生産計画変更と現場 見える化(その7)

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【見える化 連載目次】

 

◆ 生産計画をむやみに変えない

1. 生産計画変更で後工程が大混乱

 リーマン・ショック以降の受注状況は、ますます多品種小ロット化して、品質向上と短納期への要求も厳しくなっています。営業は注文を取ってくるだけでも大変な仕事だからといって、製造部門にすぐに作れと生産指示を出します。しかも作りにくい改造品なども多々投入してきます。そのために生産計画を立てていても、飛び込みや計画変更を受ける製造部門や物流、ピッキング、購買などの後工程部門はたまったものではありません。

 受注や生産計画は紙の上での変更であり、机上で簡単に修正はできますが、後工程の製造・物流・ピッキング・購買部門は、情報に加えて物の移動や差し替え・置き換えの作業が発生してきます。その仮置きの場所探しも大変です。そればかりか製造現場では、設備や機械、治工具などの段取り替えも発生します。

 生産計画段階の情報変更は、労力も時間も必要をしませんが、現場では素材・部品、加工中の仕掛品や物を動かすには人だけではなく、フォークリフトやクレーンまでも使うこともあり、すぐに対応できません。特に加工中の変更や切替えは、非常に労力や時間を費やすだけでなく、オペレーターの気分を大いに阻害してしまいます。

 いくらお客様の要求が厳しいからといって、生産計画変更を高圧的に指図されると誰でも気分は良くありません。そのような職場では段々と人間関係も悪化して、製品の品質や納期も確実に影響してくるものです。間接部門も直接部門も人間同士が働いているのですから、お互いがもっと相手のことを考慮したり、配慮したりする思いやりの気持ちを持って働きたいものです。

 

2. 一定期間生産計画を変えない生産

 製造現場では、計画変更があると色々な余分な作業が必要となり、結局製品を加工する時間を費やしてしまっています。しかもその時間は絶対に返ってきません。取り返すのは残業や休日出勤くらいしかできません。これらをやることで原価に経費などが上乗せされて、儲(もう)けがその分少なくなってしまいます。残業したからその分の上乗せ分の請求を発注側に請求できますか?なかなかできませんね。欧州の某企業で、能力以上の受注があった場合に、その増えた分を残業と休日出勤で対応するため、その割り増し分を請求している企業がありますが、これは極めてまれなケースです。逆にこのような企業のようにオンリーワンになりたいものです。

 生産計画以降の後工程の混乱を、できるだけ少なくしていくやり方を紹介しましょう。それは一定期間生産計画を変えないことです。飛び込みで受注が入り、そのために何とかやりくりして、計画変更を行い対応することを柔軟性があると思っている経営者やマネジャーもいるようですが、それは勘違いだと思います。

 まずシフト単位あるいは1日単位で計画を変えないようにしてみます。前のシフトの段階で次のシフトの計画を決めてしまい、何があってもその間はその計画通りに生産着手していくようにします。生産計画が固定されますので、材料や段取り替えの事前準備が非常にやりやすくなってきます。すると加工時間も安定してきますので、段取り替えの時間もいつ頃になるかも分かるようになります。そうすると外段取りも慌てないで済むようになり、ますます安定した生産が可能になってきます。1日単位で計画を変えないというこの期間設定が難しいようであれば、まず半日の4時間単位で試行してみてください。要はいったん決めたらそれを守るということです。計画を安定させて製造部門には生産に集中してもらい、現場の混乱をできるだけ避ける配慮をしていきます。工場が風邪(かぜ)をひいて1日寝ていたと割り切ってしまえばよいのです。一度やってみると分かってきます。

 

 ある単位で計画を変えない生産計画を立案する時には、各関係者も交えて情報の共有化を図ることが重要になります。推薦したいのは、簡単な生産管理板にマグネット板などで生産オーダーの状況を貼り出して、誰でも見えるようにすることです。事前に情報を共有化しているのと、変更後の結果だけを聞かせるのではまったく気分が違ってきます。気分が悪くなると当然やる気も出てきません。逆にやる気になれば、大いに生産性向上に寄与しています。ある工場では、17品種の製品の加工を3台の設備で生産していましたが、このように生産計画を一定化する取り組みで、50%以上の増産ができました。実施内容は生産管理板を設置して、機種振り分けしてルール化しただけです。それほど生産計画の順番をコロコロと変えていたことは、莫大なムダが発生していたのです。

 

3. 製造を安定させ、付加価値のある作業に集中

 工場の中では付加価値を生んでいる唯一の製造現場の安定化を図ることです。製造部門が安定しないことには「加工する・組立てる」という付加価値のある作業に集中できません。そのためにも生産計画の急な変更を後工程に直接影響させないように緩和していくことです。そしてその間に改善すべきことを着手していきます。外部からの変更が直接影響しなくなり、その間に安定した生産をしていくのです。急な計画変更とい...

データ分析

【見える化 連載目次】

 

◆ 生産計画をむやみに変えない

1. 生産計画変更で後工程が大混乱

 リーマン・ショック以降の受注状況は、ますます多品種小ロット化して、品質向上と短納期への要求も厳しくなっています。営業は注文を取ってくるだけでも大変な仕事だからといって、製造部門にすぐに作れと生産指示を出します。しかも作りにくい改造品なども多々投入してきます。そのために生産計画を立てていても、飛び込みや計画変更を受ける製造部門や物流、ピッキング、購買などの後工程部門はたまったものではありません。

 受注や生産計画は紙の上での変更であり、机上で簡単に修正はできますが、後工程の製造・物流・ピッキング・購買部門は、情報に加えて物の移動や差し替え・置き換えの作業が発生してきます。その仮置きの場所探しも大変です。そればかりか製造現場では、設備や機械、治工具などの段取り替えも発生します。

 生産計画段階の情報変更は、労力も時間も必要をしませんが、現場では素材・部品、加工中の仕掛品や物を動かすには人だけではなく、フォークリフトやクレーンまでも使うこともあり、すぐに対応できません。特に加工中の変更や切替えは、非常に労力や時間を費やすだけでなく、オペレーターの気分を大いに阻害してしまいます。

 いくらお客様の要求が厳しいからといって、生産計画変更を高圧的に指図されると誰でも気分は良くありません。そのような職場では段々と人間関係も悪化して、製品の品質や納期も確実に影響してくるものです。間接部門も直接部門も人間同士が働いているのですから、お互いがもっと相手のことを考慮したり、配慮したりする思いやりの気持ちを持って働きたいものです。

 

2. 一定期間生産計画を変えない生産

 製造現場では、計画変更があると色々な余分な作業が必要となり、結局製品を加工する時間を費やしてしまっています。しかもその時間は絶対に返ってきません。取り返すのは残業や休日出勤くらいしかできません。これらをやることで原価に経費などが上乗せされて、儲(もう)けがその分少なくなってしまいます。残業したからその分の上乗せ分の請求を発注側に請求できますか?なかなかできませんね。欧州の某企業で、能力以上の受注があった場合に、その増えた分を残業と休日出勤で対応するため、その割り増し分を請求している企業がありますが、これは極めてまれなケースです。逆にこのような企業のようにオンリーワンになりたいものです。

 生産計画以降の後工程の混乱を、できるだけ少なくしていくやり方を紹介しましょう。それは一定期間生産計画を変えないことです。飛び込みで受注が入り、そのために何とかやりくりして、計画変更を行い対応することを柔軟性があると思っている経営者やマネジャーもいるようですが、それは勘違いだと思います。

 まずシフト単位あるいは1日単位で計画を変えないようにしてみます。前のシフトの段階で次のシフトの計画を決めてしまい、何があってもその間はその計画通りに生産着手していくようにします。生産計画が固定されますので、材料や段取り替えの事前準備が非常にやりやすくなってきます。すると加工時間も安定してきますので、段取り替えの時間もいつ頃になるかも分かるようになります。そうすると外段取りも慌てないで済むようになり、ますます安定した生産が可能になってきます。1日単位で計画を変えないというこの期間設定が難しいようであれば、まず半日の4時間単位で試行してみてください。要はいったん決めたらそれを守るということです。計画を安定させて製造部門には生産に集中してもらい、現場の混乱をできるだけ避ける配慮をしていきます。工場が風邪(かぜ)をひいて1日寝ていたと割り切ってしまえばよいのです。一度やってみると分かってきます。

 

 ある単位で計画を変えない生産計画を立案する時には、各関係者も交えて情報の共有化を図ることが重要になります。推薦したいのは、簡単な生産管理板にマグネット板などで生産オーダーの状況を貼り出して、誰でも見えるようにすることです。事前に情報を共有化しているのと、変更後の結果だけを聞かせるのではまったく気分が違ってきます。気分が悪くなると当然やる気も出てきません。逆にやる気になれば、大いに生産性向上に寄与しています。ある工場では、17品種の製品の加工を3台の設備で生産していましたが、このように生産計画を一定化する取り組みで、50%以上の増産ができました。実施内容は生産管理板を設置して、機種振り分けしてルール化しただけです。それほど生産計画の順番をコロコロと変えていたことは、莫大なムダが発生していたのです。

 

3. 製造を安定させ、付加価値のある作業に集中

 工場の中では付加価値を生んでいる唯一の製造現場の安定化を図ることです。製造部門が安定しないことには「加工する・組立てる」という付加価値のある作業に集中できません。そのためにも生産計画の急な変更を後工程に直接影響させないように緩和していくことです。そしてその間に改善すべきことを着手していきます。外部からの変更が直接影響しなくなり、その間に安定した生産をしていくのです。急な計画変更という外乱がなければ、どんなに楽に仕事ができるかよく分かります。その時に少しでも変化に対応できる仕組みを構築していくのです。

 急な飛び込みがあっても、そのシフトやその日の計画に投入しないようにします。そのために生産管理板で何をどれだけ生産するか明確にして、意思表示をするようにします。そして関係者で毎日合意を得るようします。最初は抵抗がありますが、変更がなくなることで計画したオーダーが確実に完成していくと、営業も文句を言わなくなります。

 これを毎日行っていくと打合せ時間も数分で済むようになります。目に見えると安心できるようになるからです。また戦略的在庫を持つ方法もあります。それは売れ筋の製品の特性をパレート分析します。パレート分析でリピート性のある製品を、いくらかの在庫や仕掛を持って計画変動のクッションにしていきます。できちゃった在庫ではなく、意志を持って持つのですから戦略在庫といえます。リピートの多いものは、完成品在庫で即納対応し、客先の納期に関係なく自社の都合で後補充をしていけばよいのです。安定して生産できるようになれば、少しずつ在庫や仕掛を少なくすることができます。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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