安全設計手法 (その7)プラスチックの応力とひずみ (その1)

 プラスチックを上手に使いこなすためには、プラスチックの性質をよく理解することが重要です。その中でも応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。今回はプラスチックにおける応力とひずみの関係について解説します。
 

1. プラスチックの弾性変形

 応力とひずみが比例関係にあるときの変形を弾性変形、このような関係が成り立つことをフックの法則といいます。この時、応力σ、ヤング率E、ひずみεはσ=Eεの関係式で表され、グラフは直線となります。この直線の傾きがヤング率(縦弾性係数)です。ヤング率は引張試験で測定した値と曲げ試験で測定した値を区別するために、それぞれ引張弾性率、曲げ弾性率と呼ばれることもあります。
 
弾性変形
図1. フックの法則
 
 弾性変形をする時のプラスチックの挙動は、中学校や高校で学んだばねと全く同じ考え方をすればよいでしょう。ばねを引っ張る力F、ばねの硬さを示すばね定数k、ばねの伸びxにおいて、F=kxという関係式が成り立ちます。荷重Fが応力σ、ばね定数kがヤング率E、ばねの伸びxがひずみεになったと考えれば分かりやすいでしょう。
 
弾性
図2. ばねにおけるフックの法則
 

2. プラスチックのヤング率

 フックの法則σ=Eεより、ヤング率Eが大きいほど、変形させるのに大きな力が必要な「硬い材料」だといえます。プラスチックは金属などと比べると柔らかい材料です。プラスチックと各種材料のヤング率の違いを図3に示します。
 
ヤング率
図3. プラスチックと各種材料のヤング率
 
 家電などに使われる身近なプラスチック(ABSやPPなど)は、金属と比べると2桁ヤング率が小さいことが分かります。同じ形状のものであれば、同じ長さだけ変化させるのに、プラスチックは金属の1/10~1/100の力で変形させることができます。変形しやすいことにはメリットもデメリットもあるので、プラスチックの特性をよく理解して使用することが大切です。
 

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3. 応力-ひずみ曲線の1

 材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、プラスチックの弾性変形範囲は非常に狭いので、設計を行う上では注意を要します。弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。英語で応力はStress、ひずみはStrainなので、頭文字を取ってS-S曲線とも呼ばれます。図4に引張試験で得られたプラスチックの応力-ひずみ曲線の一例を示します。
 
ひずみ曲線
図4. プラスチックの応力-ひずみ曲線の例
 

(1) 弾性変形範囲(引張弾性率/ヤング率)

 フックの法則に概ね従う範囲です。グラフがほぼ直線状になって、この時の傾きがヤング率(引張弾性率)です。プラスチックの場合、完全に弾性変形となる範囲はほとんどないのですが、実用上、弾性変形として考えてもよいのは、ひずみが1%ぐらいまでといわれています。
 

(2) 引張降伏応力

 応力が増えずにひずみが増える最初の部分、すなわち曲線の最初にできる山の頂上部分を降伏点といい、その時の応力を引張降伏応力といいます。降伏点が現れる材料の場合、引張降伏応力と引張強さは同じ値となります。降伏応力を超える応力が発生すると、材料が塑性変形してしまうので、そのような応力が発生しないように設計することが基本です。
 

(3) 引張破壊応力

 試験片が破壊する時の応力。降伏点が現れない材料の場合、引張破壊応力と引張強さは同じ値となります。材料によって降伏応力よりも大きい場合と小さい場合があります。
 
 次回は、応力-ひずみ曲線の2、衝撃エネルギー吸収能力から解説します。
 

この記事の著者

田口 宏之

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