人的資源マネジメント:自分が変われば組織が変わる(その2)

 前回のその1に続いて解説します。
 

3. ポジティブ・リーダーシップ

 ポジティブ組織開発の名著といわれている書籍に、ロバート・クイン「Lift : The Fundamental State of Leadership」があります。翻訳されていないので知っている人は少ないかもしれませんが、組織を変えるためのリーダーシップについて明快なモデルを提示していますので、紹介したいと思います。
 
人的資源マネジメント
図169. Fundamental “state” of Leadership
 
 クインは、リーダーシップとは図に示すように次の4つの思考や感情があらわれている心理状態だと定義しています。研究や実験により、この4つの思考や感情を経験することで、高い志を意識することができ、さらに、関係している人たちの志も高まることがわかっています。
 
 この図では、リーダーシップに必要となる思考や感情を、柔軟性と安定性、そして、外側を向いているのか内側なのかという2軸であらわしています。柔軟性はこだわりがない状態、安定性はぶれることがない状態、外側とは意識が自分の外に向かっている状態、内側とは自分自身に向かっている状態です。ある意味、柔軟性と安定性、外側と内側という相反するものをどちらも大切にすることが大切だということです。そして、大切にすべきこの2つの軸で定義される4つの心理状態になることが、組織を変えるためのリーダーシップそのものなのです。一般的なリーダーシップと区別するために、これをポジティブ・リーダーシップと呼ぶことにしましょう。
 
人的資源マネジメント
図170. 日常的に陥りやすい心理状態
 
 このモデルは、この4つの心理状態になる努力をすれば誰もがリーダーシップを発揮できる、すなわち、組織を変えることができるということを伝えています。シンプルですね。ただし、日常生活の中でポジティブ・リーダーシップの心理状態になることは難しく、実践は決して簡単ではありません。4つの思考や感情は次のような状態になりがちだからです。
 

セミナー「ISO 45001 入門と要求事項の解説コース」

9:15 ~ 17:00 

東京・日科技連 本部

23,760円

4. ポジティブ・リーダーシップのための4つの質問

 組織を変えるための心理状態がポジティブ・リーダーシップですから、日常に流されることなく、ポジティブ・リーダーシップの心理状態を思い起こすことが重要です。そのためのもっとも簡単でかつ有効な方法が、次の4つの質問に答えることです。
 
人的資源マネジメント
図171. ポジティブ・リーダーシップのための4つの質問
 
 質問1は短期的で安易な満足を求めるのではなく、意識を将来的に自分が満足できる本当の目的志向にするためのものです。次のような質問に変えることもできます。
 
・この状況下でもっとも高次元の目的は何だろうか?
・もっともやりがいがあって挑戦できる目標(ゴール)は何だろうか?
・自分にとってもっとも意味があると思える成果は何だろうか?
・熱意を持って追求できるもっとも刺激的な目標は何だろうか?
 
 質問2は人の眼を気にしたり他人の価値観に従うことを減らし、自分の価値観や美学を意識するためのものです。次のような質問に変えることもできます。
 
・今より 10% だけ理想の自分になったらどんな過ごし方をしているだろうか?
・今の状況で自分の強みを発揮するにはどうしたらいいだろうか?
・あらゆるネガティブな影響を無視することができたら、やるべきことは何だろうか?
 
 質問3は利己主義的な志向を減らし、他者の気持ちに寄り添う気持ちを高めるためのものです。次のような質問に変えることもできます。
 
・今の状況に関わっている他者の満たされない思いにはどんなものがあるでしょうか?
・他者の行動を批判したくなる状況下で、彼らが良い人と考えることができるなら彼らの行動にはどのような理由があったのだろうか?
・世のため人のためにできることには何があるだろうか?
 
 質問4は自分のこだわりや判断という内向きの意識を、どんな知見であってもオープンマインドな姿勢で受け入れる意識に変えるためのものです。次のような質問に変えることもできます。
 
・今の状況に関連したあらゆるフィードバックに耳を傾けることができたら、自分はどのように変わるだろうか?
・自分の役割や専門性、管理責任などを気にしなくてもよいとしたら、自分はどのように行動するだろうか?
・今の状況を学習機会や挑戦機会だと考えることができたら、自分はどんな取り組みをするのだろうか?
 
 これまでに紹介してきたレジリエンスは、ポジティブ心理学が重視し成果をあげている領域のひとつですが、ポジティブ組織開発も同じように重視し成果をあげている領域です。ポジティブ組織開発の考え方や実践は、日本企業の発展に必要なものになると思いますし、グローバルな競争を強いられる経営環境と、IoTやAIなどの大きな技術環境の変化の中で、常に変化・変革を要求されている製造業は必要不可欠なものになると考えています。
 
 今回は概略だけの紹介となりましたが、今後の連載の中で少しずつ詳細な内容を紹介していきたいと思います。
  

この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

社会や生活を変える「ものづくり」と、そんな製品やサービスを開発する「ひとづくり」を行う組織づくりのために、日科技連石川賞を受賞した仕組み改革の実績や、オリンピック金メダルを生んだコーチング技術を活用した意識改革の実績など、持っているリソー…

無料会員登録でさらにあなたに特化した情報を手に入れましょう。

①「人的資源マネジメント」の関連記事が掲載されたらメールでお知らせ

②専門家「石橋 良造」先生に記事内容について直接質問が可能

③他にも数々の特典があります。