生産性向上の必要性 開発生産性向上(その1)

更新日

投稿日

【開発生産性向上 連載目次】

 

1. 開発生産性に関する緒言

 
 企業における生産性向上の必要性が、様々なところで話題になっています。ただ、話の内容が製造に関する生産性、オフィスワークの生産性(「知的生産性」)や、働き方改革という取組みについての説明であることが多く、開発・設計業務の生産性(ここでは、「開発生産性」という言葉で表します。)については、その多様性や関係する要因が多く一括りにして語りにくいという特質のためか、全体像として提示されることはほとんどありませんでした。そうした背景から、この連載では「開発生産性」の背景や取り組むべき内容について、数回に分けて総括的に解説します。今回は、『企業における生産性向上が必要とされる背景』についてです。
 

2. 日本の生産性に関する課題

 
 デービッド・アトキンソンは、「新・所得倍増論」の中で、 長期間に亘って日本のGDPが横ばいになっているのは、人口減少と生産性に次のような課題があるからだと指摘しています。  [1]
 

(1) 労働人口の不足

 
 既にマスコミでも取り上げることが多くなりましたが、日本は少子高齢化の影響で、労働人口が減少しつつあります。ものづくり白書では、数年に亘ってこの課題について触れてきましたが、2018年版では、それがさらに顕在化して影響が出ていること、下記の分野ではそれが顕著になっていることに言及しています。[2] [3]
 
  •  技能人材
  •  中小企業(事業承継を含む)
  •  デジタル人材
 
  技術マネジメント
 

(2) 低い日本の生産性

 
 日本の生産性は、ここ数年緩やかに向上しているものの、向上を続ける諸外国に比較して伸びておらず、結果としてグローバルで見ても非常に低い状態になっています。日本生産性本部の資料を見ますと、OECD加盟諸国の中でも20位(製造業に限っては15位)というのが実態です。近隣に目を移しても、中国の生産性は2010年に日本の24%であったものが2017年には日本の37%まで迫ってきており、また韓国の生産性の向上もとても激しく、日本の優位性はアジアの中でも見えづらくなっています。  [4]
 
  技術マネジメント
 
 特に生産性向上について課題となっているのは、常に生産性が意識されている製造分野以外の業務(サービス業など)、大企業と比較して向上が遅れ気味の中小企業、知的生産業務における生産性の分野で、様々な働き方改革の取り組みや、国の中小企業への支援措置等が活発化し始めています。
 
 GDP=人口×生産性ですので、日本の人口が減少しているにも関わらず、生産性の向上が図られなかったことが顕著な経済発展が見られない原因であるという結論です。この状態が継続して、諸外国との経済力の格差が広がり、文化・政治面まで含めた大きな影響が出てくるものと懸念されており、これが国レベルで生産性向上を鼓舞している背景になります。また、各企業においても、上記課題による「人材不足」や「グローバル市場での競争力低下」といった影響が出てきていますので、それに対応するという意味で生産性向上への意識が高まっているのが現状です。
 
 日本の経済がものづくりに大きく支えられていることを考えると、ものづくり企業の生産性を上げることはとても重要です。その際、製造分野の生産性を向上させることはもちろんですが、次回「開発生産性の向上(その2)」で述べる...

【開発生産性向上 連載目次】

 

1. 開発生産性に関する緒言

 
 企業における生産性向上の必要性が、様々なところで話題になっています。ただ、話の内容が製造に関する生産性、オフィスワークの生産性(「知的生産性」)や、働き方改革という取組みについての説明であることが多く、開発・設計業務の生産性(ここでは、「開発生産性」という言葉で表します。)については、その多様性や関係する要因が多く一括りにして語りにくいという特質のためか、全体像として提示されることはほとんどありませんでした。そうした背景から、この連載では「開発生産性」の背景や取り組むべき内容について、数回に分けて総括的に解説します。今回は、『企業における生産性向上が必要とされる背景』についてです。
 

2. 日本の生産性に関する課題

 
 デービッド・アトキンソンは、「新・所得倍増論」の中で、 長期間に亘って日本のGDPが横ばいになっているのは、人口減少と生産性に次のような課題があるからだと指摘しています。  [1]
 

(1) 労働人口の不足

 
 既にマスコミでも取り上げることが多くなりましたが、日本は少子高齢化の影響で、労働人口が減少しつつあります。ものづくり白書では、数年に亘ってこの課題について触れてきましたが、2018年版では、それがさらに顕在化して影響が出ていること、下記の分野ではそれが顕著になっていることに言及しています。[2] [3]
 
  •  技能人材
  •  中小企業(事業承継を含む)
  •  デジタル人材
 
  技術マネジメント
 

(2) 低い日本の生産性

 
 日本の生産性は、ここ数年緩やかに向上しているものの、向上を続ける諸外国に比較して伸びておらず、結果としてグローバルで見ても非常に低い状態になっています。日本生産性本部の資料を見ますと、OECD加盟諸国の中でも20位(製造業に限っては15位)というのが実態です。近隣に目を移しても、中国の生産性は2010年に日本の24%であったものが2017年には日本の37%まで迫ってきており、また韓国の生産性の向上もとても激しく、日本の優位性はアジアの中でも見えづらくなっています。  [4]
 
  技術マネジメント
 
 特に生産性向上について課題となっているのは、常に生産性が意識されている製造分野以外の業務(サービス業など)、大企業と比較して向上が遅れ気味の中小企業、知的生産業務における生産性の分野で、様々な働き方改革の取り組みや、国の中小企業への支援措置等が活発化し始めています。
 
 GDP=人口×生産性ですので、日本の人口が減少しているにも関わらず、生産性の向上が図られなかったことが顕著な経済発展が見られない原因であるという結論です。この状態が継続して、諸外国との経済力の格差が広がり、文化・政治面まで含めた大きな影響が出てくるものと懸念されており、これが国レベルで生産性向上を鼓舞している背景になります。また、各企業においても、上記課題による「人材不足」や「グローバル市場での競争力低下」といった影響が出てきていますので、それに対応するという意味で生産性向上への意識が高まっているのが現状です。
 
 日本の経済がものづくりに大きく支えられていることを考えると、ものづくり企業の生産性を上げることはとても重要です。その際、製造分野の生産性を向上させることはもちろんですが、次回「開発生産性の向上(その2)」で述べるようにビジネスの質の変化についても同時に満たしていくことが求められ、それが開発生産性向上の取り組みをさらに難しいものにしています。
 
【参考文献】
[1] デービッド・アトキンソン:「新・所得倍増論」, 東洋経済新報社(2016)
[2] 経済産業省、厚生労働省、文部科学省:「2018年版ものづくり白書」 (2018)
[3] 中小企業庁:「第155回 中小企業景況調査 (2019年1-3月期)」(2019)
[4] 公益社団法人 日本生産性本部:「労働生産性の国際比較 2018」(2018)
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

山本 裕之

個々の課題に最適な改善プロセスを適用することで、企画・開発業務の生産性を効果的に向上させるお手伝いをしています。

個々の課題に最適な改善プロセスを適用することで、企画・開発業務の生産性を効果的に向上させるお手伝いをしています。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
設計部門の仕組み構築 【連載記事紹介】おすすめセミナーのご紹介 

     設計部門の仕組み構築の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設...

     設計部門の仕組み構築の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設...


体制について 技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その1)

   2020年、新型コロナウイルスの影響下、このような時期なのですが、中長期の技術戦略を立てたいという会社からの問い合わせを頂いています...

   2020年、新型コロナウイルスの影響下、このような時期なのですが、中長期の技術戦略を立てたいという会社からの問い合わせを頂いています...


短期開発プロセスのしくみづくり(その3)

【短期開発プロセスのしくみづくり 連載目次】 1. リードタイムが長くなる理由 2. 短期開発プロセスのしくみ構築を進めていく方法 3. 短期開...

【短期開発プロセスのしくみづくり 連載目次】 1. リードタイムが長くなる理由 2. 短期開発プロセスのしくみ構築を進めていく方法 3. 短期開...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
イノベーション戦略のキーツールとは

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...

  1. 現代のワークショップ    ワークショップは元々、職人が集まって共同で何かを作るための「工房」「作業場」といった意味の...


イノベーションのための「チーム体制」

 「最後の砦、技術力がアブナイ」では、技術者は自律性、創意工夫、挑戦意欲、変化対応力などを期待されているにもかかわらず、開発現場はそのような技術者に育てる...

 「最後の砦、技術力がアブナイ」では、技術者は自律性、創意工夫、挑戦意欲、変化対応力などを期待されているにもかかわらず、開発現場はそのような技術者に育てる...


‐現場観察のチェックポイント‐  製品・技術開発力強化策の事例(その8)

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...