N7 とは 「新QC七つ道具」の使い方、序論(その1)

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【新QC7つ道具 連載目次】

  1. N7 とは
  2. N7の側面
  3. 21世紀の経営戦略
  4. N7活用上のポイント
  5. 手に入れた結論をリポート

1. 「新QC七つ道具」の使い方、序論

 
 本題に入る前に、幾つか説明しておきたいことがあり序論を設けます。まず、「新QC七つ道具(略称:N7)」についての説明が先行するものの、なぜ筆者が「N7は21世紀が求めているものに応え得る要素を多く含む手法群ではないだろうか」と感じるに至ったかという点です。論点がかなり拡散するので戸惑われるかと思いますが、“なぜ今N7なのか?”に対するご理解が得られるものと思います。次に、サブタイトルにある「21世紀の経営戦略を支える」とはどんなことを指しているのかという点ですが、この説明を通じてこの連載の骨子を把握していただけるものと思います。
 
 いま一つは、前述したような経営戦略に関わるテーマにN7を活用する上で、各手法に共通するポイント、留意点です。筆者の経験から9つ取り上げていますが、これらの説明を通じてこの連載のN7に対する取り組み方をご理解願えるものと思います。
 
 QC
 

2. 「新QC七つ道具(N7)」 とは

 
 「新QC 七つ道具」 とは、次にあげる7つの手法の総称です。
 
① 連関図法 ② 親和図法 ③ マトリックス・データ(MD)解析法 ④ マトリックス図法 ⑤ 系統図法 ⑥ アロー・ダイヤグラム法 ⑦ PDPC法
 
 この連載では、PDPC法のフォローをメーンとした手法として、筆者オリジナルの「PDCA-TC法」を追加しています。手法そのものについては、この連載の主題として後ほど詳述するとして、参考のために、このN7が提唱されるに至った背景と趣旨を、新QC七つ道具研究会(N7研)で受けた説明をもとに筆者なりに取りまとめ、簡単にご紹介しておきます。
 
 N7がQC界に提唱され、その敷延活動の一環としてN7研がスタートした昭和53年当時、QC活動における“管理者・スタッフ”に対するニーズは、従前の、解析主体の“問題解決型”から、設計的アプローチによる“問題(課題)設定型”に移行しつつあり、当時の管理者・スタッフは、既知のSQC手法では手に負えない“新たなニーズ”に対し、自己流、もしくは、無手勝流で悪戦苦闘を強いられており、そういう筆者もその一人でした。
 
 一方、納谷嘉信氏が部会長をしておられた、日科技連の品質管理ベーシックコースに属する「QC手法開発部会」のメンバーの方たちは、そういった状況を既に察知しておられ、従前の“解析主体の活動”に先立つ、「問題の設定や計画の立案、その実行段階における部門間調整」、すなわち「デザインアプロ-チ型問題解決活動」をサポートする手法の開発に昭和44年から取り組んでおられ、8年に及ぶご努力の成果が“新QC7つ道具”であったというわけです。
 
 詳しくは、“N7提唱の書”となった「管理者・スタッフの新QC7つ道具」(QC手法開発部会編、日科技連出版、1979年)を参照していただきたいと思いますが、そこでも述べられているように、N7は、“新”と付いてはいるが、それぞれ何らかの形でオリジナル手法が存在しており、N7のざん新さは、既存手法の用途開発の妙にあり、ソフトウエアのTT(テクニカル・トランスファー)といえます。いま一つ、N7で注目すべき点は、選ばれた手法7つの組み合わせの妙であり、N7がその後のスタッフワークを、具体的な形でデザインアプローチ型に誘導し、時代のニーズに的確に応え、結果として、QC界に確固たる地位を確立することができ得たのは、その点によるところが大きいと感じています。20数年間、N7をスタッフワークに活用してきて感じ入るのは、この7つの手法の選択にみえる、N7提唱者の方々の先見の明であり、畏敬の念を禁じ得ないのです。
 
 

3. 21世紀が求めるものとそれに応えるN7の側面

 
 このテーマには2つの側面があり、一つは、新しい世紀が求める発想の転換、すなわち、“考え方”の問題であり、いま一つは、その思考母体である“脳”の問題です。まず後者から入り、前者の論議を経て結論に言及したいと思います。
 

(1) 脳の性差

 
 脳の性差に関する次のような2つの本があります。
 
A:「話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳 (主婦の友社)
 
B:「女の直感が男社会を覆す」ヘレン・E・フィッシャー著、吉田利子訳(草思社)
 
 著書Aは、ベストセラーに名を連ねた本ですが、内容は、男女平等論がかまびすしいが、それは、政治や道徳の世界の話であって、「科学の次元では、男女は本質的に違う」ということを、日常の身近な事例をふんだんにあげて説明し、その違いの根源を脳の性差(男脳・女脳論)に帰結しています。そして、男女双方が、この違いを認識することにより、男女間のトラブルや行き違いのほとんどが解消されるというのです。説明の起点が、身につまされる身近な話だけに、読みやすくて説得力があります。
 
 一方、著書Bは、あまり話題には上らなかったようですが、著書Aの出版から2カ月後に出た本です。こちらは、題名から分かるように(原題は“The first sex”と、翻訳名と趣が違うが……)、同じテーマを、ビジネスや政治といった社会的見地から、より科学的に論じ、最終的に、21世紀に到来するであろう“新しい世界的な文化”にまで言及しており、激動期にある産業人にとっては、示唆に富む良書である。
 
 また、著書Aでは、男の考え方、女の考え方を、男脳度、女脳度という言葉で表わしていましたが、著書Bでは、前者を“ステップ思考”(集中的、区画的、積み上げ的な思考プロセス)、後者を“ウエブ思考”(直線的ではなく、関連要因のウエブ(網の目)の中で考える思考プロセス)としています。この命名は、男(女)脳が、必ずしも男(女)に限ったことではないので、男(女)脳、即男(女)という誤解を避ける意味で好ましく、この連載ではこの“ステップ思考”“ウエブ思考”を採用しています。このような本がこの時期に相前後して世に出たのは単なる偶然ではないことが、これに続く考え方の説明で分かるでしょう。
 
 次回は、序論、その2です。尚、今後の連載全般を俯瞰して頂くために最後に目次をご覧下さい。
 
 【目次】:今後の連載は下記の順序で進めます。
序論   今回、その1が上記です。
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【新QC7つ道具 連載目次】

  1. N7 とは
  2. N7の側面
  3. 21世紀の経営戦略
  4. N7活用上のポイント
  5. 手に入れた結論をリポート

1. 「新QC七つ道具」の使い方、序論

 
 本題に入る前に、幾つか説明しておきたいことがあり序論を設けます。まず、「新QC七つ道具(略称:N7)」についての説明が先行するものの、なぜ筆者が「N7は21世紀が求めているものに応え得る要素を多く含む手法群ではないだろうか」と感じるに至ったかという点です。論点がかなり拡散するので戸惑われるかと思いますが、“なぜ今N7なのか?”に対するご理解が得られるものと思います。次に、サブタイトルにある「21世紀の経営戦略を支える」とはどんなことを指しているのかという点ですが、この説明を通じてこの連載の骨子を把握していただけるものと思います。
 
 いま一つは、前述したような経営戦略に関わるテーマにN7を活用する上で、各手法に共通するポイント、留意点です。筆者の経験から9つ取り上げていますが、これらの説明を通じてこの連載のN7に対する取り組み方をご理解願えるものと思います。
 
 QC
 

2. 「新QC七つ道具(N7)」 とは

 
 「新QC 七つ道具」 とは、次にあげる7つの手法の総称です。
 
① 連関図法 ② 親和図法 ③ マトリックス・データ(MD)解析法 ④ マトリックス図法 ⑤ 系統図法 ⑥ アロー・ダイヤグラム法 ⑦ PDPC法
 
 この連載では、PDPC法のフォローをメーンとした手法として、筆者オリジナルの「PDCA-TC法」を追加しています。手法そのものについては、この連載の主題として後ほど詳述するとして、参考のために、このN7が提唱されるに至った背景と趣旨を、新QC七つ道具研究会(N7研)で受けた説明をもとに筆者なりに取りまとめ、簡単にご紹介しておきます。
 
 N7がQC界に提唱され、その敷延活動の一環としてN7研がスタートした昭和53年当時、QC活動における“管理者・スタッフ”に対するニーズは、従前の、解析主体の“問題解決型”から、設計的アプローチによる“問題(課題)設定型”に移行しつつあり、当時の管理者・スタッフは、既知のSQC手法では手に負えない“新たなニーズ”に対し、自己流、もしくは、無手勝流で悪戦苦闘を強いられており、そういう筆者もその一人でした。
 
 一方、納谷嘉信氏が部会長をしておられた、日科技連の品質管理ベーシックコースに属する「QC手法開発部会」のメンバーの方たちは、そういった状況を既に察知しておられ、従前の“解析主体の活動”に先立つ、「問題の設定や計画の立案、その実行段階における部門間調整」、すなわち「デザインアプロ-チ型問題解決活動」をサポートする手法の開発に昭和44年から取り組んでおられ、8年に及ぶご努力の成果が“新QC7つ道具”であったというわけです。
 
 詳しくは、“N7提唱の書”となった「管理者・スタッフの新QC7つ道具」(QC手法開発部会編、日科技連出版、1979年)を参照していただきたいと思いますが、そこでも述べられているように、N7は、“新”と付いてはいるが、それぞれ何らかの形でオリジナル手法が存在しており、N7のざん新さは、既存手法の用途開発の妙にあり、ソフトウエアのTT(テクニカル・トランスファー)といえます。いま一つ、N7で注目すべき点は、選ばれた手法7つの組み合わせの妙であり、N7がその後のスタッフワークを、具体的な形でデザインアプローチ型に誘導し、時代のニーズに的確に応え、結果として、QC界に確固たる地位を確立することができ得たのは、その点によるところが大きいと感じています。20数年間、N7をスタッフワークに活用してきて感じ入るのは、この7つの手法の選択にみえる、N7提唱者の方々の先見の明であり、畏敬の念を禁じ得ないのです。
 
 

3. 21世紀が求めるものとそれに応えるN7の側面

 
 このテーマには2つの側面があり、一つは、新しい世紀が求める発想の転換、すなわち、“考え方”の問題であり、いま一つは、その思考母体である“脳”の問題です。まず後者から入り、前者の論議を経て結論に言及したいと思います。
 

(1) 脳の性差

 
 脳の性差に関する次のような2つの本があります。
 
A:「話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳 (主婦の友社)
 
B:「女の直感が男社会を覆す」ヘレン・E・フィッシャー著、吉田利子訳(草思社)
 
 著書Aは、ベストセラーに名を連ねた本ですが、内容は、男女平等論がかまびすしいが、それは、政治や道徳の世界の話であって、「科学の次元では、男女は本質的に違う」ということを、日常の身近な事例をふんだんにあげて説明し、その違いの根源を脳の性差(男脳・女脳論)に帰結しています。そして、男女双方が、この違いを認識することにより、男女間のトラブルや行き違いのほとんどが解消されるというのです。説明の起点が、身につまされる身近な話だけに、読みやすくて説得力があります。
 
 一方、著書Bは、あまり話題には上らなかったようですが、著書Aの出版から2カ月後に出た本です。こちらは、題名から分かるように(原題は“The first sex”と、翻訳名と趣が違うが……)、同じテーマを、ビジネスや政治といった社会的見地から、より科学的に論じ、最終的に、21世紀に到来するであろう“新しい世界的な文化”にまで言及しており、激動期にある産業人にとっては、示唆に富む良書である。
 
 また、著書Aでは、男の考え方、女の考え方を、男脳度、女脳度という言葉で表わしていましたが、著書Bでは、前者を“ステップ思考”(集中的、区画的、積み上げ的な思考プロセス)、後者を“ウエブ思考”(直線的ではなく、関連要因のウエブ(網の目)の中で考える思考プロセス)としています。この命名は、男(女)脳が、必ずしも男(女)に限ったことではないので、男(女)脳、即男(女)という誤解を避ける意味で好ましく、この連載ではこの“ステップ思考”“ウエブ思考”を採用しています。このような本がこの時期に相前後して世に出たのは単なる偶然ではないことが、これに続く考え方の説明で分かるでしょう。
 
 次回は、序論、その2です。尚、今後の連載全般を俯瞰して頂くために最後に目次をご覧下さい。
 
 【目次】:今後の連載は下記の順序で進めます。
序論   今回、その1が上記です。
第1章    混沌解明とN7(新QC七つ道具)
第2章    挑戦管理とN7の選択
第3章    連関図法の使い方  
第4章    親和図法の使い方   
第5章    マトリックス・データ(MD)解析法の使い方 
第6章    マトリックス図法の使い方 
第7章    系統図法の使い方 
第8章    アロー・ダイヤグラム法の使い方 
第9章    PDPC法の使い方 
第10章 PDCA-TC法の使い方 
 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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