イノベーションに取り組む第1歩はR&D

更新日

投稿日

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】

1.目的を定めた革新

 
 イノベーションものづくり企業の現場でイノベーションという言葉を聞かない日はなくなりました。さらには、企業だけでなく、国や地方自治体の政策、あるいは学校などの教育現場においてもイノベーションという言葉が用いられ、社会における様々なシーンに浸透してきているように思います。
 
 しかし、一方でイノベーションという言葉だけが先行してしまい、その概念が明確に定義され、共有されているかというと少し疑問に感じます。かつては、イノベーション=技術革新として理解されていた時代がありました。その名残か、現在でもイノベーション=革新というように訳される場合もあります(さすがに、「技術」という限定はなくなりましたが)。私としては、イノベーション=革新という定義は、正直どうも腹落ちしません。なぜなら、目的なくただ革新することはイノベーションではないと思うからです。
 
 では、イノベーションとは何でしょうか。様々な経営学の学者やコンサルタントの方々が語っていますが、わかりやすい定義にはあまりお目にかかったことはないように思います。そこで、ここでは私なりにイノベーションについて定義してみようと思います。
 

2.偉大な二人の学者

 
 イノベーションについて考える時、2人の偉大な経済・経営学者を外すことはできないでしょう。一人は、ヨーゼフ・A・シュンペーターです。シュンペーターは、100年以上も前に活躍した経済学者ですが、ダンナミックな経済変動の要因は、新たな需要を創造する新結合(既存の知を結合させて新たな知を生み出す行為)であることを看破しました。そして、この新結合をイノベーションと呼びました。また、新結合により新たな需要を生み出すことで、経済成長を促進し、社会を変えていく人々を企業家(アントレプレナー)と名付けました。
 
 もう一人あげるとすれば、ピーター・F・ドラッガーでしょう。ドラッガーはその著書『イノベーションと企業家精神』の中で、「イノベーションは、既存の資源から富を生み出す。イノベーションは、技術に限ったものではない。モノである必要さえない。」と言っています。
 

3.イノベーションの定義

 
 私は、イノベーションは「価値の創造と具現化」であると定義しています。すなわち、イノベーションは、単に既存のものを新しくすることではなく、顧客そして社会に新たな価値を創造すること、そして収益が伴う事業にすることであるとして理解しています。どんなに、革新的技術を開発しようとも、組織を変革しようとも、生産や物流の仕組みを変えようとも、それらが価値を生まなければイノベーションではないのです。
 
 そして、ものづくり企業のR&Dは価値創造を目的にして仕事をする組織です。それは製品開発だけでなく、要素技術や評価・解析技術、製造・生産技術な...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】

1.目的を定めた革新

 
 イノベーションものづくり企業の現場でイノベーションという言葉を聞かない日はなくなりました。さらには、企業だけでなく、国や地方自治体の政策、あるいは学校などの教育現場においてもイノベーションという言葉が用いられ、社会における様々なシーンに浸透してきているように思います。
 
 しかし、一方でイノベーションという言葉だけが先行してしまい、その概念が明確に定義され、共有されているかというと少し疑問に感じます。かつては、イノベーション=技術革新として理解されていた時代がありました。その名残か、現在でもイノベーション=革新というように訳される場合もあります(さすがに、「技術」という限定はなくなりましたが)。私としては、イノベーション=革新という定義は、正直どうも腹落ちしません。なぜなら、目的なくただ革新することはイノベーションではないと思うからです。
 
 では、イノベーションとは何でしょうか。様々な経営学の学者やコンサルタントの方々が語っていますが、わかりやすい定義にはあまりお目にかかったことはないように思います。そこで、ここでは私なりにイノベーションについて定義してみようと思います。
 

2.偉大な二人の学者

 
 イノベーションについて考える時、2人の偉大な経済・経営学者を外すことはできないでしょう。一人は、ヨーゼフ・A・シュンペーターです。シュンペーターは、100年以上も前に活躍した経済学者ですが、ダンナミックな経済変動の要因は、新たな需要を創造する新結合(既存の知を結合させて新たな知を生み出す行為)であることを看破しました。そして、この新結合をイノベーションと呼びました。また、新結合により新たな需要を生み出すことで、経済成長を促進し、社会を変えていく人々を企業家(アントレプレナー)と名付けました。
 
 もう一人あげるとすれば、ピーター・F・ドラッガーでしょう。ドラッガーはその著書『イノベーションと企業家精神』の中で、「イノベーションは、既存の資源から富を生み出す。イノベーションは、技術に限ったものではない。モノである必要さえない。」と言っています。
 

3.イノベーションの定義

 
 私は、イノベーションは「価値の創造と具現化」であると定義しています。すなわち、イノベーションは、単に既存のものを新しくすることではなく、顧客そして社会に新たな価値を創造すること、そして収益が伴う事業にすることであるとして理解しています。どんなに、革新的技術を開発しようとも、組織を変革しようとも、生産や物流の仕組みを変えようとも、それらが価値を生まなければイノベーションではないのです。
 
 そして、ものづくり企業のR&Dは価値創造を目的にして仕事をする組織です。それは製品開発だけでなく、要素技術や評価・解析技術、製造・生産技術などを担っている研究部門や技術開発部門についても同様です。むしろ、このような一見顧客から遠いように思う組織こそが顧客価値を目的とした仕事をしていくことが大切です。
 
 R&Dがイノベーションに取り組む第1歩は、ことさらに技術革新ネタを探すことではなく、まず自らの技術を使うお客様は誰か、そしてお客様はどのような価値を感じているのか、なぜ他社からではなく自社から買うのかをじっくり考え、そして自分達が開発した技術を使う顧客の姿を具体化し、共有することだと考えます。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

平木 肇

『テクノロジストの知恵を新たな価値を生み出す力に変える』社会を変える新たな価値創造へ向けて、技術の進化と人材の開発に挑戦するものづくり企業を全力で支援します。

『テクノロジストの知恵を新たな価値を生み出す力に変える』社会を変える新たな価値創造へ向けて、技術の進化と人材の開発に挑戦するものづくり企業を全力で支援します。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
最も未来に近い最先端を経験 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その54)

        現在イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)...

        現在イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)...


イノベーション創出 新規事業を実現する技術経営のあり方【連載記事紹介】 

【目次】 ◆ 研究開発/技術戦略部門の現場の嘆き 企業のR&Dの現場では、新たな価値を生み出すために個々のレベルで、何を目...

【目次】 ◆ 研究開発/技術戦略部門の現場の嘆き 企業のR&Dの現場では、新たな価値を生み出すために個々のレベルで、何を目...


開発効率向上、活動計画 2 開発効率を上げる(その5)

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...

【開発効率向上の重要性 連載目次】 製造業の生産性 開発効率向上の重要性 開発効率向上活動の考え方 開発効率向上、活動計画 1  ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
進捗の見える化:第1回 プロジェクト管理の仕組み (その10)

 この数回はプロジェクト管理の仕組みについて解説していますが、表面的な仕組みではなく、本質的な課題に対応したより進化・深化した仕組みにするための考え方を解...

 この数回はプロジェクト管理の仕組みについて解説していますが、表面的な仕組みではなく、本質的な課題に対応したより進化・深化した仕組みにするための考え方を解...


ソフト開発計画の作成方法 プロジェクト管理の仕組み (その5)

 前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...

 前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...


イノベーション戦略のキーツールとは

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...