新興国で求められる現地現物的アプローチ【トヨタ事例の講演を聴講して】

 12月8日武蔵工大MOT主催の講演会で、元トヨタ専務である岡部聰氏の講演「新興国における現地現物的アプローチ」を聴講し、アジア新興国市場での事業を考えるにあたり大いに参考になりましたので、感想を掲載します。

 岡部氏は東工大社会工学科のご出身で、KJ法で有名な川喜多二郎教授にご師事されました。 先生の野外科学道場で様々な経験と手法を習得、実践されたそうです。

 その後トヨタ自販に入社した岡部氏が海外特にアジア圏で活躍した経験から、新興国での事業成功には次の4つが重要であると語りました。

(1)市場ニーズにマッチした商品開発

(2)各国の政策と強調

(3)良きパートナー

(4)良き人材による現地主体の事業展開

 いずれの項目でも、先進国市場に比べて新興国は平均からの片寄り、ばらつきが大きく、統計的な判断よりも野外活動の要領で、現地現物を子細に観察し、インサイダーとして時系列で変化を捉え、主体的に判断、行動する事の重要性を強調していたように思います。

 ここからは私の考えです。

 現地に同化して当地の需要を取り込んだ製品開発という点では、サムスンが1990年から始めて成功したと言われる「地域専門家制度」が注目されていますが、その20年も前から実績を積み重ねている企業は、どうりで強いわけです。

 東大ものづくり経営研究センター藤本教授の著書「能力構築競争」では、開発生産現場の「深層の競争力」は、価格、製品内容、納期など顧客が直接認知できる「表層の競争力」と異なり一朝一夕には向上できないとしています。しかし今回の講演によれば、たとえ価格、製品企画を決める時間は短くとも、その結論に至るまでには、現地に溶け込んだ長時間にわたる時系列的な判断が必要であるわけで、これまた「深い」競争力と言えそうです。

 また、KJ法は新QC7つ道具の親和図法の原型として非常に有名ですが、その深化に野外活動が一役買っていたのは初耳であり、興味深いものがあります。

 貴重な情報を提供いただいた岡部氏と、講演を公開していただいた芝浦工大さんには心より感謝致します。


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