基本的ステップ 新QC七つ道具:第4章 親和図法の使い方(その11)

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  KJ法
 
【目次】
序論   ←掲載済
第4章  親和図法の使い方 ←今回
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方

新QC七つ道具:第4章 親和図法の使い方

 

4.2 混沌解明のための親和図法の基本的ステップ

 

Step 9: グループ編成

 
  最終グループ数の説明のために独立させましが、本来“グループ編成”は、カード広げ(Step6)、カード寄せ(Step7)、表札作り(Step8)、からなり、この3つのステップの総称です。このグループ編成の最大のポイントは、グループの数が、数個以内、少なくとも10以下になるまで続けることです。
 

【ポイント】最終グループ数は10以下。

 
 これは、安易な妥協を排し、このステップの作業を完遂させるための“ガイドライン”といえます。というのは、グループ編成は、だいたい13~14くらいになったところで行き詰まることが多いのです。しかも、その時点では、すでに、かなりのレベルで問題点が絞られてきているので、次の空間配置に進もうとしがちですが、結局うまくいかず、時間の浪費に終わるからです。
 
 その点について川喜田氏は、具体的な体験をもとに「人間には、10以内くらいの異なる要素ならば、これを直感的に全体としてまとめ、もしくはそこから何かを見抜く力があるらしい」としています。[1](78P-79)一方、筆者の経験では、初体験であった1N7研のときは、必死になって上記ガイドラインをクリアしたら、問題の核心を把握できていた、という順序だったのですが、それ以降の実務においては、「“親和図法”に必死で取り組み、問題の核心が把握できてみると、島の数がシングルになっていた」というものであり、連関図における“熟成度指数k=1.8”の発見と同じでした。
 
 思うに、本来は、後者であるべきなのでしょうが、筆者も経験した、初期段階における手法に対する疑心暗鬼の心境(手法の宿命?)に打ち勝って目的達成に至るための“武器”として“ガイドライン”が必要ということでしょう。
 

Step 10: 空間配置

 
 10以下になったグループの表札の訴える内容が、意味の上で最も分かりやすくなる位置関係にカードの束を配置するステップです。配置の仕方は幾通りも存在しますが、すでに頭にある結論の骨格、すなわち、B型文章化を、最もスムーズに説明できる相互関係を目安として選びます。
 
 十人十色になりそうに思われますが、実際は、データに素直である限り、十人二、三色というところがふつうです。[1](80P)
 

【ポイント 1】最良の相互関係模索は連関図法を活用する。

 
 各表札(グループ)に対して準備した“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を使った連関図を活用すると、最終配置の決定がやりやすいのです。後述しますが、筆者は、この連関図風まとめを“B型図解”と称して、B型文章化に際しても重宝しています。
 

【ポイント 2】このステップではグループ間の相互関係配置だけにする。

 
 通常は、この段階で、最終のレイアウトを念頭に配置を検討しますが、枚数が多いとなかなかうまくいかなくて苦労するのです。その点を解消するノウハウが次のステップに準備してあるので、ここでは、グループ間の相互関係だけを考えた配置を決めればよいのです。
 

Step 11: カードの解束

 
 KJ法 では“表札のはらわたを出す”というステップです。カードの解束は、グループが抱えているカードの枚数に見合った大きさの紙の上に、グループごとに行います。こうすることにより、最終レイアウトをグループ単位で調整できて楽なので、このステップを設けています。すなわち、解束すると最終グループ内の小グループ同士の関連から、空間配置を変更したくなることがありますが、その場合の空間配置再調整が楽にできるのです。
 

【ポイント 1】表札を1番上にし、順次グルーピングのレベルごとに解束する。

 
 多くの束を抱えるグループの場合は、各レベルごとにふさわしい配置を選んで解束します。
 

【ポイント 2】配置が決まったら、原データから順次ふさわしい位置に仮止めする。

 
 ラベルの蝋紙の左端を5mmくらい切り取り、露出した糊部を使って仮止めします。
 

【ポイント 3】原データから順次鉛筆で島どりを行いつつ、最終的な配置を決める。

 
 “島どり”とは、グループ編成されたカードを島のように線で囲むことで、“原データから”とは、“1段目のグループ編成から”ということです。島どりの線は、鉛筆で薄く描いておきます。また、最終段の島どりは、上の方に“短縮表札”を記入するための空間をとっておきます。
 

【ポイント 4】島どりの線を、表札の文字の色と同じ色で上塗りする。

 
 これは、囲まれた島が何段目のグループ編成によるものかを分かりやすくするためです。線の太さで表わすこともできますが、段数が多いと線の太さの選択が難しいので、筆者は、色で識別しています。“ポイント3”で、線を薄くしておくのは、このように後でなぞるためです。
 

【ポイント 5】島の“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を記入する。

 
 “1行見出し”は少し字数が多いので、最終段の島どり線に沿って外側に、“短縮表札”は“ポイント4”で確保しておいた空間に、少し大きめの太字で内側に描きます。
 

【ポイント 6】出来上がった島を、5mmくらいの余白をつけて切り取る。

 
 これで、「島単位で独立したカードの解束」が完成するので、空間配置が非常にやりやすくなります。
 

【ポイント 7】空間配置を完成させる。

 
 ポイント6で作成した“島”を使い、ステップ10で決定した空間配置を完成させます。この時点で、空間配置を改めて見直すことになりますが、グループごとに独立させてあるので、変更に際しての取り扱いが楽です。
 

Step 12: A型図解

 
 ステップ11で、完成している空間配置に従って、最終的にレイアウトすれば、A型図解の完了です。本来のA型図解では、この後、グループ相互の関連をさらに追求し、矢線や符号で関連づけすることにより、B型文章化の骨格作りをします、筆者の場合、次のようなステップを設けることにより、B型文章化への移行がスムーズになったので紹介します。
 

Step 13:B型図解

 
 川喜田氏は、島と島との結びつきの性質が分かりにくいのが、A型図解の大きな弱点とし、その関係を明らかにしつつ、さらなる発想を付け加える手段として、B型文章化を位置づけています。[1](99P)その場合、A型図解が新たな発想を拘束するようでは駄目で、A型図解は、むしろそれを踏み破って、新たに前進するための跳躍台に過ぎないと思えばよい、とのことです。[1](117P)確かにその通りですが、少し複雑なテーマの場合、アイデアの発想履歴主体のA型図解からのB型文章化はかなり難しく、筆者の場合、困難を極めることが多かったのです。
 
 そこで、連関図法を活用して、“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を使い、B型文章化を念頭にA型図解を“連関図風”にまとめなおしてみたところ、非常にスムーズなB型文章化ができた経験を踏まえて、このステップを追加しています。
 
 このステップを追加してからは、B型文章化のためのまとめの際、A型図解から容易に脱却することができ、発想の自由度が増し好結果につながっています。いま一つ、これのよいところは、解析者以外の人が結論を理解する上で、B型文章化とA型図解との橋渡しの役目を期待できる点であり、この双方から筆者は“B型図解”と称し重宝しています。この点については、趣旨は若干違いますが、川喜田氏も“A型図解で物事の本質が高度に煮詰まった場合には、元の図にお構いなく、そのエッセンスを別に絵または単純化した図解に変換してしまう方法がある。”[2](166P)と述べている。
 
 ここでは、高度に煮詰まってはいないかもしれないのですが、その分、エッセンスの単純化をA型図解に忠実に行うようにしているので、この趣旨と大きく離れることはないのではないかと考えています。
 

【ポイント 1】あくまで補助手段です。

 
 このステップは、本来のステップに対する追加・補助ステップであり、A型図解が不十分では、効果が半減します。要するに、このステップを踏むことにより、B型文章化が、より明確になるということであり、“A型図解からB型文章化への移行”に対する未熟さをある程度補ってくれるというのが実感です。
 

【ポイント 2】グループ相互の連関分析がやりやすくなる。

 
 B型図解は、A型図解に比べて簡素化されているので、相互関連分析結果を、符号などを用いてかなり詰めることができる上、その過程で思わぬ発想につながることもしばしばです。このことは、A型図解そのものの不十分さも、ある程度カバーすることができることを意味しています。
 

【ポイント 3】A型図解の訂正は不要。

 
 このステップを踏む段階で、A型図解の空間配置と若干違った配置になることもありますが、A型図解への橋渡し役を果たしてくれるので遡って修正する必要はありません。
 

Step 14:B型文章化(口頭発表)

 
 基本は、混沌の解明結果を、A型図解をもとに解き明かし、スタッフが取り組むべき、新しいシステムの姿や、諸活動に対する方向づけを明示するのが目的です。したがって、目的を達しておれば、いわゆるKJ法 でいう“B型文章化”の形式や趣旨にこだわる必要はなく、むしろ“リポート作成”というとらえ方の方が、ここで取り扱うテーマにはふさわしいでしょう。
 
 ただ、このステップで、上記目的にも増して重要なことは、解析者がB型文章化に取り組む過程で、A型図解(Step 12)までの“入手データに対する忠実性”から脱却し、テーマに密接した、言葉を換えると“問題解決に直結した新たな発想やアイデア”を入手できるということです。
 
 川喜田氏が、「A型図解で終わったかのように安心してしまう人が実に多い。しかし実は、この図解化を踏み台にしてさらに叙述化をしないと本当には1ラウンドが終わったことにならないのです。ところで、先に追加したステップ13でのB型図解は、B型文章化で解析者に生じる、そういった過程を図解により表わす意味もあり、A型図解とB型文章化との関係を理解するための橋渡しの役目も果たすことができるのです。
 

【ポイント 1】 叙述と解釈の区別を明確にしておく。

 
 これは、A型図解から得た結論の“叙述”すなわち、入手データに忠実で客観的な部分と、データの解析を通じて手に入れた新たな発想やアイデア、すなわち、解析者の“解釈”を含んだ主観的な内容とが、だれの目にも分かるようにしておくという意味でああり、川喜田氏は、B型文章化の最も大事な点としています。[1](103P)
 
 これは、事実データの解析を通じて客観的な結論の入手を目的とする野外科学では、主観的な解釈による部分の明確化がB型文章化にとり重要ということです。一方“スタッフワーク”の場合は、“解釈”については、関係者同士がお互い理解し合える範囲内のことゆえ、あまり気にする必要はないが、“発言データ”や“発想”が、外部探検で入手した情報(文献、公演、アドバイスなど)の影響を受けている場合、それらを把握しておくことが重要になるので、ポイントとして取り上げました。
 
 なお、B型文章化における“叙述”と“解釈”の区別をどのようにするかであるが、川喜田氏は“解釈”を( )でくくることを提唱しています[2](142P)、[1](109-117P)が、“叙述”は“である”“です”、“解釈”は“と思う”“らしい”という区別の方が、書くのも、読むのもスムーズでしょう。
 
 ところで、川喜田氏は、この“解釈部分”を、B型文章化を通じて起こる発見であるとし、その内容を「統合発想」「構造修正」「構造の追加」「構造の精密化」「内容追加」の5つに整理し、この順で重要であるとしています。[1](103P)本書で取り上げている“スタッフワーク”の場合、この分類には若干の違和感がありますが、基本的なところでは相通じるものがあり、参考になるので取り上げました。
 

【ポイント 2】 内容は、メンバーの具体策に対する発想を妨げることのないよう注意する。

 
 スタッフワークの場合、B型文章化をもとに、具体的な施策、特に新しいシステムの構築を目指すことが多いのです。その場合、基本構想と具体的な施策追求時の...
 
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第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方
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新QC七つ道具:第4章 親和図法の使い方

 

4.2 混沌解明のための親和図法の基本的ステップ

 

Step 9: グループ編成

 
  最終グループ数の説明のために独立させましが、本来“グループ編成”は、カード広げ(Step6)、カード寄せ(Step7)、表札作り(Step8)、からなり、この3つのステップの総称です。このグループ編成の最大のポイントは、グループの数が、数個以内、少なくとも10以下になるまで続けることです。
 

【ポイント】最終グループ数は10以下。

 
 これは、安易な妥協を排し、このステップの作業を完遂させるための“ガイドライン”といえます。というのは、グループ編成は、だいたい13~14くらいになったところで行き詰まることが多いのです。しかも、その時点では、すでに、かなりのレベルで問題点が絞られてきているので、次の空間配置に進もうとしがちですが、結局うまくいかず、時間の浪費に終わるからです。
 
 その点について川喜田氏は、具体的な体験をもとに「人間には、10以内くらいの異なる要素ならば、これを直感的に全体としてまとめ、もしくはそこから何かを見抜く力があるらしい」としています。[1](78P-79)一方、筆者の経験では、初体験であった1N7研のときは、必死になって上記ガイドラインをクリアしたら、問題の核心を把握できていた、という順序だったのですが、それ以降の実務においては、「“親和図法”に必死で取り組み、問題の核心が把握できてみると、島の数がシングルになっていた」というものであり、連関図における“熟成度指数k=1.8”の発見と同じでした。
 
 思うに、本来は、後者であるべきなのでしょうが、筆者も経験した、初期段階における手法に対する疑心暗鬼の心境(手法の宿命?)に打ち勝って目的達成に至るための“武器”として“ガイドライン”が必要ということでしょう。
 

Step 10: 空間配置

 
 10以下になったグループの表札の訴える内容が、意味の上で最も分かりやすくなる位置関係にカードの束を配置するステップです。配置の仕方は幾通りも存在しますが、すでに頭にある結論の骨格、すなわち、B型文章化を、最もスムーズに説明できる相互関係を目安として選びます。
 
 十人十色になりそうに思われますが、実際は、データに素直である限り、十人二、三色というところがふつうです。[1](80P)
 

【ポイント 1】最良の相互関係模索は連関図法を活用する。

 
 各表札(グループ)に対して準備した“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を使った連関図を活用すると、最終配置の決定がやりやすいのです。後述しますが、筆者は、この連関図風まとめを“B型図解”と称して、B型文章化に際しても重宝しています。
 

【ポイント 2】このステップではグループ間の相互関係配置だけにする。

 
 通常は、この段階で、最終のレイアウトを念頭に配置を検討しますが、枚数が多いとなかなかうまくいかなくて苦労するのです。その点を解消するノウハウが次のステップに準備してあるので、ここでは、グループ間の相互関係だけを考えた配置を決めればよいのです。
 

Step 11: カードの解束

 
 KJ法 では“表札のはらわたを出す”というステップです。カードの解束は、グループが抱えているカードの枚数に見合った大きさの紙の上に、グループごとに行います。こうすることにより、最終レイアウトをグループ単位で調整できて楽なので、このステップを設けています。すなわち、解束すると最終グループ内の小グループ同士の関連から、空間配置を変更したくなることがありますが、その場合の空間配置再調整が楽にできるのです。
 

【ポイント 1】表札を1番上にし、順次グルーピングのレベルごとに解束する。

 
 多くの束を抱えるグループの場合は、各レベルごとにふさわしい配置を選んで解束します。
 

【ポイント 2】配置が決まったら、原データから順次ふさわしい位置に仮止めする。

 
 ラベルの蝋紙の左端を5mmくらい切り取り、露出した糊部を使って仮止めします。
 

【ポイント 3】原データから順次鉛筆で島どりを行いつつ、最終的な配置を決める。

 
 “島どり”とは、グループ編成されたカードを島のように線で囲むことで、“原データから”とは、“1段目のグループ編成から”ということです。島どりの線は、鉛筆で薄く描いておきます。また、最終段の島どりは、上の方に“短縮表札”を記入するための空間をとっておきます。
 

【ポイント 4】島どりの線を、表札の文字の色と同じ色で上塗りする。

 
 これは、囲まれた島が何段目のグループ編成によるものかを分かりやすくするためです。線の太さで表わすこともできますが、段数が多いと線の太さの選択が難しいので、筆者は、色で識別しています。“ポイント3”で、線を薄くしておくのは、このように後でなぞるためです。
 

【ポイント 5】島の“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を記入する。

 
 “1行見出し”は少し字数が多いので、最終段の島どり線に沿って外側に、“短縮表札”は“ポイント4”で確保しておいた空間に、少し大きめの太字で内側に描きます。
 

【ポイント 6】出来上がった島を、5mmくらいの余白をつけて切り取る。

 
 これで、「島単位で独立したカードの解束」が完成するので、空間配置が非常にやりやすくなります。
 

【ポイント 7】空間配置を完成させる。

 
 ポイント6で作成した“島”を使い、ステップ10で決定した空間配置を完成させます。この時点で、空間配置を改めて見直すことになりますが、グループごとに独立させてあるので、変更に際しての取り扱いが楽です。
 

Step 12: A型図解

 
 ステップ11で、完成している空間配置に従って、最終的にレイアウトすれば、A型図解の完了です。本来のA型図解では、この後、グループ相互の関連をさらに追求し、矢線や符号で関連づけすることにより、B型文章化の骨格作りをします、筆者の場合、次のようなステップを設けることにより、B型文章化への移行がスムーズになったので紹介します。
 

Step 13:B型図解

 
 川喜田氏は、島と島との結びつきの性質が分かりにくいのが、A型図解の大きな弱点とし、その関係を明らかにしつつ、さらなる発想を付け加える手段として、B型文章化を位置づけています。[1](99P)その場合、A型図解が新たな発想を拘束するようでは駄目で、A型図解は、むしろそれを踏み破って、新たに前進するための跳躍台に過ぎないと思えばよい、とのことです。[1](117P)確かにその通りですが、少し複雑なテーマの場合、アイデアの発想履歴主体のA型図解からのB型文章化はかなり難しく、筆者の場合、困難を極めることが多かったのです。
 
 そこで、連関図法を活用して、“1行見出し”と“短縮表札(キャッチフレーズ)”を使い、B型文章化を念頭にA型図解を“連関図風”にまとめなおしてみたところ、非常にスムーズなB型文章化ができた経験を踏まえて、このステップを追加しています。
 
 このステップを追加してからは、B型文章化のためのまとめの際、A型図解から容易に脱却することができ、発想の自由度が増し好結果につながっています。いま一つ、これのよいところは、解析者以外の人が結論を理解する上で、B型文章化とA型図解との橋渡しの役目を期待できる点であり、この双方から筆者は“B型図解”と称し重宝しています。この点については、趣旨は若干違いますが、川喜田氏も“A型図解で物事の本質が高度に煮詰まった場合には、元の図にお構いなく、そのエッセンスを別に絵または単純化した図解に変換してしまう方法がある。”[2](166P)と述べている。
 
 ここでは、高度に煮詰まってはいないかもしれないのですが、その分、エッセンスの単純化をA型図解に忠実に行うようにしているので、この趣旨と大きく離れることはないのではないかと考えています。
 

【ポイント 1】あくまで補助手段です。

 
 このステップは、本来のステップに対する追加・補助ステップであり、A型図解が不十分では、効果が半減します。要するに、このステップを踏むことにより、B型文章化が、より明確になるということであり、“A型図解からB型文章化への移行”に対する未熟さをある程度補ってくれるというのが実感です。
 

【ポイント 2】グループ相互の連関分析がやりやすくなる。

 
 B型図解は、A型図解に比べて簡素化されているので、相互関連分析結果を、符号などを用いてかなり詰めることができる上、その過程で思わぬ発想につながることもしばしばです。このことは、A型図解そのものの不十分さも、ある程度カバーすることができることを意味しています。
 

【ポイント 3】A型図解の訂正は不要。

 
 このステップを踏む段階で、A型図解の空間配置と若干違った配置になることもありますが、A型図解への橋渡し役を果たしてくれるので遡って修正する必要はありません。
 

Step 14:B型文章化(口頭発表)

 
 基本は、混沌の解明結果を、A型図解をもとに解き明かし、スタッフが取り組むべき、新しいシステムの姿や、諸活動に対する方向づけを明示するのが目的です。したがって、目的を達しておれば、いわゆるKJ法 でいう“B型文章化”の形式や趣旨にこだわる必要はなく、むしろ“リポート作成”というとらえ方の方が、ここで取り扱うテーマにはふさわしいでしょう。
 
 ただ、このステップで、上記目的にも増して重要なことは、解析者がB型文章化に取り組む過程で、A型図解(Step 12)までの“入手データに対する忠実性”から脱却し、テーマに密接した、言葉を換えると“問題解決に直結した新たな発想やアイデア”を入手できるということです。
 
 川喜田氏が、「A型図解で終わったかのように安心してしまう人が実に多い。しかし実は、この図解化を踏み台にしてさらに叙述化をしないと本当には1ラウンドが終わったことにならないのです。ところで、先に追加したステップ13でのB型図解は、B型文章化で解析者に生じる、そういった過程を図解により表わす意味もあり、A型図解とB型文章化との関係を理解するための橋渡しの役目も果たすことができるのです。
 

【ポイント 1】 叙述と解釈の区別を明確にしておく。

 
 これは、A型図解から得た結論の“叙述”すなわち、入手データに忠実で客観的な部分と、データの解析を通じて手に入れた新たな発想やアイデア、すなわち、解析者の“解釈”を含んだ主観的な内容とが、だれの目にも分かるようにしておくという意味でああり、川喜田氏は、B型文章化の最も大事な点としています。[1](103P)
 
 これは、事実データの解析を通じて客観的な結論の入手を目的とする野外科学では、主観的な解釈による部分の明確化がB型文章化にとり重要ということです。一方“スタッフワーク”の場合は、“解釈”については、関係者同士がお互い理解し合える範囲内のことゆえ、あまり気にする必要はないが、“発言データ”や“発想”が、外部探検で入手した情報(文献、公演、アドバイスなど)の影響を受けている場合、それらを把握しておくことが重要になるので、ポイントとして取り上げました。
 
 なお、B型文章化における“叙述”と“解釈”の区別をどのようにするかであるが、川喜田氏は“解釈”を( )でくくることを提唱しています[2](142P)、[1](109-117P)が、“叙述”は“である”“です”、“解釈”は“と思う”“らしい”という区別の方が、書くのも、読むのもスムーズでしょう。
 
 ところで、川喜田氏は、この“解釈部分”を、B型文章化を通じて起こる発見であるとし、その内容を「統合発想」「構造修正」「構造の追加」「構造の精密化」「内容追加」の5つに整理し、この順で重要であるとしています。[1](103P)本書で取り上げている“スタッフワーク”の場合、この分類には若干の違和感がありますが、基本的なところでは相通じるものがあり、参考になるので取り上げました。
 

【ポイント 2】 内容は、メンバーの具体策に対する発想を妨げることのないよう注意する。

 
 スタッフワークの場合、B型文章化をもとに、具体的な施策、特に新しいシステムの構築を目指すことが多いのです。その場合、基本構想と具体的な施策追求時の基本方針までは明示する必要がありますが、あまり細部に言及し、関係者の発想を阻害するようなことがあると、せっかくの持てる力が生きないので要注意です。
 

【ポイント 3】 解析者はテーマに対する業界最先端の知識集積が望まれる。

 
 B型文章化により、テーマに対する解決策のレベルが大略決まってしまいます。したがって、解析者は、テーマに関する業界最先端に関わる知識を有し、結論を業界において先駆的なものにする責任があります。こういったことは、にわか勉強でまかない得るものではないので、トップは、自分自身もさることながら、常に、それに応え得る人材を養成しておく必要があります。ここでいう“業界最先端に関わる知識”とは、ステップ3でメンバーに要求した知識とは次元が違うことはいうまでもないでしょう。
 
 次回は、具体策実施の優先順位に関する考察の解説です。
 
【参考文献】
 
[1]「続・発想法」中公新書No.210
[2]「KJ法 」中央公論社

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

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