リスクベース設計とは

更新日

投稿日

 今回は、潜在不良流出を防止するリスクベースの設計手法について解説します。設計終了後の評価テストや、製造工程の試験、検査で発見できない不具合が市場で発生することが良くあります。自動車の構造欠陥、食品や化粧品への異物混入など、重大な事故につながる可能性のある不具合は、リコールの対象になります。では、なぜ設計時点、また製造工程でこのような不具合が見過ごされてしまうのでしょうか。
 FMEA
 
 従来は、設計プロセス(デザイン、機能性能、操作性の検討、寸法形状を決める)と信頼性評価として、試作機を作って、いじわるテストを実施したり環境試験を行い、一定の基準を合格すれば安全性も信頼性も合格と判断しました。
 
 しかし、信頼性評価試験を十分に行ったつもりでも、市場でのトラブルは防止できませんでした。(もちろん筆者が過去に設計を行った製品も例外ではありませんでした)従来の設計手法では、このようなトラブルは防止できないということから『リスクベース設計』に注目が集まっています。
 
 リスクとは、発生頻度(故障率)×影響度(故障がもたらす事故や最愛の程度)の式で表されます。発生頻度(故障率)は、部品がある確率で破損する、製造ばらつきが生じるなどによって、不具合が生じる度合いを言います。つまり、完全にばらつきはなくすことができないのですが、できるだけ余裕度をみて設計を行う方法がとられてきました。
 
 それでも、従来、設計時点で考えるのはここまででした。不具合が生じた後の影響(事故や災害)についてはあまり深く考えずに設計していました。また、使用者の誤操作についても、操作ミスとして使用者の責任と考えられてきました。
 
 現在では、故障が起きた後の影響も考えて設計することの必要性が求められるようになっています。つまり、リスクベースの設計を行って、設計時点でリスクを洗い出すこと、そして、万が一故障してもその影響を最小限に食い止める対策をあらかじめ講じておくことが必要になっています。
 
 製造工程においても、製造ばらつきや人的ミスによって、市場でトラブルが発生しないように、リスクベースの工程設計を行う必要があるのです。
 
基本になるのは・・・
 「この部品が壊れたら、顧客にどのような影響が出るだろうか」
 「このボタンを押し間違えたら使用者にどんな危害を与えるだろうか」
 「この製造工程を...
 今回は、潜在不良流出を防止するリスクベースの設計手法について解説します。設計終了後の評価テストや、製造工程の試験、検査で発見できない不具合が市場で発生することが良くあります。自動車の構造欠陥、食品や化粧品への異物混入など、重大な事故につながる可能性のある不具合は、リコールの対象になります。では、なぜ設計時点、また製造工程でこのような不具合が見過ごされてしまうのでしょうか。
 FMEA
 
 従来は、設計プロセス(デザイン、機能性能、操作性の検討、寸法形状を決める)と信頼性評価として、試作機を作って、いじわるテストを実施したり環境試験を行い、一定の基準を合格すれば安全性も信頼性も合格と判断しました。
 
 しかし、信頼性評価試験を十分に行ったつもりでも、市場でのトラブルは防止できませんでした。(もちろん筆者が過去に設計を行った製品も例外ではありませんでした)従来の設計手法では、このようなトラブルは防止できないということから『リスクベース設計』に注目が集まっています。
 
 リスクとは、発生頻度(故障率)×影響度(故障がもたらす事故や最愛の程度)の式で表されます。発生頻度(故障率)は、部品がある確率で破損する、製造ばらつきが生じるなどによって、不具合が生じる度合いを言います。つまり、完全にばらつきはなくすことができないのですが、できるだけ余裕度をみて設計を行う方法がとられてきました。
 
 それでも、従来、設計時点で考えるのはここまででした。不具合が生じた後の影響(事故や災害)についてはあまり深く考えずに設計していました。また、使用者の誤操作についても、操作ミスとして使用者の責任と考えられてきました。
 
 現在では、故障が起きた後の影響も考えて設計することの必要性が求められるようになっています。つまり、リスクベースの設計を行って、設計時点でリスクを洗い出すこと、そして、万が一故障してもその影響を最小限に食い止める対策をあらかじめ講じておくことが必要になっています。
 
 製造工程においても、製造ばらつきや人的ミスによって、市場でトラブルが発生しないように、リスクベースの工程設計を行う必要があるのです。
 
基本になるのは・・・
 「この部品が壊れたら、顧客にどのような影響が出るだろうか」
 「このボタンを押し間違えたら使用者にどんな危害を与えるだろうか」
 「この製造工程を飛ばしてしまったら、事故につながらないだろうか」
              というように、リスクベースの考え方を徹底しなければならないのです。
 
 何も難しい理論や手法を取り入れる必要はありません。まずこの基本に立って、設計の仕組み、製造工程設計の仕組み、教育のしくみを見直したときに、不備や欠陥が必ず見つかると思います。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
新規事業×しんどいを乗り越える鉄則:開発担当者、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その101)

【この連載の前回、技術開発者の離職理由から考える本質的な解決策、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その100)へのリンク】 【目次】 ...

【この連載の前回、技術開発者の離職理由から考える本質的な解決策、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その100)へのリンク】 【目次】 ...


ミスは設計で防げるか?〜ヒューマンエラーと機械設計の交差点〜

   【目次】 製造現場や製品使用の場面で発生する事故や不具合。その原因をたどっていくと、多くは「人のミス」、...

   【目次】 製造現場や製品使用の場面で発生する事故や不具合。その原因をたどっていくと、多くは「人のミス」、...


普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その185) 図書館を活用する

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら!...

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら!...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
スーパーマンではなくプロフェッショナルな技術者に(その1)

【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...

【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...


先行技術テーマを企画段階で評価するには

1.先行技術開発    イノベーション、すなわち価値創造がものづくり企業におけるR&Dのミッションとして期待される中で、それを実現す...

1.先行技術開発    イノベーション、すなわち価値創造がものづくり企業におけるR&Dのミッションとして期待される中で、それを実現す...


技術人材が目指す第3のキャリアとは

1.R&Dの現場に存在する2つのラダー    私は、イノベーションを「価値の創造と具現化」として定義していますが、もう少し突っ込んで...

1.R&Dの現場に存在する2つのラダー    私は、イノベーションを「価値の創造と具現化」として定義していますが、もう少し突っ込んで...