テーマの評価 技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その7)

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技術マネジメント

 

◆ もうかる理由は「重要技術」の抽出にある

 今回は、儲(もう)かるための重要技術の抽出についてお話します。これを読んで頂くことで、中長期的な視点でみた場合に、自社で強化しなければならない重要技術を見極める視点が得られます。これから技術戦略を立てようとする方に役立つ内容です。

 前回まで「技術戦略の立て方」と題して、技術の棚卸しやテーマの創出、テーマの評価までを説明してきました。今回はその流れを受けて、出来上がったテーマを絞り込むということについて解説します。

 最初に重要技術について説明しておきたいと思います。「重要技術」といっても何を意味するのか分かりにくいですが、そこで例を取ると、英Dyson(ダイソン)とその商品があります。ダイソンといえば、サイクロン掃除機、扇風機、ドライヤーなどが思い浮かぶのではないでしょうか?

 ダイソン製品で共通する技術となっているのは、流体に関するものです。ここでは流体制御といいましょう。そして、ダイソン自身は「デジタルモーター」と称して、モーターの技術も保有していると説明しています。

 

1. ダイソン事業の発展は

 ダイソン事業の日本での商品展開は、掃除機に始まり、扇風機に発展し、ヘアドライヤーへと続いていきましたが、このような事業発展や技術を中核にしてまとめると、下図のようになります。

 

技術マネジメント


 この図からは、流体制御技術やデジタルモーター技術が、商品の中核的な性能として利用されていることが分かります。

 このように、技術を基に事業を展開するメリットは2つあります。

(1)商品を見据えた基礎技術の研究ができる

 流体制御やモーターに関する技術を磨いていくことで、商品の性能を飛躍的に向上させることができます。そのため、流体制御やモーターの技術者はそれらの商品を見据えた研究開発ができます。

 

(2)同じ技術で複数の事業が立ち上がるため投資対効果が良い

 同じ流体制御やモーターの技術でありながら、出口となる事業が増やせます。商品で見れば相当数に貢献していることになります。

 ただ残念ながら、ダイソンではこのような事業発展を事前に計画していたかは分かりません。同社の創業者・ジェームズ・ダイソン氏のインタビューなどを読んでも、掃除機を作ることに情熱を燃やしていたことは分かっても、事業発展のことまで触れておらず、もしかすると、最初に計画などなかったのかもしれないとも思われます。

 しかし、私達がこれから作ろうとする技術戦略においては、強い技術を基にして事業発展させることを「計画的に」成し遂げたいと思いませんか?

 

2. 事業発展は行き当たりばったりでよいのか?

 繰り返しになりますが、ダイソンでは強い技術で複数の事業・多数の商品を支えていいます。このような技術の発展は投資対効果が優れているのです。それでは、このような事業発展にするために、どのような考え方が必要でしょうか?

 これには少なくとも次の3つのステップが必要です。

 

(1)自社技術の用途を分析すること(この方法についてはすでに触れました)

技術マネジメント

 用途分析は、自社技術を核にして用途を探索することです。上図のようなものを「アプリケーションマップ」と呼びますが、このような資料を作成してテーマを明確にすることが重要です。

 

(2)テーマを深堀り検討した上で優先順位付けをする

 優先順位付けは、以下のような評価をすることで可能となります。下図の「投資倍率/技術距離マップ」は、アプリケーションマップで考案したテーマを所定の基準で評価したものです。

技術マネジメント


 縦軸は、既存技術からの距離を表したものです。距離が近ければ優先順位が高い一方、遠ければ優先順位が下がります。この点については前回の記事でご紹介しました。

 横軸は、見込める営業利益を投資金額で割ったものです。倍率が表示されます。これは高ければ儲かりますので優先順位が高く、低ければ優先順位が下がります。

 これらを合わせると、右下にある領域が優先順位の高いテーマになるというわけです。右下にあるテーマAとBをやっていくということとなります。

 ここまでで、どんなテーマができるのかを検討し(発散)、実際にどのテーマの優先順位が高いのかを検討してきました(収束)。

 

(3)テーマに共通する技術を検討する

 次の図に示すとおり、テーマAに必用な技術をX、Y、Zとし、テーマBに必用な技術をX、Y、Wとすると、共通するXとYが重要な技術となります。

技術マネジメント


 こうして抽出された共通する技術が、自社の重要な技術になるというわけです。ダイソンに例えると、扇風機やドライヤーに生かせる技術として流体制御技術とモーター技術が抽出されるというイメージとなります。

 

3. 本質は何か?

 技術戦略として、自社にとって重要な技術を明確に定義する方法について概説してきましたが、私が重要だと考えているのは、すべてのステップを自社主導で行うことです。

 自社主導とは、顧客要望対応(いわゆる、下請け気質)とは反対にあるものです。最初のステップではあくまでも自社技術を基に用途展開を行いましたし、二つ目のステップでは自社技術からの距離感や儲かるかどうかを基準にテーマを選択することを説明しました。

 そして、三つ目のステップでは共通する技術を抽出することにより、今後研究開発するべき重要技術を見つけること...

技術マネジメント

 

◆ もうかる理由は「重要技術」の抽出にある

 今回は、儲(もう)かるための重要技術の抽出についてお話します。これを読んで頂くことで、中長期的な視点でみた場合に、自社で強化しなければならない重要技術を見極める視点が得られます。これから技術戦略を立てようとする方に役立つ内容です。

 前回まで「技術戦略の立て方」と題して、技術の棚卸しやテーマの創出、テーマの評価までを説明してきました。今回はその流れを受けて、出来上がったテーマを絞り込むということについて解説します。

 最初に重要技術について説明しておきたいと思います。「重要技術」といっても何を意味するのか分かりにくいですが、そこで例を取ると、英Dyson(ダイソン)とその商品があります。ダイソンといえば、サイクロン掃除機、扇風機、ドライヤーなどが思い浮かぶのではないでしょうか?

 ダイソン製品で共通する技術となっているのは、流体に関するものです。ここでは流体制御といいましょう。そして、ダイソン自身は「デジタルモーター」と称して、モーターの技術も保有していると説明しています。

 

1. ダイソン事業の発展は

 ダイソン事業の日本での商品展開は、掃除機に始まり、扇風機に発展し、ヘアドライヤーへと続いていきましたが、このような事業発展や技術を中核にしてまとめると、下図のようになります。

 

技術マネジメント


 この図からは、流体制御技術やデジタルモーター技術が、商品の中核的な性能として利用されていることが分かります。

 このように、技術を基に事業を展開するメリットは2つあります。

(1)商品を見据えた基礎技術の研究ができる

 流体制御やモーターに関する技術を磨いていくことで、商品の性能を飛躍的に向上させることができます。そのため、流体制御やモーターの技術者はそれらの商品を見据えた研究開発ができます。

 

(2)同じ技術で複数の事業が立ち上がるため投資対効果が良い

 同じ流体制御やモーターの技術でありながら、出口となる事業が増やせます。商品で見れば相当数に貢献していることになります。

 ただ残念ながら、ダイソンではこのような事業発展を事前に計画していたかは分かりません。同社の創業者・ジェームズ・ダイソン氏のインタビューなどを読んでも、掃除機を作ることに情熱を燃やしていたことは分かっても、事業発展のことまで触れておらず、もしかすると、最初に計画などなかったのかもしれないとも思われます。

 しかし、私達がこれから作ろうとする技術戦略においては、強い技術を基にして事業発展させることを「計画的に」成し遂げたいと思いませんか?

 

2. 事業発展は行き当たりばったりでよいのか?

 繰り返しになりますが、ダイソンでは強い技術で複数の事業・多数の商品を支えていいます。このような技術の発展は投資対効果が優れているのです。それでは、このような事業発展にするために、どのような考え方が必要でしょうか?

 これには少なくとも次の3つのステップが必要です。

 

(1)自社技術の用途を分析すること(この方法についてはすでに触れました)

技術マネジメント

 用途分析は、自社技術を核にして用途を探索することです。上図のようなものを「アプリケーションマップ」と呼びますが、このような資料を作成してテーマを明確にすることが重要です。

 

(2)テーマを深堀り検討した上で優先順位付けをする

 優先順位付けは、以下のような評価をすることで可能となります。下図の「投資倍率/技術距離マップ」は、アプリケーションマップで考案したテーマを所定の基準で評価したものです。

技術マネジメント


 縦軸は、既存技術からの距離を表したものです。距離が近ければ優先順位が高い一方、遠ければ優先順位が下がります。この点については前回の記事でご紹介しました。

 横軸は、見込める営業利益を投資金額で割ったものです。倍率が表示されます。これは高ければ儲かりますので優先順位が高く、低ければ優先順位が下がります。

 これらを合わせると、右下にある領域が優先順位の高いテーマになるというわけです。右下にあるテーマAとBをやっていくということとなります。

 ここまでで、どんなテーマができるのかを検討し(発散)、実際にどのテーマの優先順位が高いのかを検討してきました(収束)。

 

(3)テーマに共通する技術を検討する

 次の図に示すとおり、テーマAに必用な技術をX、Y、Zとし、テーマBに必用な技術をX、Y、Wとすると、共通するXとYが重要な技術となります。

技術マネジメント


 こうして抽出された共通する技術が、自社の重要な技術になるというわけです。ダイソンに例えると、扇風機やドライヤーに生かせる技術として流体制御技術とモーター技術が抽出されるというイメージとなります。

 

3. 本質は何か?

 技術戦略として、自社にとって重要な技術を明確に定義する方法について概説してきましたが、私が重要だと考えているのは、すべてのステップを自社主導で行うことです。

 自社主導とは、顧客要望対応(いわゆる、下請け気質)とは反対にあるものです。最初のステップではあくまでも自社技術を基に用途展開を行いましたし、二つ目のステップでは自社技術からの距離感や儲かるかどうかを基準にテーマを選択することを説明しました。

 そして、三つ目のステップでは共通する技術を抽出することにより、今後研究開発するべき重要技術を見つけることとなりました。一連のステップでは、顧客の要望に対応する下請け的なステップは一切ありませんでした。

 顧客を無視していいというものでもありませんが、あくまでも自社技術を基にして未来を見据えたテーマを企画し、共通する技術を重要技術として定義することを説明しております。

 

 このようにして重要技術を抽出して、テーマを見据えた研究開発をすることで、強い技術による事業展開が計画的に可能になる、という訳です。

 そして、それは高粗利を生むことになります。ダイソン製品の価格が高いのは周知の事実です。強い技術で展開された商品は性能が高いため、高い値段でも買っていただけることとなります。一方、顧客の要望に対応する考え方で商品展開していくと、技術的には薄っぺらいものを顧客の買値で作らなければなりません。

 どちらが良いかは明らかです。同じ技術開発なら、自社主導で重要技術を抽出し、お客様を「あっ」と言わせる商品を実現したいと思いれませんか?やってる方も楽しいですし、お客様も喜んでくれます。

 次回に続きます。

 

 【出典】株式会社 如水 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

中村 大介

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。


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