フールプルーフ 安全設計手法 (その2)

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【安全設計手法 連載目次】

 前回は安全設計手法の中でも最も重要な手法の一つである「フェールセーフ」について解説しました。今回は「フェールセーフ」と並んで重要な安全設計手法である「フールプルーフ」について解説します。
 

 1.フールプルーフの位置づけ

 
 製品安全を実現するためには、「ものは壊れる」「人は間違える」ことを前提とすることが求められます。また、リスク低減の方法は危害の程度を小さくするか、発生頻度を下げるかの2つの方法があります。図1は代表的な安全設計手法の中のフールプルーフの位置づけを示したものです。
 
        安全設計
                               図1 フールプルーフの位置付け
 
 フールプルーフは「人は間違える」「発生頻度を下げる」に対応する代表的な安全設計手法です。
 

2.フールプルーフとは

 
 使用者が誤った使い方(誤使用)をしても、安全性や信頼性を確保する設計の考え方がフールプルーフです。3ステップメソッドに従えば、まず優先すべきは危害の程度を低減することです(多くの場合、フールプルーフによって危害の程度を低減することはできません)危害の程度を十分に低減することは、難しいことが多いのが現実です。また、製品事故の多くは使用者の誤使用に起因します。したがって、使用者の誤使用に対応するフールプルーフは製品安全を確保する上で、フェールセーフと並んで重要な手法です。フールプルーフは身の回りの製品で、頻繁に目にすることができます。フールプルーフを知るためには、実例を学ぶことが最も近道です。そこで、フールプルーフの事例を紹介します。
 

3.フールプルーフの事例

 

 【事例①】電動コーヒーミル

 
                                     安全設計
                                               図2 電動コーヒーミル
                           安全設計
 
 余程のことをしない限り、回転している状態の刃に触れることは難しいでしょう。誤使用防止という意味ではよい設計だと言えます。しかし、スイッチ周りに挽き豆が入り込むとスイッチがスムーズに動作しなくなる危険性もあります。
 

【事例②】ボタン電池/コイン電池を使用する体温計

 
                                                    安全設計
                                         図3 体温計
                               安全設計                                
 
 ボタン電池/コイン電池の誤飲事故はたびたび発生しています。子供が触れる可能性が高い製品では、簡単に取り出せないようにする対策(フールプルーフ)は必須です。
 

【事例③ ゲームのリモコン】

 
                                       安全設計
                                        図4 ゲームのリモコン
                                安全設計                              
 
 特殊ネジは代表的ないたずら防止法(タンパープルーフとも言う)である。公共の場に設置される製品で採用されることが多い。
 

【事例④ 浴室の水栓金具】

 
               安全設計
                                    図5 浴室用水栓金具(出所:LIXIL HP)
                                      安全設計                                        
 

4.フールプルーフを行う上でのポイント

 
 フールプルーフを行う上で、設計者が考えておくべきポイントがいくつか存在します。
 

(1)製品の使われ方の見極め

 
 フールプルーフは使用者の誤使用への対策であるため、製品がどのように使われるかをしっかり見極める必要があります。しかし、想定されるすべての使われ方に対して対策を施していては、市場で受け入れられるコストで製品を作ることはできません。したがって、どのような使われ方まで対応するかを見極めることが重要になります。一般的には、使用者の「意図する使用」「予見可能な誤使用」において安全性を確保することが求められます。設計者はこの「意図する使用」「予見可能な誤使用」において、フールプルーフなどを駆使しながら、安全を確保しなければなりません。
 

 (2)使用者のフールプルーフ慣れ

 
 私たちの身の回りの製品は、これまでの多くの設計者・技術者の努力により、フールプルーフが当たり前となっています。多少の誤使用をしても、すぐに怪我をするようなことはほとんどありません。一方で、フールプルーフな製品に囲まれて生活をしていると、使用者の危険予知能力はどんどん低下していきます。このことは、設計者が十分に認識しておかなければいけません。将来的には、現時点では考えられないような誤使用もあり得ると考えておく必要があります。
 

5.身の回りの製品のフールプルーフに関心を持つ

 
 製品安全を実現するためには「人は間違える」「ものは壊れる」ことを前提としなければなりません。それらに対応するフェールセーフとフールプルーフは、製品の安全を確保する上で、最も重要な手法だと言えます。今回解説したフールプルーフは、多種多様な方法が考えられます。設計者のアイデア次第では、コストUPせずに、安全性を向上させることも可能でしょう。身の回りの製品のフールプルーフを探して、自社製品に活用できないか考えてましょう。
 
 
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【安全設計手法 連載目次】

 前回は安全設計手法の中でも最も重要な手法の一つである「フェールセーフ」について解説しました。今回は「フェールセーフ」と並んで重要な安全設計手法である「フールプルーフ」について解説します。
 

 1.フールプルーフの位置づけ

 
 製品安全を実現するためには、「ものは壊れる」「人は間違える」ことを前提とすることが求められます。また、リスク低減の方法は危害の程度を小さくするか、発生頻度を下げるかの2つの方法があります。図1は代表的な安全設計手法の中のフールプルーフの位置づけを示したものです。
 
        安全設計
                               図1 フールプルーフの位置付け
 
 フールプルーフは「人は間違える」「発生頻度を下げる」に対応する代表的な安全設計手法です。
 

2.フールプルーフとは

 
 使用者が誤った使い方(誤使用)をしても、安全性や信頼性を確保する設計の考え方がフールプルーフです。3ステップメソッドに従えば、まず優先すべきは危害の程度を低減することです(多くの場合、フールプルーフによって危害の程度を低減することはできません)危害の程度を十分に低減することは、難しいことが多いのが現実です。また、製品事故の多くは使用者の誤使用に起因します。したがって、使用者の誤使用に対応するフールプルーフは製品安全を確保する上で、フェールセーフと並んで重要な手法です。フールプルーフは身の回りの製品で、頻繁に目にすることができます。フールプルーフを知るためには、実例を学ぶことが最も近道です。そこで、フールプルーフの事例を紹介します。
 

3.フールプルーフの事例

 

 【事例①】電動コーヒーミル

 
                                     安全設計
                                               図2 電動コーヒーミル
                           安全設計
 
 余程のことをしない限り、回転している状態の刃に触れることは難しいでしょう。誤使用防止という意味ではよい設計だと言えます。しかし、スイッチ周りに挽き豆が入り込むとスイッチがスムーズに動作しなくなる危険性もあります。
 

【事例②】ボタン電池/コイン電池を使用する体温計

 
                                                    安全設計
                                         図3 体温計
                               安全設計                                
 
 ボタン電池/コイン電池の誤飲事故はたびたび発生しています。子供が触れる可能性が高い製品では、簡単に取り出せないようにする対策(フールプルーフ)は必須です。
 

【事例③ ゲームのリモコン】

 
                                       安全設計
                                        図4 ゲームのリモコン
                                安全設計                              
 
 特殊ネジは代表的ないたずら防止法(タンパープルーフとも言う)である。公共の場に設置される製品で採用されることが多い。
 

【事例④ 浴室の水栓金具】

 
               安全設計
                                    図5 浴室用水栓金具(出所:LIXIL HP)
                                      安全設計                                        
 

4.フールプルーフを行う上でのポイント

 
 フールプルーフを行う上で、設計者が考えておくべきポイントがいくつか存在します。
 

(1)製品の使われ方の見極め

 
 フールプルーフは使用者の誤使用への対策であるため、製品がどのように使われるかをしっかり見極める必要があります。しかし、想定されるすべての使われ方に対して対策を施していては、市場で受け入れられるコストで製品を作ることはできません。したがって、どのような使われ方まで対応するかを見極めることが重要になります。一般的には、使用者の「意図する使用」「予見可能な誤使用」において安全性を確保することが求められます。設計者はこの「意図する使用」「予見可能な誤使用」において、フールプルーフなどを駆使しながら、安全を確保しなければなりません。
 

 (2)使用者のフールプルーフ慣れ

 
 私たちの身の回りの製品は、これまでの多くの設計者・技術者の努力により、フールプルーフが当たり前となっています。多少の誤使用をしても、すぐに怪我をするようなことはほとんどありません。一方で、フールプルーフな製品に囲まれて生活をしていると、使用者の危険予知能力はどんどん低下していきます。このことは、設計者が十分に認識しておかなければいけません。将来的には、現時点では考えられないような誤使用もあり得ると考えておく必要があります。
 

5.身の回りの製品のフールプルーフに関心を持つ

 
 製品安全を実現するためには「人は間違える」「ものは壊れる」ことを前提としなければなりません。それらに対応するフェールセーフとフールプルーフは、製品の安全を確保する上で、最も重要な手法だと言えます。今回解説したフールプルーフは、多種多様な方法が考えられます。設計者のアイデア次第では、コストUPせずに、安全性を向上させることも可能でしょう。身の回りの製品のフールプルーフを探して、自社製品に活用できないか考えてましょう。
 
 

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この記事の著者

田口 宏之

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。

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