何を作ったら良いか分らない状態での新商品開発法とは(その2)

更新日

投稿日

 何を作ったら良いか分らない状態の下で、新商品・新システムを考え出すための新商品開発法 (S2D)を 連載で解説しています。今回は、その2です。前回のその1に続いて解説します。

 

3.新商品開発を進めるための方法(S2D)

 
 その1に述べたような、「目標が漠然」としていて、単に「新商品を開発せよ」と言われるだけのような場合はターゲットを絞ることが困難で、どこから手をつけてよいか分らず、手をつけたとしてもそれが正しいことなのかどうか自信が持てないということになってしまいます。このような状況下でも新製品・新システムの企画ができるやり方を整理し説明します。新商品開発法 (S2D)の概観を図2に示します。
 
               商品開発
                図2.新商品開発法(S2D法)の概観
 

(1)システム思考「上位目的とそのための手段の利用」

 
 自分たちが持っている技術を出発点にして商品のマップを捉え、パラダイムシフトを考えることで現在保有している技術や商品にこだわらない範囲への拡張、すなわち商品や技術の必要性つまり人間の顕在的および 潜在的な欲求を引き出します。とはいえ、全く「土地勘」のない領域をやみくもに探し回っても時間と労力の無駄遣いです。自分たちが持っている技術領域の周辺から探るのが良策であり、自分たちの力(時間・人手)に 応じてその領域を広げていけばよいのです。
 
 したがって、自分たちがよく知っている「現在のシステム」からスタートし、「現在のシステム」が社会から要求されている理由、つまり“何のためにこの現在のシステムがあるのか”を考えて「上位目的」を捉えます。 さらに現在のシステムおよび、上位目的を支える「Sub 目的」や、Sub目的を支える「手段」を列挙します。例として、バイクのサイドミラーから出発します(図3参照)
 
 商品開発
                       図3.バイクの例
 
 ミラーはバイクを使う一部として存在しており、バイクを使うのは目的地に移動するためです。目的地への移動のためのSub目的として「楽に行く」「早く行く」「安全に行く」などがあります。安全に行くための手段の1つに後方カメラが考えられます。それをさらに発展させると「後方の映像を表示させるシステム」が考えられます。この例では「後方カメラ」やその「映像表示システム」、さらに「居眠り監視機構」や、全く別視点の「自動誘導システム」や「車輌共有システム」など、もはやミラーとは関係ないシステムなどが提案されます。新商品のタネはたくさんころがっているのです。これらの「Sub目的」や「手段」の中で自分たちが乗り出せそうな領域、すなわち自分たちの技術力、市場規模、競争力、などを考慮して絞り込み選択し、それを対 象システムとします。これを基にして、次の2つの方 法でさらにブラッシュアップします。
 

A)スーパーシステムへの移行の利用

 
 「対象システム」のブラッシュアップとして、まず 「9画面法」を用います。9画面法では対象システム を包含する「スーパーシステム」や対象システムを支える「サブシステム」を考えます。対象システムを「後方映像表示システム」とした場合、ゴーグルへの表示やさらには後方車の接近速度の超音波計測との併用で衝突危険信号を出すという未来の姿を描くことができます。
 

B)技術システム進化の法則の利用

 
 生物の進化と同様に技術システムは「進...

 何を作ったら良いか分らない状態の下で、新商品・新システムを考え出すための新商品開発法 (S2D)を 連載で解説しています。今回は、その2です。前回のその1に続いて解説します。

 

3.新商品開発を進めるための方法(S2D)

 
 その1に述べたような、「目標が漠然」としていて、単に「新商品を開発せよ」と言われるだけのような場合はターゲットを絞ることが困難で、どこから手をつけてよいか分らず、手をつけたとしてもそれが正しいことなのかどうか自信が持てないということになってしまいます。このような状況下でも新製品・新システムの企画ができるやり方を整理し説明します。新商品開発法 (S2D)の概観を図2に示します。
 
               商品開発
                図2.新商品開発法(S2D法)の概観
 

(1)システム思考「上位目的とそのための手段の利用」

 
 自分たちが持っている技術を出発点にして商品のマップを捉え、パラダイムシフトを考えることで現在保有している技術や商品にこだわらない範囲への拡張、すなわち商品や技術の必要性つまり人間の顕在的および 潜在的な欲求を引き出します。とはいえ、全く「土地勘」のない領域をやみくもに探し回っても時間と労力の無駄遣いです。自分たちが持っている技術領域の周辺から探るのが良策であり、自分たちの力(時間・人手)に 応じてその領域を広げていけばよいのです。
 
 したがって、自分たちがよく知っている「現在のシステム」からスタートし、「現在のシステム」が社会から要求されている理由、つまり“何のためにこの現在のシステムがあるのか”を考えて「上位目的」を捉えます。 さらに現在のシステムおよび、上位目的を支える「Sub 目的」や、Sub目的を支える「手段」を列挙します。例として、バイクのサイドミラーから出発します(図3参照)
 
 商品開発
                       図3.バイクの例
 
 ミラーはバイクを使う一部として存在しており、バイクを使うのは目的地に移動するためです。目的地への移動のためのSub目的として「楽に行く」「早く行く」「安全に行く」などがあります。安全に行くための手段の1つに後方カメラが考えられます。それをさらに発展させると「後方の映像を表示させるシステム」が考えられます。この例では「後方カメラ」やその「映像表示システム」、さらに「居眠り監視機構」や、全く別視点の「自動誘導システム」や「車輌共有システム」など、もはやミラーとは関係ないシステムなどが提案されます。新商品のタネはたくさんころがっているのです。これらの「Sub目的」や「手段」の中で自分たちが乗り出せそうな領域、すなわち自分たちの技術力、市場規模、競争力、などを考慮して絞り込み選択し、それを対 象システムとします。これを基にして、次の2つの方 法でさらにブラッシュアップします。
 

A)スーパーシステムへの移行の利用

 
 「対象システム」のブラッシュアップとして、まず 「9画面法」を用います。9画面法では対象システム を包含する「スーパーシステム」や対象システムを支える「サブシステム」を考えます。対象システムを「後方映像表示システム」とした場合、ゴーグルへの表示やさらには後方車の接近速度の超音波計測との併用で衝突危険信号を出すという未来の姿を描くことができます。
 

B)技術システム進化の法則の利用

 
 生物の進化と同様に技術システムは「進化」している と捉え、そのシステムの進化には一定のパターンがある という考え方です。対象システムの「後方映像表示システム」は、進化の1つである制御性向上の観点から、後方画像から後方の車との車間距離の縮まり方を計算し、危険領域に入る前から「予告の」警告を出させる というさらに望ましい形に発展させることが考えられます。
 
 次回、その3では、(2)10年後の未来素案の作成 からです。
 
 

◆関連解説『アイデア発想法とは』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

三原 祐治

技術開発/課題解決のための最も強力なTRIZとその実践法であるUSITを用いて、試行錯誤を繰り返すことによるムダな時間と労力を費やさずに、短期間で最高の結果を手にしよう!

技術開発/課題解決のための最も強力なTRIZとその実践法であるUSITを用いて、試行錯誤を繰り返すことによるムダな時間と労力を費やさずに、短期間で最高の結...


「アイデア発想法一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
何を作ったら良いか分らない状態での新商品開発法とは(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   3.新商品開発を進めるための方法(S2D)   (2)10年後の未来素案の作成 &n...

 前回のその2に続いて解説します。   3.新商品開発を進めるための方法(S2D)   (2)10年後の未来素案の作成 &n...


発散思考と収束思考の使い分け

  ◆関連解説『アイデア発想法とは』 1.発散思考と収束思考の活用法  アメリカの著名な心理学者、J・P・ギルフォードは人間の頭脳を「...

  ◆関連解説『アイデア発想法とは』 1.発散思考と収束思考の活用法  アメリカの著名な心理学者、J・P・ギルフォードは人間の頭脳を「...


大量の発想データを整理するには「ブロック法」を活用しよう!

1.ブロック法とはなにか?  ブロック法は、発想データを項目別にまとめあげデータの粗整理を行なう手法で、大量のデータを大まかに整理するのに便利です。 ...

1.ブロック法とはなにか?  ブロック法は、発想データを項目別にまとめあげデータの粗整理を行なう手法で、大量のデータを大まかに整理するのに便利です。 ...


「アイデア発想法一般」の活用事例

もっと見る
自然界をヒントにした発想事例1 -ベンゼン核、座標軸、万有引力-

 自然界の現象を見て科学法則を思いつく事例はたくさんあります。そのなかのいくつかを紹介していきましょう。   1.ヘビがとぐろを巻く夢からベンゼンの構造...

 自然界の現象を見て科学法則を思いつく事例はたくさんあります。そのなかのいくつかを紹介していきましょう。   1.ヘビがとぐろを巻く夢からベンゼンの構造...


発明事例-実験で出たガスの臭いから未知の生成物を直観、合成ゴム発明の物語

 アセチレンの研究に没頭していたアメリカの化学者ジュリアス・オーサー・ニューランドは、ある時アセチレンを銅とアルカリ金属の塩化物の溶液に通すと奇妙なにおい...

 アセチレンの研究に没頭していたアメリカの化学者ジュリアス・オーサー・ニューランドは、ある時アセチレンを銅とアルカリ金属の塩化物の溶液に通すと奇妙なにおい...


-活字印刷、合成ゴム- 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1)

【ひらめきの法則 連載目次】 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン...

【ひらめきの法則 連載目次】 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン...