-ナイロン、炭化タングステン- 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2)

更新日

投稿日

【ひらめきの法則 連載目次】

  1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
  2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
  3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
  4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.失敗した実験の残りかすから、ナイロンを誕生させた、アメリカの化学者 ウォーレス・ヒューム・カローザス

 
 高分子化合物の研究が本格化してからまだ数年しか経過していない1932年夏のある日、デュポン社の研究室にいたカローザスのもとに、興奮した面持ちのスタッフが、ガラス棒の先の半透明の糸のようなものを見せにきます。失敗した実験の残りかすをガラス棒でさらい取ろうとしているうちに、糸のように伸びたのだと言うのです。
 
 X線で調べたところ、この糸はきわめて強いことがわかりました。高分子化合物をつくろうとした実験の残りかすから強い糸ができる。重大なヒントを得たカローザスは合成繊維づくりを始めます。1935年、強くて絹のように美しい糸が誕生します。デュポン社は3年の歳月をかけて大量生産化にめどをつけ、ついに3年後、画期的な新繊維ナイロンの発売に踏み切ることができました。
 

2.無価値で失敗と捨てられた炭化タングステンを、合金として実用化した、ドイツの化学者 カール・シュレーター

                                   kikai11
 炭化タングステンを最初に発見したのは、フランスの科学者アンリ・モアッサンです。彼は電気炉で合成ダイヤモンドをつくろうとしていて、炭素の結晶に混ざった炭化タングステンを見つけます。しかし、取り出されたその小片は「無価値」なものとして捨てられてしまいます。19世紀末~20世紀初頭では、炭化タングステンは硬いが、そのままでは、もろすぎると評価されます。
 
 1920年代になると、多くの科学者が、炭化タングステンを他の金属と結合すれば、硬さと強靱さを得られるのではないかと考えます。ある者はニッケル、また他の者はモリブデンやカーボンというように、いろいろな実験が行われます。その中で成功したのがドイツ人のカール・シュレーターです。1926年、彼は、コバルトを付加し、焼結することによって、実用に耐える合金を開発します。それは、大変硬く強靱な性質で、工作機械工業の発展を助ける有力な新材料の誕生となりました。
 
 
                                                 出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫...

【ひらめきの法則 連載目次】

  1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
  2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
  3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
  4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.失敗した実験の残りかすから、ナイロンを誕生させた、アメリカの化学者 ウォーレス・ヒューム・カローザス

 
 高分子化合物の研究が本格化してからまだ数年しか経過していない1932年夏のある日、デュポン社の研究室にいたカローザスのもとに、興奮した面持ちのスタッフが、ガラス棒の先の半透明の糸のようなものを見せにきます。失敗した実験の残りかすをガラス棒でさらい取ろうとしているうちに、糸のように伸びたのだと言うのです。
 
 X線で調べたところ、この糸はきわめて強いことがわかりました。高分子化合物をつくろうとした実験の残りかすから強い糸ができる。重大なヒントを得たカローザスは合成繊維づくりを始めます。1935年、強くて絹のように美しい糸が誕生します。デュポン社は3年の歳月をかけて大量生産化にめどをつけ、ついに3年後、画期的な新繊維ナイロンの発売に踏み切ることができました。
 

2.無価値で失敗と捨てられた炭化タングステンを、合金として実用化した、ドイツの化学者 カール・シュレーター

                                   kikai11
 炭化タングステンを最初に発見したのは、フランスの科学者アンリ・モアッサンです。彼は電気炉で合成ダイヤモンドをつくろうとしていて、炭素の結晶に混ざった炭化タングステンを見つけます。しかし、取り出されたその小片は「無価値」なものとして捨てられてしまいます。19世紀末~20世紀初頭では、炭化タングステンは硬いが、そのままでは、もろすぎると評価されます。
 
 1920年代になると、多くの科学者が、炭化タングステンを他の金属と結合すれば、硬さと強靱さを得られるのではないかと考えます。ある者はニッケル、また他の者はモリブデンやカーボンというように、いろいろな実験が行われます。その中で成功したのがドイツ人のカール・シュレーターです。1926年、彼は、コバルトを付加し、焼結することによって、実用に耐える合金を開発します。それは、大変硬く強靱な性質で、工作機械工業の発展を助ける有力な新材料の誕生となりました。
 
 
                                                 出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

髙橋 誠

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!


「アイデア発想法一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
空間型アイデア収束技法「クロス法 」、発想カードを出してスタート

1.クロス法とは  クロス法は、発想データを項目別にまとめ、各データの評価まで一挙に行う技法で、アメリカのグレゴリーの7×7法から、(株)創...

1.クロス法とは  クロス法は、発想データを項目別にまとめ、各データの評価まで一挙に行う技法で、アメリカのグレゴリーの7×7法から、(株)創...


夢商品開発七つ道具とは(5) 【快年童子の豆鉄砲】(その41)

  ◆夢商品開発七つ道具とは(5) 1.「夢商品開発七つ道具(略称:Y7)」とは 1)はじめに 前置きが大変長くなりましたが、ここか...

  ◆夢商品開発七つ道具とは(5) 1.「夢商品開発七つ道具(略称:Y7)」とは 1)はじめに 前置きが大変長くなりましたが、ここか...


発散思考と収束思考の使い分け

  ◆関連解説『アイデア発想法とは』 1.発散思考と収束思考の活用法  アメリカの著名な心理学者、J・P・ギルフォードは人間の頭脳を「...

  ◆関連解説『アイデア発想法とは』 1.発散思考と収束思考の活用法  アメリカの著名な心理学者、J・P・ギルフォードは人間の頭脳を「...


「アイデア発想法一般」の活用事例

もっと見る
しつこく繰り返して、発見や発明を生んだ事例1-噴射式復水器、蓄音機-

1.蒸気の性質を科学的に調べ続け、実用に耐える蒸気機関を完成させた、イギリスの科学者ジェームズ・ワット    産業革命を推進する原動力となった蒸気機関...

1.蒸気の性質を科学的に調べ続け、実用に耐える蒸気機関を完成させた、イギリスの科学者ジェームズ・ワット    産業革命を推進する原動力となった蒸気機関...


光学技術発見の事例

1.たまたま二枚のレンズを使って遠くを見て、筒眼鏡を発明したオランダのレンズ研磨工ハンス・リッペルスハイ  17世紀の初め、オランダは眼鏡の生産地でした...

1.たまたま二枚のレンズを使って遠くを見て、筒眼鏡を発明したオランダのレンズ研磨工ハンス・リッペルスハイ  17世紀の初め、オランダは眼鏡の生産地でした...


必要に迫られればアイデアが出る-紙と缶詰の場合

1.漢王朝の記録を後世に残すために、すき具を使って紙を発明  世界で初めての紙は、古代エジプトのパピルスであることはよく知られています。ナイル河畔に生え...

1.漢王朝の記録を後世に残すために、すき具を使って紙を発明  世界で初めての紙は、古代エジプトのパピルスであることはよく知られています。ナイル河畔に生え...