ファブレス小売業の品質保証(その12)<資材管理>

品質マネジメント

 

 

特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回で、最終回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その11)へのリンク】

◆管理技術を使って工場を点検する<資材管理>

完成品をコンテナに積み込む出荷作業はバンニング(vanning)でしたが、資材を受け入れて倉庫に入庫する作業はデバンニング(devanning)と言います。デバンニングから受入検査、入庫処理、保管環境について確認していきます。

 

【目次】

①受入環境(デバンニング環境)
②受入検査
③サプライヤーへのフィードバックと評価
④保管環境
⑤保管量
⑥先入先出しの仕組み

 

①受入環境(デバンニング環境)

バンニング同様に、大切な資材が丁寧に取り扱われているか、直射日光や雨などの影響を受けないような環境になっているかを点検します。また、作業時の注意点をわかりやすく掲示したり、担当者の教育が行われているかも確認ポイントになります。

□ 直射日光や雨、ほこりなどの影響を受けにくい工夫がされているか
□ 商品を取り扱う際の注意点はわかりやすく掲示されているか
□ 作業者が商品を大切に扱っているか

 

②受入検査

入荷した原材料や部品は、倉庫へ保管する前に受入検査(IQC:Incoming Quality Control)を行い、良品のみを保管するようにします。重要部品や初回納入時、不具合発生後は全数検査を行うこともありますが、通常は抜き取り検査で品質確認を行います。

受入検査の工程では、検査環境は適切か、検査前品と検査後品の識別管理はできているか、不良品は明確に区分されているか、検査手順、合否判定基準、検査記録などのドキュメントは揃っているかなどが確認ポイントとなります。受入検査は、工場や倉庫の片隅で行われることが多いので、検査環境と5Sの状況には特に注意が必要です。

□ 検査環境は適切か
□ 外観検査、目視検査を行う場合、作業場所の明るさは十分か
□ 検査手順は定められているか
□ 合否の判断基準は明確になっているか
□ 検査は技能や資格を持つ検査員が担当しているか
□ 治具などを活用して、正確かつ効率的な検査が行われているか
□ 検査前品と検査後品は明確に区分されているか
□ 不具合品は明確に区別して置かれ、混入の恐れが無いか
□ 検査記録は残されているか
□ 検査記録は上長の確認が行われているか(確認した記録があるか)

 

③サプライヤーへのフィードバックと評価

受入検査で識別した不具合品は、検査結果と共にサプライヤーへフィードバックすることが重要です。「検査では品質は良くならない」と言いますが、検査で不具合品を取り除くという行為は、工場内への不具合品の流入を防ぐという効果しかありません。本来あるべき「検査」とは、「不具合品を排除すること」+「検査結果を上流にフィードバックし、不具合品の発生を抑制すること」の2つの機能を併せ持つことだと言えます。

また、サプライヤーごとに受入検査の結果を月次で評価している工場もあります。原材料や部品のサプライヤーにも「品質を改善すればメリットがある」というインセンティブを与え、パートナーとして一緒に品質改善を行えるような関係構築を目指したいものです。

□ 受入検査の結果を定期的にサプライヤーにフィードバックしている
□ 不具合品をサプライヤーと確認し、品質レベルの目線合わせを行っている
□ サプライヤーを評価する仕組みがある
□ サプライヤーとパートナーシップを構築し、共に品質改善に取り組んでいる

 

④保管環境

原材料倉庫の確認では、保管環境を確認します。原材料や部品によっては、冷暗所で保管が必要なもの、静電気に弱いもの(電子部品など)、使用期限のあるものなどがありますので、それぞれ適切に管理されているかを確認します。原材料や部品の保管条件に詳しくなくても、倉庫の担当者に「何か特別な保管条件が定められている部品はありますか?」と質問すれば、多くの場合一生懸命に説明してくれるはずです。

説明を受けたら、「そうですか、それは大変ですね。引き続きよろしくお願いします。」とお礼を言えば、担当者はモチベーションが高まり、今後も一生懸命に部品管理を行ってくれることでしょう。部品に関する詳しい知識が無くても倉庫作業に興味をもって適切な質問を行うことで、管理状況を確認しつつ工場の担当者をモチベートすることもできるのです。

□ 原材料・部品毎に定められた条件で保管されているか
□ 特殊な保管条件が求められる部品はあるか
□ 庫内の数か所で定期的に温度・湿度を測定しているか
□ 測定した温度・湿度は記録されているか、定められた条件を超えた記録はないか
□ 一定の湿度になったら換気を行うなどのルールはあるか

 

⑤保管量

原材料や部品についても「過剰在庫のムダ」がないかを点検します。同じ原材料がたくさんあった場合には、「何か月分の在庫があるのですか」「注文してからどれくらいで入ってくるのですか」「いつも同じ値段で買えるのですか」と質問するだけで、著しく過剰な在庫があるかないかはわかります。ただし、相場のあるような原材料や劣化しないもの(化学品など)、発注ロットの大きなものは、大量購入せざるを得ない場合もあります。「過剰在庫を見つけて追及する」というスタンスではなく、「たくさんある原材料を見かけたら、質問して調達状...

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特定分野を長期間に渡って学び・経験された方は多いと思います。しかし、同じ製造業でも業界が異なると、慣習や考え方の基準は変ります。ましてや作り手(製造業)と売り手(小売業)では視点やスタンスが大きく異なってきます。「業務委託先がなかなか思うように動いてくれない」と感じたことはありませんか。 電気製品、家具、アパレル、バッグ、スニーカー、食品など様々な工場で品質改善・業務改善に取り組む中で、その工場が知らない、他業界のちょっとした「コツ」や「ヒント」が問題を一気に解決することがあります。ファブレス小売業の品質保証について、今回で、最終回です。

【この連載の前回:ファブレス小売業の品質保証(その11)へのリンク】

◆管理技術を使って工場を点検する<資材管理>

完成品をコンテナに積み込む出荷作業はバンニング(vanning)でしたが、資材を受け入れて倉庫に入庫する作業はデバンニング(devanning)と言います。デバンニングから受入検査、入庫処理、保管環境について確認していきます。

 

【目次】

①受入環境(デバンニング環境)
②受入検査
③サプライヤーへのフィードバックと評価
④保管環境
⑤保管量
⑥先入先出しの仕組み

 

①受入環境(デバンニング環境)

バンニング同様に、大切な資材が丁寧に取り扱われているか、直射日光や雨などの影響を受けないような環境になっているかを点検します。また、作業時の注意点をわかりやすく掲示したり、担当者の教育が行われているかも確認ポイントになります。

□ 直射日光や雨、ほこりなどの影響を受けにくい工夫がされているか
□ 商品を取り扱う際の注意点はわかりやすく掲示されているか
□ 作業者が商品を大切に扱っているか

 

②受入検査

入荷した原材料や部品は、倉庫へ保管する前に受入検査(IQC:Incoming Quality Control)を行い、良品のみを保管するようにします。重要部品や初回納入時、不具合発生後は全数検査を行うこともありますが、通常は抜き取り検査で品質確認を行います。

受入検査の工程では、検査環境は適切か、検査前品と検査後品の識別管理はできているか、不良品は明確に区分されているか、検査手順、合否判定基準、検査記録などのドキュメントは揃っているかなどが確認ポイントとなります。受入検査は、工場や倉庫の片隅で行われることが多いので、検査環境と5Sの状況には特に注意が必要です。

□ 検査環境は適切か
□ 外観検査、目視検査を行う場合、作業場所の明るさは十分か
□ 検査手順は定められているか
□ 合否の判断基準は明確になっているか
□ 検査は技能や資格を持つ検査員が担当しているか
□ 治具などを活用して、正確かつ効率的な検査が行われているか
□ 検査前品と検査後品は明確に区分されているか
□ 不具合品は明確に区別して置かれ、混入の恐れが無いか
□ 検査記録は残されているか
□ 検査記録は上長の確認が行われているか(確認した記録があるか)

 

③サプライヤーへのフィードバックと評価

受入検査で識別した不具合品は、検査結果と共にサプライヤーへフィードバックすることが重要です。「検査では品質は良くならない」と言いますが、検査で不具合品を取り除くという行為は、工場内への不具合品の流入を防ぐという効果しかありません。本来あるべき「検査」とは、「不具合品を排除すること」+「検査結果を上流にフィードバックし、不具合品の発生を抑制すること」の2つの機能を併せ持つことだと言えます。

また、サプライヤーごとに受入検査の結果を月次で評価している工場もあります。原材料や部品のサプライヤーにも「品質を改善すればメリットがある」というインセンティブを与え、パートナーとして一緒に品質改善を行えるような関係構築を目指したいものです。

□ 受入検査の結果を定期的にサプライヤーにフィードバックしている
□ 不具合品をサプライヤーと確認し、品質レベルの目線合わせを行っている
□ サプライヤーを評価する仕組みがある
□ サプライヤーとパートナーシップを構築し、共に品質改善に取り組んでいる

 

④保管環境

原材料倉庫の確認では、保管環境を確認します。原材料や部品によっては、冷暗所で保管が必要なもの、静電気に弱いもの(電子部品など)、使用期限のあるものなどがありますので、それぞれ適切に管理されているかを確認します。原材料や部品の保管条件に詳しくなくても、倉庫の担当者に「何か特別な保管条件が定められている部品はありますか?」と質問すれば、多くの場合一生懸命に説明してくれるはずです。

説明を受けたら、「そうですか、それは大変ですね。引き続きよろしくお願いします。」とお礼を言えば、担当者はモチベーションが高まり、今後も一生懸命に部品管理を行ってくれることでしょう。部品に関する詳しい知識が無くても倉庫作業に興味をもって適切な質問を行うことで、管理状況を確認しつつ工場の担当者をモチベートすることもできるのです。

□ 原材料・部品毎に定められた条件で保管されているか
□ 特殊な保管条件が求められる部品はあるか
□ 庫内の数か所で定期的に温度・湿度を測定しているか
□ 測定した温度・湿度は記録されているか、定められた条件を超えた記録はないか
□ 一定の湿度になったら換気を行うなどのルールはあるか

 

⑤保管量

原材料や部品についても「過剰在庫のムダ」がないかを点検します。同じ原材料がたくさんあった場合には、「何か月分の在庫があるのですか」「注文してからどれくらいで入ってくるのですか」「いつも同じ値段で買えるのですか」と質問するだけで、著しく過剰な在庫があるかないかはわかります。ただし、相場のあるような原材料や劣化しないもの(化学品など)、発注ロットの大きなものは、大量購入せざるを得ない場合もあります。「過剰在庫を見つけて追及する」というスタンスではなく、「たくさんある原材料を見かけたら、質問して調達状況を教えてもらい、勉強させてもらう」というスタンスで、いろいろ話を伺ってみると良いでしょう。

□ 過剰な在庫がないか
□ 在庫量は購買計画によってコントロールされているか

 

⑥先入先出しの仕組み

完成品と同様に、原材料や部品についても先入れ先出しは重要です。使用期限のある材料だけでなく、長期滞留による劣化、不具合発生時や設計変更時の商品ロットの特定など多くのメリットがあります。

【先入れ先出しのメリット】

  • 使用期限のある原材料は、常に新しいものが在庫となり期限切れロスを防ぐことができる
  • 原材料・部品の長期滞留による劣化や汚破損を防ぐことができる
  • 特定ロットで不具合が発生した場合に、対象となる商品のロットを把握しやすい
  • 設計変更を行う際に、変更後の原材料・部品がどのロットの商品から使われるかが予測しやすい

 

□ (コンビニの飲料ケースや自動販売機のように)原材料・部品を入れる方向と出す方向が異なる
□ 商品を保管する際に、入庫日と入庫場所(エリア番号や棚番号)をシステムに記録し、出庫時は入庫日の古いものから出庫指示を行う仕組みがある
□ 定期的に使用期限を点検し、倉庫内の配置を変えている
□ 作業通路から奥に向かって、商品が何層にも置かれていない

 

 

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この記事の著者

今澤 尚久

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