ホーム > 技法解説 > 品質マネジメント > 日本のものづくり品質を再確認しよう

品質マネジメント」の技法解説記事



日本のものづくり品質を再確認しよう

 最近、日本のものづくり企業の品質問題の多さに危機感を感じています。日本は資源の乏しい国であり、資源を輸入し製品加工して輸出する、加工貿易型の国です。その過程でものづくり技術は高められてきました。加えて国民性とも言うべき勤勉さ、研究熱心などの後押しで高品質体質が確立され、他国との差別化が図られ、日本の国際競争力となって来た所以でもあります。 

 日本の高品質の理由は、以下の2つが考えられます。

①工程で品質を作り込む 
②従業員の品質意識が高い

 これらは、QCサークル活動をはじめとする地道な各種小集団活動にも継承されています。 

 私は、1971年に就職し、腕時計の組立部門に配属されました。女性の熟練技能者が殆どで、男性は僅かでした。ある女性作業者が、組み立て途中の製品に気になることを見つけ、上司に報告したところ、「規格に入っているから良いです」と回答したところ、その作業者が「規格に入っていればいいんですか。私ならこんなもの買いません!」と言い返していました。確かに規格に入っていて、品質問題にはなるものではありませんでしたが、「規格に入っていればいい」と言う上司の機械的な対応に敏感に反応したのです。

 日頃から、「お客様に、真心込めて作り込みしましょう」と教育されており、“工程で品質を作り込む、従業員の質”の一例です。もう44年も前の話ですが、自分が良い仕事をしたいと言う“品質の作り込みへの思い”を感じたあまりにも印象的な出来事であり、いまだに忘れられません。このように、長い時間をかけて日本のものづくり技術は高められてきました。

 その高いはずの品質が、その企業だけでなく、“日本の品質”という信用を失墜するような多くの問題が発生し、危機的な状況だと感じている。また音を立てて崩れるような感じさえします。それは、国内空洞化加速も一因ではないでしょうか。私がこれまで訪問してきた企業では、生産の主体は加速的に海外に移り、設計や意思決定の場までも海外移転してしまうところもあるようです。勿論現地から日本に都度お伺いを立てるよりも、迅速でタイミング良い意思決定が出来、生産ロスが少ないのが利点です。ただ、これらは日本の現場が海外に出続けても、国内に残すべきノウハウであり、最後の砦と考えています。これが一緒に国外出てしまっては、日本の強みとして何が残るのでしょうか。 

 さらに、このように多くの機能が海外に移り、国内には僅かな生産拠点だけしか残らないと、現場を知らない経営層、管理監督者が出てきます。そして固めるべき自分の足元(自社)を見ずに、社外のことや 数字ばかり気にして、国内の現場が浮き足立っていると感じるのです。それは現場の空洞化だけではなく、ものづくりの心や精神までも失ってしまったようであり、“心の空洞化 と言っても良いかもしれません。 

 国内に現場が無いと現場での経験が出来ないまま海外の工場に赴任する人が出て来ます。すると折角ものづくりの拠点に赴任しながら、本当のものづくり現場が見られない、現場に入らない。と言うことが起きます。事務室で一日パソコンを叩いて終わると言う話も聞きます。そこから生産、品質等の情報が得られるので、それで仕事をした気になりますが、それは通信網がしっかりしていれば日本にいても出来ることです。管理者が現場に入らないと“品質、安全等がガタガタになる”と言う認識が薄いのです。ここには“ものづくりの心”が存在しません。 

 最近特に気になるのは、市場に出てしまってから起きる、最終のお客様に迷惑をかける安全、安心が確保されないという問題です。例えば、某社のストーブの回収も何年もかかっています。海外でも人的被害を出してしまった化粧品の問題、車のリコール問題、食品の問題など沢山目につくようになりました。問題が起きても言い訳が先で、対応に誠意や迅速さが感じられない会社もあります。企業としては致命的な問題です。 

 日本のものづくり企業では、良く“QCD”(Q=品質、C=コスト、D=納期)と言うことが言われます。 この3要素はものづくりでは大切で、中でも品質は最も重要ですから、最初に来ます。最近円安効果から、製造ラインの国内回帰と言う企業が出始めました。遠隔操作ではなく、昔のように手の届くところで品質の作り込みが出来ることを期待します。 

 景気が上向きの今が兜の緒を締め直す時です。世界に誇れるものづくり品質を、今一度原点に返って見直しましょう。



品質マネジメント」の関連記事が掲載されたらメールでお知らせ
(会員登録後、マイページで「お気に入り技法」をご登録ください)

専門家「清水 英範」先生に記事内容について直接質問が可能
(専門家プロフィールの「この専門家に問い合わせ」からお問い合わせください)

③他にも数々の特典があります。詳しくは↓のボタンから会員登録ページをご覧ください!

無料会員登録

会員登録は無料です。登録も1分で完了しますので、是非ご登録ください!



(しみず ひでのり) / 専門家B / 

ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

品質マネジメント」の他の技法解説記事
  • 町工場でも、出来る品質管理(その1)

    1.日本のものづくり技術  国産初のジェット旅客機MRJの初飛行の日、その精密部品を作り上げた名古屋のある中小企業。何度も失敗を繰り返しながら、複雑な形状で、寸法精度を要求される部品を見事作り上げたことをテレビで紹介されており、女性社長が初飛…

  • 工場のヒューマンエラー対策<7つのアプローチ> (その1)

     ヒューマンエラーを防止するには、上流の工程設計段階で予防対策を講じておく事が重要であり、その時、『人は本来エラーするもの』という前提に立ち、それをカバーするシステムを設計して運用していく必要があります。    人は本来エラーするものという…

  • 4M変化点(4M変動)管理 4つの重要ポイント

     そもそも、4M変化点(4M変動)管理を行う目的は何でしょうか?重要なキーワードは「日常管理のしくみ」「先手管理」「重点管理」「予測できる変化点」「予測できない変化点」です。尚、別稿で4M変更管理の体系化を解説しましたので、そちらも参考にして下さい…

  • 品質管理の7つの基本

     品質管理の基本として、7つのチェックポイントについて解説します。   1. 多品種少量受注生産工場の品質改善  日本の多くの中小製造業は、「多品種少量、受注加工生産型企業」です。また、ほとんどの企業は、ISO9000に基づいた品質管理体…

Closed Q&A
品質マネジメント」の活用事例
  • 品質保証、品質管理の考察

     品質保証と品質管理の違いは何でしょうか、一つの企業に、品質管理部と品質保証部の両方がありませんか、どちらか一方しか無い会社もあると思いますが、品質管理部は社内の薬品の品質管理や分析装置の管理等を行っていて、品質保証部は製品品質に関する顧客への窓口…

  • 国際生産成功のための基本的要点 (全9回、追補)

    全9回をお読み下さりありがとうございます。 まず、前回最終回のクエスチョンの解答例です。 問題は「海外で活躍できる人材をどのように育てていますか? (  )内に2~8字入れ下さい。」でした。  1.ものづくりの(基本)を理解し、実施できるよう…

  • 全数調査は何の為に必要か

     調査には対象全部(母集団)を調べる全数検査と、標本を採取して調査する抜き取り検査の2種類があります。しかし母集団全部を調査するのはコストや時間の問題で現実的とは言えません。そこで母集団から採取した標本から母集団の姿を推測する推定統計学が発展しまし…

  • 品質管理の原点から考える多品種少量生産の不良削減

     ある一流会社での話です。大量生産ラインでは、不良の発生が非常に低く抑えられている一方で、多品種少量生産ラインでは「ある程度の不良は仕方ない」という空気が蔓延しており、いろいろ対策を打っても一向に良くならない状況でした。そんなある日、物づくり革新実…


月刊ビッグライフ21 BigLife21 私たちは全国420万中小企業の代弁者です。
オープンイノベーション支援サービス | Linkers(リンカーズ)
≫広告掲載をご希望の方はこちら