中小製造業の課題と解決への道筋(その5)形骸化が進むマネジメントシステム

マネジメントシステム

第1章 時代の変化に取り残された「組織とマネジメント」

第5節 形骸化が進むマネジメントシステム

 TQCに代わって1990年代新たに導入が進んだISO9000品質マネジメントシステムは、トップダウンによる品質改善を目的としていますが、その趣旨は充分に理解されず形骸化が進んでいます。

 

1、求められるトップダウンのマネジメント

 日本人はもともと、マニュアルに従って仕事を進めるのではなく、末端の作業者でも自発的に工夫をしながら仕事に取り組んできました。従ってマネジメントシステムを構築し、業務手順を全てマニュアル化することを求めているISO9000はもともと日本人には馴染まないと考えられます。

 戦後のデミング博士の教えの中でも、現場における品質管理は受け入れたものの、それ以外のマネジメントに関する教えは根付きませんでした。ISO9000の仕組みも例外ではなく、PDCAの概念は理解できるものの、実行に移す段階になると、どうしても今まで馴染んできた仕事のやり方から抜け切れず、現場の実態とISO9000の仕組みとが、かけ離れてしまっているのです。

 しかし現在は、このトップダウンのマネジメントシステム導入が日本企業に求められているのです。生産性を高めることが競争力強化において重要であることは間違いありませんが、それとは裏腹に、もともと組織ごとに最適化が図られてきた業務のやり方を変革することには抵抗を感じてしまい、部分最適化から抜け出し、ムダを省いた全体最適化を図る取り組みは一向に進んでいません。

 会社目標を達成していくためには、全社として取組むという意識を持つべきであり、やる気のある一部の人だけが手掛けるだけではできないことなのです。それがマネジメントシステムであり、その一つの実現手段がISO9000に沿ったシステム構築だと考えられます。

 

 一番重要なのは「トップである経営者に、社内を改革する強い意志があるかどうか」という点です。マネジメントシステムを導入して、生産性向上や品質向上に努めていると言いながら、コストだけ、納期厳守だけを重く見ているというのでは、やはり大きな改革は難しいのです。そして問題解決というと、現場での5SとかQCサークル活動をイメージしてしまうのです。

 

2、不明確な目的達成の責務

 それぞれの組織においての目的と役割・責任が明確になっていない場合が多いと思います。

 毎日ほぼ決まったルーチンワークを行っている時代は問題がほとんど生じませんが、今の時代は突発的に生ずる様々な変化、課題に素早く対応するために目的・役割・責任を明確にしなければなりません。

 マネジメントサイクルとは、いつまでに、何を、どのレベルに到達させるのか、現状の姿と目標とする姿とのギャップを埋める活動を行っていくことです。

 活動は、ルーチン業務と関連付けながら「目標設定と達成計画」、「実行」、「結果の評価」、「改善と次の目標設定につなげる」という一連の行動の流れを指します。そのためには次のように各立場、役割ごとに目標達成の責務が明確に定められていなければなりません。

 

  • (1) 組織の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・組織のミッション、到達目標
  • (2) 業務ごとの目標達成の責務・・・・・・・・・・営業課、技術課、製造課、品質管理課など
  • (3) 職位ごとのマネジメントの目標達成の責任・・・社長、部長、課長、係長など
  • (4) 個人の目標達成の責務・・・・・・・・・・・・技術課の課長として、機械保守担...

マネジメントシステム

第1章 時代の変化に取り残された「組織とマネジメント」

第5節 形骸化が進むマネジメントシステム

 TQCに代わって1990年代新たに導入が進んだISO9000品質マネジメントシステムは、トップダウンによる品質改善を目的としていますが、その趣旨は充分に理解されず形骸化が進んでいます。

 

1、求められるトップダウンのマネジメント

 日本人はもともと、マニュアルに従って仕事を進めるのではなく、末端の作業者でも自発的に工夫をしながら仕事に取り組んできました。従ってマネジメントシステムを構築し、業務手順を全てマニュアル化することを求めているISO9000はもともと日本人には馴染まないと考えられます。

 戦後のデミング博士の教えの中でも、現場における品質管理は受け入れたものの、それ以外のマネジメントに関する教えは根付きませんでした。ISO9000の仕組みも例外ではなく、PDCAの概念は理解できるものの、実行に移す段階になると、どうしても今まで馴染んできた仕事のやり方から抜け切れず、現場の実態とISO9000の仕組みとが、かけ離れてしまっているのです。

 しかし現在は、このトップダウンのマネジメントシステム導入が日本企業に求められているのです。生産性を高めることが競争力強化において重要であることは間違いありませんが、それとは裏腹に、もともと組織ごとに最適化が図られてきた業務のやり方を変革することには抵抗を感じてしまい、部分最適化から抜け出し、ムダを省いた全体最適化を図る取り組みは一向に進んでいません。

 会社目標を達成していくためには、全社として取組むという意識を持つべきであり、やる気のある一部の人だけが手掛けるだけではできないことなのです。それがマネジメントシステムであり、その一つの実現手段がISO9000に沿ったシステム構築だと考えられます。

 

 一番重要なのは「トップである経営者に、社内を改革する強い意志があるかどうか」という点です。マネジメントシステムを導入して、生産性向上や品質向上に努めていると言いながら、コストだけ、納期厳守だけを重く見ているというのでは、やはり大きな改革は難しいのです。そして問題解決というと、現場での5SとかQCサークル活動をイメージしてしまうのです。

 

2、不明確な目的達成の責務

 それぞれの組織においての目的と役割・責任が明確になっていない場合が多いと思います。

 毎日ほぼ決まったルーチンワークを行っている時代は問題がほとんど生じませんが、今の時代は突発的に生ずる様々な変化、課題に素早く対応するために目的・役割・責任を明確にしなければなりません。

 マネジメントサイクルとは、いつまでに、何を、どのレベルに到達させるのか、現状の姿と目標とする姿とのギャップを埋める活動を行っていくことです。

 活動は、ルーチン業務と関連付けながら「目標設定と達成計画」、「実行」、「結果の評価」、「改善と次の目標設定につなげる」という一連の行動の流れを指します。そのためには次のように各立場、役割ごとに目標達成の責務が明確に定められていなければなりません。

 

  • (1) 組織の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・組織のミッション、到達目標
  • (2) 業務ごとの目標達成の責務・・・・・・・・・・営業課、技術課、製造課、品質管理課など
  • (3) 職位ごとのマネジメントの目標達成の責任・・・社長、部長、課長、係長など
  • (4) 個人の目標達成の責務・・・・・・・・・・・・技術課の課長として、機械保守担当として、など

 

 一般的に、組織の業務、役割は業務マニュアルなどで規定されています。そして目標設定とマネジメントサイクルを回すには次のしくみの整備が必要になってきますが、形はあれど、中身が伴わないのが実態です。

 

  • (1) 改善活動の組織と運用の仕組み
  • (2) コミュニケーションの仕組み
  • (3) 社員の教育訓練の仕組み

 

 マネジメントサイクルが回らず、しくみが形骸化し機能しない一番の原因は、トップの改革に対する強い意志(リーダーシップ)の欠如と、職場のリーダー、管理層それぞれの立場におけるマネジメント能力の欠如と考えられます。

 

 次回は、第2章 求められる品質管理の発想転換、第1節 製造業を取り巻く環境の大きな変化と中小製造業の戦略から解説を続けます。

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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