フロントローディング、開発重視、源流管理の考え方とは

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フロントローディング、開発重視、源流管理の考え方とは

 

製造プロセスにおける設計部門を中心とした業務を表す開発の初期段階であるエンジニアリングチェーンエンジニアリングチェーン( engineering chain )において、初期段階である開発に資源を集中的に投入することでにより、問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダの少なくすることが重要です。少なく発生を抑える開発手法です。

フロントローディング型の一番の恩恵は開発の下流でなんとか設計変更することではなく、ものづくりをスタートする前にいかに設計品質を作り込むか!これがフロントローディング型の醍醐味です。今回は、フロントローディング、開発重視、源流管理の考え方について解説します。 

 

1. フロントローディングとは

フロントローディングは、トヨタ自動車が開発に導入した方法です。問題点を開発の早い時点で発見し解決する、源流管理の考え方です。これを表す最適な言葉が『品質は工程で造り込む』に代わって『品質は設計で造り込む』という言葉です。同様にコストは原価企画の段階で作り込むことが重要です。

作業を前倒し(フロント)で負荷をかける(ローディング)という意味合いで、フロントローディングと呼ばれています。

フロント・ローディングと従来との比較イメージ

図1、フロント・ローディングと従来との比較イメージ

 

比較的近代的なシステムと思われがちですが概念そのものは古くからあり、3次元設計の発達とともに実現しやすくなってきました。今では手製造業が企業全体で取り組むシステムの一つです。

 

2. フロントローディングの重要性

グローバル化、顧客の製品機能要求の高度化・多様化、環境制約・資源制約の先鋭化といった傾向が高まっていますが、企業が果たすべき社会的役割に注目が集まり、製品に対する機能要求が高まる一方で、制約条件が厳しくなるのであれば、製品は一層複雑化することにならざるを得ないでしょう。

仕様変更の自由度と品質・コストの確定度

図2、仕様変更の自由度と品質・コストの確定度

 

また、製品に占める制御ソフトウェアの比率が高まっていることも、製品の複雑化を招いています。この傾向は自動車において特に顕著です。このように製品が複雑化していけばいくほど、エンジニアリングチェーンに掛かる負荷はより大きなものとなります。すなわち、製品の複雑化が進めば進むほどに、それに対応できるエンジニアリング能力の高さこそが、製造業の競争力を左右するといます。

 

このような背景で、設計不具合を分析すると、その90%は良く知られた故障メカニズムで発生しており「気づかなかった」不具合がほとんどでした。この「気づかない」というのはヒューマンエラーです。言い換えると、思ってもいなかった一般的な故障メカニズムで発生する事が多く、製品固有の故障メカニズムはDR(デザインレビュー)等で審議され、事前に処置されるので発生確率も少ないのです。源流管理(フロントローディング)で、この思ってもいなかった一般的な故障メカニズムに気づいて処置をしておく事が大切です。良くない設計は消費者に迷惑が及び、大企業といえども倒産するという可能性もあります。

DXの推進を進めている企業は沢山あります。その中で設計業務を主とする会社/事業部においてDXの推進をCAD導入することで満足してはいないでしょうか?本当のDX推進とは、ありとあらゆるものづくりに影響するDXをつなぎ活用しフロントローディング型の設計・開発を実現することです。

 

3.  フロントローディングの方法

フロントローディングに取り組むということは、それだけ設計初期の重要性を認識しているということに他ならないのです。人員を補強するなど、企業のトップがしかるべき策を講じる必要があります。局所的には設計部門の負荷が高まりますが、フロントローディングに取り組むということは、大局的にはコストや時間を削減できるのだという総合的な効果をアピールしていくことが必要です。

フロントローディング実現に向け設計変更の件数や質を定量的に管理しようとしている企業もあります。出図後の設計変更に限らず、出図前に不具合の発見件数を管理し、目標件数に達するまで不具合がないかを探すのです。そのためには過去の設計変更情報を管理しておかなくてはならないでしょう。出図前のそれは担当者の頭のなかだけにしまわれていることが多い情報を、いつ、どんな不具合を洗い出して、それをどう解決したかをできる限り保存しておくことで、次の設計に生かすことです。

 

4.  フロントローディングのメリット

フロントローディングのメリットは、生産技術・製造・品質保証部門などは下流のプロセス段階で発生した問題を処理するのではなく、上流の開発設計部門と協力して後工程で想定される問題を洗い出し(フロントローディング)して、開発工程の「手戻り」を削減できるようになることです。

フロントローディングの場合ならば試作の前にCAD/CAE三次元シミュレーションを行い、設計の段階で問題点を洗い出してムダに試作品を作りません、手戻りのない製造プロセスにする事で時間の短縮やコストカットにつながるメリットも発生します。

 

5.  フロントローディングの注意点

上層部でフロントローディングの導入を検討しても、現...

フロントローディング、開発重視、源流管理の考え方とは

 

製造プロセスにおける設計部門を中心とした業務を表す開発の初期段階であるエンジニアリングチェーンエンジニアリングチェーン( engineering chain )において、初期段階である開発に資源を集中的に投入することでにより、問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダの少なくすることが重要です。少なく発生を抑える開発手法です。

フロントローディング型の一番の恩恵は開発の下流でなんとか設計変更することではなく、ものづくりをスタートする前にいかに設計品質を作り込むか!これがフロントローディング型の醍醐味です。今回は、フロントローディング、開発重視、源流管理の考え方について解説します。 

 

1. フロントローディングとは

フロントローディングは、トヨタ自動車が開発に導入した方法です。問題点を開発の早い時点で発見し解決する、源流管理の考え方です。これを表す最適な言葉が『品質は工程で造り込む』に代わって『品質は設計で造り込む』という言葉です。同様にコストは原価企画の段階で作り込むことが重要です。

作業を前倒し(フロント)で負荷をかける(ローディング)という意味合いで、フロントローディングと呼ばれています。

フロント・ローディングと従来との比較イメージ

図1、フロント・ローディングと従来との比較イメージ

 

比較的近代的なシステムと思われがちですが概念そのものは古くからあり、3次元設計の発達とともに実現しやすくなってきました。今では手製造業が企業全体で取り組むシステムの一つです。

 

2. フロントローディングの重要性

グローバル化、顧客の製品機能要求の高度化・多様化、環境制約・資源制約の先鋭化といった傾向が高まっていますが、企業が果たすべき社会的役割に注目が集まり、製品に対する機能要求が高まる一方で、制約条件が厳しくなるのであれば、製品は一層複雑化することにならざるを得ないでしょう。

仕様変更の自由度と品質・コストの確定度

図2、仕様変更の自由度と品質・コストの確定度

 

また、製品に占める制御ソフトウェアの比率が高まっていることも、製品の複雑化を招いています。この傾向は自動車において特に顕著です。このように製品が複雑化していけばいくほど、エンジニアリングチェーンに掛かる負荷はより大きなものとなります。すなわち、製品の複雑化が進めば進むほどに、それに対応できるエンジニアリング能力の高さこそが、製造業の競争力を左右するといます。

 

このような背景で、設計不具合を分析すると、その90%は良く知られた故障メカニズムで発生しており「気づかなかった」不具合がほとんどでした。この「気づかない」というのはヒューマンエラーです。言い換えると、思ってもいなかった一般的な故障メカニズムで発生する事が多く、製品固有の故障メカニズムはDR(デザインレビュー)等で審議され、事前に処置されるので発生確率も少ないのです。源流管理(フロントローディング)で、この思ってもいなかった一般的な故障メカニズムに気づいて処置をしておく事が大切です。良くない設計は消費者に迷惑が及び、大企業といえども倒産するという可能性もあります。

DXの推進を進めている企業は沢山あります。その中で設計業務を主とする会社/事業部においてDXの推進をCAD導入することで満足してはいないでしょうか?本当のDX推進とは、ありとあらゆるものづくりに影響するDXをつなぎ活用しフロントローディング型の設計・開発を実現することです。

 

3.  フロントローディングの方法

フロントローディングに取り組むということは、それだけ設計初期の重要性を認識しているということに他ならないのです。人員を補強するなど、企業のトップがしかるべき策を講じる必要があります。局所的には設計部門の負荷が高まりますが、フロントローディングに取り組むということは、大局的にはコストや時間を削減できるのだという総合的な効果をアピールしていくことが必要です。

フロントローディング実現に向け設計変更の件数や質を定量的に管理しようとしている企業もあります。出図後の設計変更に限らず、出図前に不具合の発見件数を管理し、目標件数に達するまで不具合がないかを探すのです。そのためには過去の設計変更情報を管理しておかなくてはならないでしょう。出図前のそれは担当者の頭のなかだけにしまわれていることが多い情報を、いつ、どんな不具合を洗い出して、それをどう解決したかをできる限り保存しておくことで、次の設計に生かすことです。

 

4.  フロントローディングのメリット

フロントローディングのメリットは、生産技術・製造・品質保証部門などは下流のプロセス段階で発生した問題を処理するのではなく、上流の開発設計部門と協力して後工程で想定される問題を洗い出し(フロントローディング)して、開発工程の「手戻り」を削減できるようになることです。

フロントローディングの場合ならば試作の前にCAD/CAE三次元シミュレーションを行い、設計の段階で問題点を洗い出してムダに試作品を作りません、手戻りのない製造プロセスにする事で時間の短縮やコストカットにつながるメリットも発生します。

 

5.  フロントローディングの注意点

上層部でフロントローディングの導入を検討しても、現場の体制が一丸とならなければせっかくのシステムも効果は現れず逆効果を招く恐れも出てきます。一部の設計者、技術者だけがスキルを培ったとしてもそこで終わってしまっては企業として生き残ることも出来ません。情報や技術を共有して後進育成も視野に入れた支援システムが必要となります。

 

6.まとめ

フロントローディングとは、製造プロセスの初期段階で、設計品質の向上や問題点の早期発見を目的として資源を集中的に投入する開発手法です。
トヨタ自動車によって実践されたこの方法は、「品質は工程で造り込む」から「品質は設計で造り込む」という考え方を重視しています。
製品の複雑化が進む中、設計初期での注意深い対応が製造業の競争力を大きく左右するとされており、設計の段階での不具合発見や品質の確保がより重要となっています。

フロントローディングを取り入れることで、手戻りの削減やコストカット、時間の短縮などの多大なメリットが得られる一方で、現場全体の協力や情報・技術の共有が不可欠である点には注意が必要です。
 
 
 

 

 

 

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


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