ロバスト性を評価する技法 品質工学による技術開発(その11)

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1.ロバスト性を評価する技法

前回“その10”では,光ディスクドライブの光学ヘッドに使われる接着剤のロバスト性を評価する方法として,目的機能をどのように設定したかについて解説しました.今回は,同じくロバスト性を評価する技法である基本機能について解説します.

 

【この連載の前回:品質工学による技術開発(その10)技術開発で活用される技法へのリンク】

2.基本機能とは 

基本機能[1]の考え方は品質工学における骨格の部分と言えますが,その定義の方法はまだ定まってはいないのが現実です.基本機能とはエネルギー変換である,物理や化学の法則である等々,様々な解釈が存在するため,ある種の混乱が生じることもあるかもしれません.ここで忘れていけないことは,基本機能の目的です.

 

基本機能の目的はロバスト性を評価することです.よって,計測可能な特性で定義されなければなりません.また,目的機能を代用できるものでなければ技術開発の方向を間違えてしまうことになります.トリッキーな評価方法を考案するケースも見かけますが,目的機能の代用になっているかどうかを慎重に判断することも大切です.基本機能のメリットは目的機能よりも交互作用の影響を受けにくく,技術開発がスムーズに進みやすいことですが,効果的な基本機能を定義できたとしても,それを計測できない技術分野が多いこともまた事実です.

 

筆者が考える基本機能の定義方法について,図1を用いて説明します.図1は本連載の“その2”と“その4”でも「技術開発の全体像」というタイトルで取り上げています.技術開発の全体像の構造は前出と同じですが,“その2”と“その4”の「発想」の部分が,今回の図1では「基本機能」となっています.

 

この対応関係から基本機能は発想するものであり,3つのパートの因果関係を把握する技術開発活動から得られた技術情報がそのベースとなっていることがわかると思います.(3つのパートの内容については“その2”,“その4”を参照)この3つのパートの中で基本機能に関連するのがアナリシスパートです.アナリシスパートにある現象説明因子は,マネジメントパートにある計測特性yやSN比の値が変化したメカニズムを記述する因子です.

 

ここで,ノイズ因子によって引き起こされる計測特性yの変化・変動を定量化した指標がSN比です.現象説明因子の例としては,物性値,分析値,センシングデータ,シミュレーションの中間特性,あるいはそれらを代用する特性などがあります.これら現象説明因子の中から目的機能の計測特性yを完全に代用できるものがあれば,それが基本機能の計測特性になります.ここで完全に代用できるとは,その現象説明因子は目的機能の計測特性yと因果関係のある制御因子の全てと因果関係を持つことという意味です.この条件を満たさない現象説明因子はたくさん存在しますが,それらの現象説明因子を基本機能の計測特性にしてしまうと部分最適化になってしまいます.

 

なぜならばシステムやサブシステムを構成する制御因子の一部だけを使った最適化になってしまうからです.それでは大きな改善効果が得られなくなってしまいます.そういう意味でも,基本機能の定義は慎重に実施すべきと筆者は考えています.ただし,“その2”,“その4”で解説したように,基本機能の追求は,計測特性yやSN比が改善したメカニズムを把握することに相当しますので,基本機能を追求すること自体は技術開発活動の中で重要な位置づけであると言えます.

 

品質工学

図1 基本機能の位置づけ

 

3.基本機能と技術蓄積[2]

目的機能を代用できる基本機能を発想するためには,図1の3つのパートの因果関係を十分に把握できてきていることが求められます.つまり,技術の蓄積が十分...

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1.ロバスト性を評価する技法

前回“その10”では,光ディスクドライブの光学ヘッドに使われる接着剤のロバスト性を評価する方法として,目的機能をどのように設定したかについて解説しました.今回は,同じくロバスト性を評価する技法である基本機能について解説します.

 

【この連載の前回:品質工学による技術開発(その10)技術開発で活用される技法へのリンク】

2.基本機能とは 

基本機能[1]の考え方は品質工学における骨格の部分と言えますが,その定義の方法はまだ定まってはいないのが現実です.基本機能とはエネルギー変換である,物理や化学の法則である等々,様々な解釈が存在するため,ある種の混乱が生じることもあるかもしれません.ここで忘れていけないことは,基本機能の目的です.

 

基本機能の目的はロバスト性を評価することです.よって,計測可能な特性で定義されなければなりません.また,目的機能を代用できるものでなければ技術開発の方向を間違えてしまうことになります.トリッキーな評価方法を考案するケースも見かけますが,目的機能の代用になっているかどうかを慎重に判断することも大切です.基本機能のメリットは目的機能よりも交互作用の影響を受けにくく,技術開発がスムーズに進みやすいことですが,効果的な基本機能を定義できたとしても,それを計測できない技術分野が多いこともまた事実です.

 

筆者が考える基本機能の定義方法について,図1を用いて説明します.図1は本連載の“その2”と“その4”でも「技術開発の全体像」というタイトルで取り上げています.技術開発の全体像の構造は前出と同じですが,“その2”と“その4”の「発想」の部分が,今回の図1では「基本機能」となっています.

 

この対応関係から基本機能は発想するものであり,3つのパートの因果関係を把握する技術開発活動から得られた技術情報がそのベースとなっていることがわかると思います.(3つのパートの内容については“その2”,“その4”を参照)この3つのパートの中で基本機能に関連するのがアナリシスパートです.アナリシスパートにある現象説明因子は,マネジメントパートにある計測特性yやSN比の値が変化したメカニズムを記述する因子です.

 

ここで,ノイズ因子によって引き起こされる計測特性yの変化・変動を定量化した指標がSN比です.現象説明因子の例としては,物性値,分析値,センシングデータ,シミュレーションの中間特性,あるいはそれらを代用する特性などがあります.これら現象説明因子の中から目的機能の計測特性yを完全に代用できるものがあれば,それが基本機能の計測特性になります.ここで完全に代用できるとは,その現象説明因子は目的機能の計測特性yと因果関係のある制御因子の全てと因果関係を持つことという意味です.この条件を満たさない現象説明因子はたくさん存在しますが,それらの現象説明因子を基本機能の計測特性にしてしまうと部分最適化になってしまいます.

 

なぜならばシステムやサブシステムを構成する制御因子の一部だけを使った最適化になってしまうからです.それでは大きな改善効果が得られなくなってしまいます.そういう意味でも,基本機能の定義は慎重に実施すべきと筆者は考えています.ただし,“その2”,“その4”で解説したように,基本機能の追求は,計測特性yやSN比が改善したメカニズムを把握することに相当しますので,基本機能を追求すること自体は技術開発活動の中で重要な位置づけであると言えます.

 

品質工学

図1 基本機能の位置づけ

 

3.基本機能と技術蓄積[2]

目的機能を代用できる基本機能を発想するためには,図1の3つのパートの因果関係を十分に把握できてきていることが求められます.つまり,技術の蓄積が十分であればあるほど,基本機能を定義する的確性が向上すると言えます.次回は“その10”で解説した光学ヘッドの接着剤の技術開発のための基本機能の発想について解説します.

 

【参考文献】
[1]細川哲夫:「タグチメソッドによる技術開発 ~基本機能を探索できるCS-T法~」,日科技連(2020)
[2]細川哲夫:QE Compass, https://qecompass.com/, (2022.12.02)

 

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

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この記事の著者

細川 哲夫

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。

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