文法的には必ずしも正確ではないかもしれないが、前記のように論理の枠組みだけは伝わるようになっている。

 私も中年過ぎてから英語の世界に入ってかなり苦労したが、おかげで日常会話はどうやら不自由はなくなった。しかし、例えば文法上の知識などになるとまったく怪しいものである。(中略)もし私が日本で試験を受ければ中学2年終了程度ということになるのではなかろうか。反対の見方をすれば、中学2年終了程度の英語力があれば会社の経営もなんとかやっていけることにもなろう。現に私がそれをやってきたのだから。』

 さて筆者もここ10年ほどずっと英語あるいはスペイン語で仕事をしてきているが、いまだに日本語の資料を翻訳するとか、人の話を通訳するというのは大の苦手である。日本語でスラスラと読んでこれはいい資料だから訳そうと思って、訳しだしたトタンに分らなくなってしまう。この言葉を使って著者は何を言いたいのか、これがはっきり分らないのである。

 逆に同じ職場で働く相手の人とは、片言でもだいたいお互いに意志が通じるものである。なぜだろうか? それは同じ立場に立っているかどうかの差だと思う。日本語の資料は日本人向けに書かれたものであり、他の国の人に分るようにするには、その国の人向けに日本語で分りやすく書き直してそれを訳すか、さもなければ内容をよく理解し、その上で、訳すのではなく英語で書いていく方が簡単である。最近はスピードラーニングという便利なものがあるので普段から聞き流していると、相手の言っていることが聞き取れ、相手の真似をして使ってみることができ、また書くのも出来るようになってくる。「習うより慣れろ」である。

 写真は、筆者が送り出した企業の製造管理者の調査団で、シンガポールから自作の横断幕を持参し訪問した先々で記念撮影。彼等とは今も親交が続いている。

 

最後にクエスチョンです。

海外派遣された社員がうまく適応できず悩むケースが間々あるが、適応して成果を上げられる基本的な条件として、以下の(  )にこれだと思う文言を5~10字で入れてみて下さい

1.彼(彼女)は(     )れるから、大丈夫だ

2.彼(彼女)は(       )れるから、大丈夫だ

筆者の回答例は次回に紹介します。


この記事の著者

鈴木 甫

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