現場改善:発想の転換(その1)毎日やっていることをリセット

現場改善

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善にとどまらず、経営革新まで範囲を広げ、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載致します。今回はその第1回です。

◆ 毎日見ているから見えなくなる

1. 相手の記憶に残る自己紹介

 まずは自己紹介から始めますが、読者の皆さんは自己紹介をどのようにしていますか?名刺を渡しながら「何々会社の誰々と申します。よろしくお願いします」なんてありきたりな紹介をしていませんか。自己紹介の目的は、自分のことを正確に早く確実に知ってもらい、覚えてもらうことです。特徴のない挨拶(あいさつ)や第一印象では、その目的を果たすことは難しいでしょう。

 筆者が某電気会社の技術担当で、全国の営業所からかかってくる電話の応対をしていた頃「松田です」と返事をすると「えっ、松浦さん?松良(まつら)さん?増田さん?松葉さんなどといった聞き直しが何度もあり、その度に「松竹梅の松と田んぼの田で、松田です」と些(いささ)か怒った口調で返事をしていました。電話をしてきた相手もよい気分ではなかったと思います。

 数年経った頃、歌手の松田聖子さんが潮風の如(ごと)く爽やかにデビューされて、一躍全国に有名になりました。ふっと気付きこの名前を使おうと思い早速、電話応対の際に「はい、松田聖子の松田です!」と元気よく返事をすると電話の相手は笑い転げる人が続出しました。これで「松田」の名前は一度で覚えて頂くことができ、しかも会話はクレームの話でもルンルン気分になったほどです。ついでに、下の名前は?と尋ねられると間髪いれずに「橋本龍太郎の龍太郎です」と返事をすると、効果は絶大でした。

 日本には約10万の名字があり、そのうち松田は上位から48番目というかなり一般的な名字にも関わらず、有名人がいなかったのが不思議なくらいでしたので、彼女には感謝しています。単なる自己紹介でも印象に残るようにするためには、しかもノーコストで名前を覚えて頂くコツは、ちょっとしたアイデアやユーモアと勇気だけです。

 いきなり説明するよりも、少し遊び心をもって紹介すれば印象も雰囲気もよくなると思います。人は十人十色ともいわれるほど個性がありますが、考え方やモノの見方も同様に違っているのです。そのことを改善にも多用すべきです。色々な問題点の見方があるので、全く気付かなかった点も多く発見できます。問題解決は事実を発見して仲間と共有化することで、ほぼ8割方は解決できる改善案が出てきます。しかも、その8~9割はローコストもしくはノーコストでできてしまいますから、本当にビックリです。

 著者は名刺交換する時に、両手を添えて表に写真のついた方を向けて相手に差し出しますが、相手が取ろうとする時にサッと数cm引き込みます。相手はハッとします。そして名詞を裏返しして、イラストの描いてある側を見せて渡します。「名刺に裏表がありますが、裏表のない人間です。」というと相手は笑顔になって名刺を裏表して眺められます。そのような出し方をする人はいませんので、とても忘れられない印象を持たれます。また顔写真とイラストの両方を裏表に表している名刺も滅多にありません。

 これもちょっとした工夫です。改善は、このようにお金はあまりかからないものです。

■教訓:毎日やっていることをリセットして、本来の目的は何かと問い直してみましょう。

 

2. 第三者は全く別な発想をする

 そのモノの見方が違うことを分かってもらうために、筆者がデモの時に行なうテストを紹介します。それは、漢字書き取りの3分間テストです。用意するものは、ペンとメモだけです。それでは問題ですが、サンズイの付く漢字を書いてくださいといい「よーいドン」で始めます。

 1分経つと「1分経過」さらに2分経つと「2分経過、後1分ですよ」とけしかけます。3分が近づきますと「あと30秒、あと15秒、あと5秒、ハイ時間です。ペンを置いてください。お疲れ様でした」といって幾つ漢字が書けたか確認してもらいます。こういう時には、面白い現象ですが苦しんだ挙句に新出漢字を作られる人がいますので、3人グループで本当に書いた漢字が正解しているか相互確認をしてもらいます。そして、頭の柔軟性の結果を確認していきます。

 レベル0は漢字の数が0から5、レベル1は6から10、レベル2は11から15、レベル3は16以上です。ほとんどの人はレベル1の平均8個で、レベル3は、20人に1人以下と寂しい結果が出ます。ガックリされるでしょうが、3分間に思い出す漢字はこんなものです。なんとサンズイの付く漢字は、300以上もあります。さらに面白いことに、3人グループ内で共通する漢字はわずか1つかせいぜい3つまでです。

 問題点や改善案の抽出には、逆に同じ職場ではなく、異なった職場から参加してもらうと、考えもしなかった柔軟な発想ができます。このテストの面白いところは、問題の種類に関係ないこと事をテーマにしていることです。木ヘンでも草冠など何でも構いません。名刺やキャッシュカードなど、これらを使って何ができるかという出題でも、3分間で平均8個でありしかも答えはバラバラです。「三人寄れば文殊の知恵」の諺(ことわざ)通りです。早速、社内テストをしてみてください。

 生産現場の改善を生産現場の人たちだけで改善させても、所詮(しょせん)、その考えられる範囲の成果にとどまってしまいがちです。同じ社内の異なった生産現場からの参加や間接部門の人たちにも、必ず現場改善に参加してもらい、クロスファンクションでやってみましょう。

 逆に生産現場だけでなく、普段改善から縁遠い間接部門へも入り込んでいくべきです。間接部門のムダは、生産現場の数倍もあります。筆者は最近、訪問している会社と相談して、その会社の近くの工場や仕入先、協力工場にも積極的に参加してもらい、その第三者の岡目八目的視点や考え方を取り込んで、思いも掛けない成果を引き出すことに成功しています。そ...

現場改善

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善にとどまらず、経営革新まで範囲を広げ、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載致します。今回はその第1回です。

◆ 毎日見ているから見えなくなる

1. 相手の記憶に残る自己紹介

 まずは自己紹介から始めますが、読者の皆さんは自己紹介をどのようにしていますか?名刺を渡しながら「何々会社の誰々と申します。よろしくお願いします」なんてありきたりな紹介をしていませんか。自己紹介の目的は、自分のことを正確に早く確実に知ってもらい、覚えてもらうことです。特徴のない挨拶(あいさつ)や第一印象では、その目的を果たすことは難しいでしょう。

 筆者が某電気会社の技術担当で、全国の営業所からかかってくる電話の応対をしていた頃「松田です」と返事をすると「えっ、松浦さん?松良(まつら)さん?増田さん?松葉さんなどといった聞き直しが何度もあり、その度に「松竹梅の松と田んぼの田で、松田です」と些(いささ)か怒った口調で返事をしていました。電話をしてきた相手もよい気分ではなかったと思います。

 数年経った頃、歌手の松田聖子さんが潮風の如(ごと)く爽やかにデビューされて、一躍全国に有名になりました。ふっと気付きこの名前を使おうと思い早速、電話応対の際に「はい、松田聖子の松田です!」と元気よく返事をすると電話の相手は笑い転げる人が続出しました。これで「松田」の名前は一度で覚えて頂くことができ、しかも会話はクレームの話でもルンルン気分になったほどです。ついでに、下の名前は?と尋ねられると間髪いれずに「橋本龍太郎の龍太郎です」と返事をすると、効果は絶大でした。

 日本には約10万の名字があり、そのうち松田は上位から48番目というかなり一般的な名字にも関わらず、有名人がいなかったのが不思議なくらいでしたので、彼女には感謝しています。単なる自己紹介でも印象に残るようにするためには、しかもノーコストで名前を覚えて頂くコツは、ちょっとしたアイデアやユーモアと勇気だけです。

 いきなり説明するよりも、少し遊び心をもって紹介すれば印象も雰囲気もよくなると思います。人は十人十色ともいわれるほど個性がありますが、考え方やモノの見方も同様に違っているのです。そのことを改善にも多用すべきです。色々な問題点の見方があるので、全く気付かなかった点も多く発見できます。問題解決は事実を発見して仲間と共有化することで、ほぼ8割方は解決できる改善案が出てきます。しかも、その8~9割はローコストもしくはノーコストでできてしまいますから、本当にビックリです。

 著者は名刺交換する時に、両手を添えて表に写真のついた方を向けて相手に差し出しますが、相手が取ろうとする時にサッと数cm引き込みます。相手はハッとします。そして名詞を裏返しして、イラストの描いてある側を見せて渡します。「名刺に裏表がありますが、裏表のない人間です。」というと相手は笑顔になって名刺を裏表して眺められます。そのような出し方をする人はいませんので、とても忘れられない印象を持たれます。また顔写真とイラストの両方を裏表に表している名刺も滅多にありません。

 これもちょっとした工夫です。改善は、このようにお金はあまりかからないものです。

■教訓:毎日やっていることをリセットして、本来の目的は何かと問い直してみましょう。

 

2. 第三者は全く別な発想をする

 そのモノの見方が違うことを分かってもらうために、筆者がデモの時に行なうテストを紹介します。それは、漢字書き取りの3分間テストです。用意するものは、ペンとメモだけです。それでは問題ですが、サンズイの付く漢字を書いてくださいといい「よーいドン」で始めます。

 1分経つと「1分経過」さらに2分経つと「2分経過、後1分ですよ」とけしかけます。3分が近づきますと「あと30秒、あと15秒、あと5秒、ハイ時間です。ペンを置いてください。お疲れ様でした」といって幾つ漢字が書けたか確認してもらいます。こういう時には、面白い現象ですが苦しんだ挙句に新出漢字を作られる人がいますので、3人グループで本当に書いた漢字が正解しているか相互確認をしてもらいます。そして、頭の柔軟性の結果を確認していきます。

 レベル0は漢字の数が0から5、レベル1は6から10、レベル2は11から15、レベル3は16以上です。ほとんどの人はレベル1の平均8個で、レベル3は、20人に1人以下と寂しい結果が出ます。ガックリされるでしょうが、3分間に思い出す漢字はこんなものです。なんとサンズイの付く漢字は、300以上もあります。さらに面白いことに、3人グループ内で共通する漢字はわずか1つかせいぜい3つまでです。

 問題点や改善案の抽出には、逆に同じ職場ではなく、異なった職場から参加してもらうと、考えもしなかった柔軟な発想ができます。このテストの面白いところは、問題の種類に関係ないこと事をテーマにしていることです。木ヘンでも草冠など何でも構いません。名刺やキャッシュカードなど、これらを使って何ができるかという出題でも、3分間で平均8個でありしかも答えはバラバラです。「三人寄れば文殊の知恵」の諺(ことわざ)通りです。早速、社内テストをしてみてください。

 生産現場の改善を生産現場の人たちだけで改善させても、所詮(しょせん)、その考えられる範囲の成果にとどまってしまいがちです。同じ社内の異なった生産現場からの参加や間接部門の人たちにも、必ず現場改善に参加してもらい、クロスファンクションでやってみましょう。

 逆に生産現場だけでなく、普段改善から縁遠い間接部門へも入り込んでいくべきです。間接部門のムダは、生産現場の数倍もあります。筆者は最近、訪問している会社と相談して、その会社の近くの工場や仕入先、協力工場にも積極的に参加してもらい、その第三者の岡目八目的視点や考え方を取り込んで、思いも掛けない成果を引き出すことに成功しています。そこから、次のクライントになる事例も少なくありません。

 

3. いま何時ですか?

 もう一つのテストですが、腕時計を見てください。いま何時何分でしたか?確認できましたら腕時計が見えないように、机の下の方にでも腕を下ろしてください。さて問題ですが、時計の文字盤にあった12時のところの文字はどうなっていたでしょうか?思い出してみてください。

 アラビア数字、ギリシャ数字、丸、長方形、色は?さていかがでしたか?正解を出す人は、わずか1から2割です。ましてや長針・短針・秒針までどのような形や色をしていたか思い出すことのできる人はごく僅(わず)かです(経験値ですが、1万人でたった3人です)。

 毎日人は何気なく40から100回は覗(のぞ)き込んで時間を確認しています。でも必要な情報としては、長針と短針の位置関係だけで文字盤や針などは目に入っても、意識しないから記憶に残らないのです。人間は見たくないものは、見ないようにと、無意識に脳が働いているようです。現場の問題もこれと同じで、見たつもりでも自分の都合の良いところだけ記憶に残して、後はフィルターにかけているのです。逆に意識してみると見えなかったことが見えるようになるのです。

 次回は、現場改善:発想の転換(その2)手法よりも考え方が肝心から解説を続けます。

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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