サービスで事故を未然に防止する

 昨年12月に起きた笹子トンネル事故から、私たちは新たな教訓を汲み取ることができます。それは、先行して起きた事故に共通点として現れています。笹子トンネル天井板崩落事故、パロマの一酸化炭素ガス中毒事故、シンドラーエレベーターの挟まれ事故の共通点はなんでしょうか。いづれも複数の被害者を出し、社会の話題になった事故ということ以外にも共通するものがあります。それは 、いずれの事故もサービス(メンテナンス)をきちんと行っていれば発生を防げたということです。

 笹子トンネル事故に接し、すぐ思い出したのが、大阪吹田市エキスポランドのジェットコースターの車軸折れ事故です。この一事故が原因でエキスポランドは廃業になりました。衣食を失った大勢の従業員もまた悲惨な被害者です。直近に起きた笹子トンネル事故は、40年前の工事物件で、現代の技術で推し測れませんが、重要安全部品のボルトの締結力を目視でメンテナンスするという、安全センスの欠落が重大事故を招いています。5メート上空の数センチのボルトを目視で確認では、安全放棄と同じです。トンネル設計時にサービス用のキャットウォークをつけるなどは意識の外にあったようです。

 パロマの事故は逆にメンテナンスで危険性を組み込んでしまった事例ですが、製造者として、修理マンに不思議な改造をさせず、正しくサービスさせていれば200億円ものリコール費用は発生しなかったのです。シンドラーエレベーターもブレーキワイヤーの劣化の放置、安全部品の清掃を怠るなどにより、エレベーターを停止させている保持力が不足で被害者が発生しました。正にサービス、メンテナンスの重要さが肝に銘じられる事故です。

  誰も事故を望む人はいませんが、誰しもが常々の平穏な生活に疑問を抱くことなく、今やるべきことに追われる毎日を過ごしているのが今の社会風潮です。私たち生活者同様、安全管理の業務に従事するオペレーターもまた同じです。昨日まで安全に使っていた製品がある日突然危険なものに変身する、その予兆(インシデント)は必ずあります。必ずありますが私たち使用者やオペレーターがその予兆を無視したために事故(アクシデント)に至るのです。

 人は生物として五感から得た情報で行動しますが、製品は事故に至る前には必ず情報を出します。常日頃聞かなかった異音、発熱、異臭、粉など異物発生、振動、ガタツキなど、製品ごとに様々な症例の、またこの組み合わせで、製品は事故の予兆を訴えます。五感を使い早期に発見できればサービス料も安価で済みます。車の運転で急がつく三つの操作は禁忌ですが、しかし不具合の予兆を確認したならば即、急メンテがお勧めで、安全に製品を楽しむ方法のひとつです。

 先述した一連の事故は、メンテナンスを疎かにされていた製品の手痛い報復です。製品は工場を出荷された時が一番元気な状態ですが、市場に出て動き始めたときから劣化が始まります。製品も私たち同様、加齢で故障し壊れるのです。

 一方それを使う人の側は絶えず使用を間違えます。「製品は故障し人は間違える」のです。私たちの生活は快調な製品を正しく使うという極と、故障した製品を間違って使うという極の狭間を行き来します。この振幅の中で、生活の場面では事故が必ず先に起き、その対策として安全施策が後を追うことになります。安全施策が功を奏すとまた新しいタイプの事故が起きます。安全施策と事故の関係は、いわば「ツエノンの逆説」を体言しているようで、アキレス(安全施策)は亀(事故)に追いつけない、いや、その差は極微小に詰まるどころか、逆に開き始めているように感じます。近頃まではその差とは、私たちの製品を使う「使用力」と製品性能との距離でした。製造者は使用者の手間や手数を省く製品を市場に送ります。私たち使用者もまた、簡単操作、ワンボタン起動、メンテナンスフリーなどのキャッチフレーズに感化され、次々とニューモデルに代替してきました。

 しかし、今の時代は既存製品をサービスとメンテナンスで最後までしっかり使う時代です。私は、この消費行動が本来の消費者市民社会と思っています。製品は劣化してもサービスが最新ならば安全は劣化しないのです。ニューモデルも当然必要ですが、「製品は故障し人は間違える」ことを設計に織り込んだ製品の時代です。

安全工学事例
 疲労破壊が避けて通れないならば、せめて破壊が連続的に進行する、笹子トンネルの天井板の如くドミノ破壊に至らない製品、壊れるときには安全に壊れる死に方設計のデザインが重要です。時として。先に正誤表を作りそれに従って誤植をしてゆくことも必要なのです。

 

(右図)危険な壊れ方の例。疲労破壊で背もたれが後ろに倒れたイス


この記事の著者

村田 一郎

R-MapⓇで、企業の存亡を左右するリスクマネジメントを診断し、安全を安価に安定してコンサルします。

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