FMEAとDR(デザインレビュー)の現状課題と対策

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1. FMEAの現状と課題

 このところ年に10回ほどFMEA関連のセミナーを実施するのですが、受講者からよく聞くのは、「FMEAを実施しても何の役にも立たない」「FMEAのプロといわれる先生に習っても、たとえプロの先生にやらせても、効果的なFMEAができない」などです。
 
 このような意見が出る一つ目の原因は、起こりうる故障モード全てに気づけない事です。効果的なFMEAを実施するには、全ての故障モードに気づく知識が必要なのです。知識が無い場合は、全ての故障モードに気づくための道具、いわゆる過去トラ集が不可欠です。例えば樹脂の部品を設計した時に、樹脂の故障モードを全て知る事ができる道具です。
 
 これを補填するために、デザインレビューを実施するわけですが、ほとんどの出席者は思いつきの指摘をするだけで、十分補填できないのが現状ではないでしょうか。
 
 二つ目の原因として、起こりうる全ての故障モード情報や過去トラ(不具合事例)を蓄積している会社は多いものの、それが使いやすく加工されてないために、有効活用している会社がほとんど無いことです。
 
 過去トラ集や、ノウハウは、使ってなんぼです。いくら、蓄積しても、何の役にも立ちません。過去トラ集または、起こりうる全ての故障モード情報を使いやすく加工し直す事が必要なのです。また、設計者と言っても、ベテランもいれば、初心者もいます。それぞれの能力に合わせた見やすい過去トラ集が必要です。この過去トラ情報を使いやすく加工し直す作業を知恵と工夫で実施する事が重要です。また、毎年メインテナンスをしてないので、効果的に使える状態になっていないのが現状のようです。部として毎年強制的に、見直しした過去トラ集を出させるようにしないと、使い物になりません。
 
 過去トラ集または起こりうる全ての故障モード情報を常に加工し直して、使いやすい状態に維持することが重要なのです。
 
 なおFMEAの概要と実施方法に関しては、次の記事も参考にして下さい。『FMEAの概要と実施方法』
 
  FMEA
 

2. DR(デザインレビュー)の現状と課題

 DRに関して良く聞くのは、「活発な議論にならない」「議論が発散する」「一方的な設計説明で終わる」「形式的なDRになっている」「専門家が出席してくれない」などです。
 
 このような意見が出る第1の原因は、DRの審議者が自分の仕事優先で、世のため人のために真剣に労力を使わないということです。要請を受けて出席はするものの、その場しのぎで思い付きの指摘をするだけの人が多いようです。
 
 これを解決するには、議論するテーマに関するチェックリストが必要で、一つ一つ地道にチェクしていくことが重要です。例えば樹脂の部品を設計した時に、樹脂部品の品質を議論する場合、樹脂の故障モードを全て知る事ができるチェックリストで漏れなく、皆でチェックしていく活動です。NASAの宇宙ロケットも、最終確認はチェックリストでチェックしていました。
 
 第2の原因は、1回のDR...

1. FMEAの現状と課題

 このところ年に10回ほどFMEA関連のセミナーを実施するのですが、受講者からよく聞くのは、「FMEAを実施しても何の役にも立たない」「FMEAのプロといわれる先生に習っても、たとえプロの先生にやらせても、効果的なFMEAができない」などです。
 
 このような意見が出る一つ目の原因は、起こりうる故障モード全てに気づけない事です。効果的なFMEAを実施するには、全ての故障モードに気づく知識が必要なのです。知識が無い場合は、全ての故障モードに気づくための道具、いわゆる過去トラ集が不可欠です。例えば樹脂の部品を設計した時に、樹脂の故障モードを全て知る事ができる道具です。
 
 これを補填するために、デザインレビューを実施するわけですが、ほとんどの出席者は思いつきの指摘をするだけで、十分補填できないのが現状ではないでしょうか。
 
 二つ目の原因として、起こりうる全ての故障モード情報や過去トラ(不具合事例)を蓄積している会社は多いものの、それが使いやすく加工されてないために、有効活用している会社がほとんど無いことです。
 
 過去トラ集や、ノウハウは、使ってなんぼです。いくら、蓄積しても、何の役にも立ちません。過去トラ集または、起こりうる全ての故障モード情報を使いやすく加工し直す事が必要なのです。また、設計者と言っても、ベテランもいれば、初心者もいます。それぞれの能力に合わせた見やすい過去トラ集が必要です。この過去トラ情報を使いやすく加工し直す作業を知恵と工夫で実施する事が重要です。また、毎年メインテナンスをしてないので、効果的に使える状態になっていないのが現状のようです。部として毎年強制的に、見直しした過去トラ集を出させるようにしないと、使い物になりません。
 
 過去トラ集または起こりうる全ての故障モード情報を常に加工し直して、使いやすい状態に維持することが重要なのです。
 
 なおFMEAの概要と実施方法に関しては、次の記事も参考にして下さい。『FMEAの概要と実施方法』
 
  FMEA
 

2. DR(デザインレビュー)の現状と課題

 DRに関して良く聞くのは、「活発な議論にならない」「議論が発散する」「一方的な設計説明で終わる」「形式的なDRになっている」「専門家が出席してくれない」などです。
 
 このような意見が出る第1の原因は、DRの審議者が自分の仕事優先で、世のため人のために真剣に労力を使わないということです。要請を受けて出席はするものの、その場しのぎで思い付きの指摘をするだけの人が多いようです。
 
 これを解決するには、議論するテーマに関するチェックリストが必要で、一つ一つ地道にチェクしていくことが重要です。例えば樹脂の部品を設計した時に、樹脂部品の品質を議論する場合、樹脂の故障モードを全て知る事ができるチェックリストで漏れなく、皆でチェックしていく活動です。NASAの宇宙ロケットも、最終確認はチェックリストでチェックしていました。
 
 第2の原因は、1回のDRで性能、信頼性、価格、納期などの全てを議論しようとすることです。それでは意見が四方八方に分散して、すべてが消化不良に終わってしまします。
 
 ある回はコストだけを議論するなど、ポイントを分けて実施しましょう。開催時間を1~2時間にとどめることで、専門家も出やすく、時間切れで終わることを防げます。日を変えて何度も実施すれば良いのです。
 
 第3の原因は、司会者の運営能力で成果が大きく左右されることです。司会者による差異を少しでも小さくするには、上記の点に加えて議論の着眼点などについて司会者注意事項集を作るのも効果があります。 
 
 なおデザインレビュー実施に関しては、次の記事も参考にして下さい。『デザインレビューを実施するには』
 

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この記事の著者

本田 陽広

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