製品データ管理の導入 (その1) PDM/PLMの概要

1.PDM/PLM とは

 製品開発において重要な IT システムのひとつに PDM :(製品データ管理)(Product Data Management) あるいは PLM (Product Lifecycle Management) と呼ばれているものがあります。PDM/PLM は製品開発の大きな効率化に結びつく一方、導入にかかる費用や工数の大きさや運用・保守にかかるオーバーヘッドなどが問題となり、十分な投資効果を出すことができないケースが多いという現実があります。
 
 十分な投資効果を出すことができていない原因の多くは、システム導入の際に PDM/PLM ベンダーのいいなり、もしくは、主導権を渡してしまっていることです。本稿では、PDM/PLM 導入を成功させるために理解しておくべきこと、やっておくべきことを解説したいと思います。
 
 PDM/PLM とは製品開発に関して、企画と設計、および生産と出荷後のユーザーサポートなど、あらゆる過程で製品を総合的に管理するシステムです。PDM は製品開発に必要となるデータを管理することに重点をおいているのに対し、PLM は PDM の機能に加えて、生産設備管理や人員管理、および流通管理ユーザーサポート管理などを統合的にシステム化しているという違いがあります。ただ、一般的には PDM と PLM の機能に大きな差はなく、同じと考えても問題ないでしょう。本稿では PDM と記述します。
 
 PDMとは、製品を構成する部品のデータの管理や、CADデータなどの図面データ、および、仕様書などの文書データや設計に関するデータなどを統一的に管理するとともに、資材システムと連携することで、設計と生産のスケジュールを把握し、ワークフロー管理などを行います。このような統合的なデータ管理を行うことにより、開発業務全般の効率化を実現することができます。
 
 ◆管理対象となるデータには、次のようなものがあります。
 
  •製品構成
  •部品情報
  •各種設計データ
  •仕様書
  •図面
  •イメージデータ(カタログのスキャンデータなど)
  •シミュレーターなどのモデルやライブラリ
  •設計解析結果
  •製造工程設計や計画
  •製造装置(NCマシンなど)のプログラム
  •ソフトウェア(オブジェクトコード)
  •指示書
  •プロジェクト計画書・進捗報告書
 
 さらに PDM は、生産設備や人員、流通やユーザーサポートなどの管理業務を総合的に組み合わせる機能を備えることで、ユーザーからの意見が開発元に届きやすくする仕組みを実現します。また、ユーザーの声をもとに設計者が再設計を行ない、即座に生産に移行することが可能になるため、いち早く商品を流通させることを実現します。
 
 したがって、PDMシステムを導入する際に重要となるのは、製品データの関連づけとその整合性と、誰がどのようにしてデータを作り誰がどのようにデータを使っているのかという作業の流れとその整合性です。開発に関するすべてのデータが、どの時点においても矛盾なく管理されていることが重要になります。
 
 この整合性を確保する仕組みにより、データの不備による手戻りや不具合をなくすだけでなく、コンカレントエンジニアリング(同時並行開発)や生産の垂直立ち上げなどが可能となり、大幅な開発期間短縮が実現できるのです。そのために、統合管理されたデータを使って各種の製造性設計(Design for Manufacuturability)の機能を提供することが重要になります。
 

2.PDM 導入時に実施する仕組み化

 PDM 導入の投資効果を十分なものにできない原因には、PC に新しいツールをインストールして使えるようになるのと同じように、PDM システムの導入も単純なものに考えてしまうこともあげられます。多くの場合、システムベンダーがメリットばかりを強調するからなのですが。
 
 十分な投資効果にするためには、PDM システムの導入に合わせて、開発の仕組みを見直したり、新しい仕組みを整備することが重要になります。言い換えると、理想とする開発を実現するための仕組みを設計し、それに合わせた PDM システムの利用方法を考えるということです。参考のため、開発における課題を解決するために PDM 導入に合わせてどのような仕組み化を検討すればいいのか、その例を紹介しておきましょう。
 
pdm1
   
pdm2
 
 これを見ると、PDM導入を契機に幅広い課題に対して効果的な仕組みを整備できることがわかると思います。PDM によって新しい開発の仕組みを構築するという視点が大切なのです。
 

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3.PDM の全体像

 PDM 導入に際しては PDM の全体像を次のようにとらえることが重要です。繰り返しになりますが、システムを導入するという視点ではなく、開発業務のあるべき姿を設計し、その新しい開発業務を支援するために PDM を活用するという視点を忘れないようにしてください。
 
   (1)部品、部品表、図面などの開発に関連するデータを整合性保証の上で管理する
   (2)開発に必要となるあるべき仕組みを実装する/支援する
   (3)管理しているデータを活用した開発支援機能を提供する
 
 一例として、PDM の全体像を図1に示します。PDM を導入するというのは、PDM が管理するデータと、そのデータを活用した支援機能、そして、それらを有効に活用するための基本的な開発の仕組みとが一体化した全体像を設計するということなのです。システムベンダーにお任せというのではなく、自分たちが主導権を握って導入を進めなければ十分な投資効果を得ることは難しいことは明らかです。
 
          
pdm3
図1.PDMの全体像
 
 第2回以降で、PDM 導入に合わせて整備すべき基本の仕組みと、その仕組みのもとで運用する PDM の基本機能を紹介していきます。
 

この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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