パテント・ポートフォリオの構築方法(その1)

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【パテント・ポートフォリオの構築方法、連載目次】

 知的財産マネジメントパテント・ポートフォリオとは「事業目的に対して最適化された」特許群のことを言います。これを構築するためには、事業活動の展開に合わせてその構築を進めることと、自社と他社の特許情報の収集・解析をベースに構築を進めることが重要です。
 
 この場合、特許情報解析のキーとなるのは、技術用語が統一された「戦略データ・ベース」の構築です。その構築には、技術者・特許担当者・特許情報担当者の知恵を結集して行わなければなりません。「戦略データ・ベース」に基づく特許情報解析は、技術者・特許担当者・特許情報担当者が三位一体となって特許情報解析の戦略を立案します。この特許情報解析は、その後、戦略を推進する時に、不可欠の情報を提供します。又、「事業目的に対して最適化された」パテント・ポートフォリオを構築するための必須のツールを提供します。パテント・ポートフォリオの構築、及び管理のために、パテント・ポートフォリオ・シートを作成し、見える化を図ることも重要です。
 

1.「知的財産報告書」の実態

 
 戦略的な知的財産管理を進める上でパテント・ポートフォリオの構築がキーであることは広く認識されるようになりました。
 
 「知的財産情報開示指針」1)では、開示が望ましい項目として、「知的財産ポートフォリオに対する方針」を掲げていますが、この指針に呼応して「知的財産報告書」を発表している多くの企業が、その中で知的財産ポートフォリオに関する取り組みの状況を開示しています。しかし、パテント・ポートフォリオの構築を進めている日本の企業が具体的にどのようにしてパテント・ポートフォリオを構築しているのか、また、構築されたパテント・ポートフォリオをどのような形で表現し、管理しているのか、その実態については「知的財産報告書」を含め、ほとんど開示されていません。この点に関して、この連載で解説します。
 

2.パテント・ポートフォリオ構築の要件

 
 パテント・ポートフォリオとは何かと言うと、この言葉を使用する企業、人によって定義がかなり異なるようです。これに対し「知財戦略事例集」2)では、「複数の特許を何らかの観点に基づいて集合体と認識して管理することを『群管理』と表現し、この管理された群が、群として管理される何らかの目的に対して最適化された状態を特許ポートフォリオと表現する」と定義しています。この連載では、「群として管理される何らかの目的」を「事業目的」と置き換える以外は、この定義をそのまま利用することとします。
 
 それでは、自社の特許群を「事業目的に対して最適化された」パテント・ポートフォリオにするためには何が必要か、その要件として次の二つを掲げます。
 

(1) 事業活動の展開に合わせて構築を進めること

 
 事業戦略の立案・推進から事業実施に至る過程では、事業戦略の見直しが常に行われます。知的財産の創造、保護、活用はこれと緊密に連動して進められなければなりません。パテント・ポートフォリオはこの過程で常に見直され、最適化されていくことが必要です。
 

(2) 特許情報の収集・解析をベースに構築を進めること

 
 特許情報調査を網羅的...

【パテント・ポートフォリオの構築方法、連載目次】

 知的財産マネジメントパテント・ポートフォリオとは「事業目的に対して最適化された」特許群のことを言います。これを構築するためには、事業活動の展開に合わせてその構築を進めることと、自社と他社の特許情報の収集・解析をベースに構築を進めることが重要です。
 
 この場合、特許情報解析のキーとなるのは、技術用語が統一された「戦略データ・ベース」の構築です。その構築には、技術者・特許担当者・特許情報担当者の知恵を結集して行わなければなりません。「戦略データ・ベース」に基づく特許情報解析は、技術者・特許担当者・特許情報担当者が三位一体となって特許情報解析の戦略を立案します。この特許情報解析は、その後、戦略を推進する時に、不可欠の情報を提供します。又、「事業目的に対して最適化された」パテント・ポートフォリオを構築するための必須のツールを提供します。パテント・ポートフォリオの構築、及び管理のために、パテント・ポートフォリオ・シートを作成し、見える化を図ることも重要です。
 

1.「知的財産報告書」の実態

 
 戦略的な知的財産管理を進める上でパテント・ポートフォリオの構築がキーであることは広く認識されるようになりました。
 
 「知的財産情報開示指針」1)では、開示が望ましい項目として、「知的財産ポートフォリオに対する方針」を掲げていますが、この指針に呼応して「知的財産報告書」を発表している多くの企業が、その中で知的財産ポートフォリオに関する取り組みの状況を開示しています。しかし、パテント・ポートフォリオの構築を進めている日本の企業が具体的にどのようにしてパテント・ポートフォリオを構築しているのか、また、構築されたパテント・ポートフォリオをどのような形で表現し、管理しているのか、その実態については「知的財産報告書」を含め、ほとんど開示されていません。この点に関して、この連載で解説します。
 

2.パテント・ポートフォリオ構築の要件

 
 パテント・ポートフォリオとは何かと言うと、この言葉を使用する企業、人によって定義がかなり異なるようです。これに対し「知財戦略事例集」2)では、「複数の特許を何らかの観点に基づいて集合体と認識して管理することを『群管理』と表現し、この管理された群が、群として管理される何らかの目的に対して最適化された状態を特許ポートフォリオと表現する」と定義しています。この連載では、「群として管理される何らかの目的」を「事業目的」と置き換える以外は、この定義をそのまま利用することとします。
 
 それでは、自社の特許群を「事業目的に対して最適化された」パテント・ポートフォリオにするためには何が必要か、その要件として次の二つを掲げます。
 

(1) 事業活動の展開に合わせて構築を進めること

 
 事業戦略の立案・推進から事業実施に至る過程では、事業戦略の見直しが常に行われます。知的財産の創造、保護、活用はこれと緊密に連動して進められなければなりません。パテント・ポートフォリオはこの過程で常に見直され、最適化されていくことが必要です。
 

(2) 特許情報の収集・解析をベースに構築を進めること

 
 特許情報調査を網羅的、継続的に実施することによって、自社の特許群が他社の特許群とどのような関係にあるのか、自社の特許群は権利として十分に強いのか、自社の特許群は自社事業を確実にカバーしているのか、を厳密に検証しながら、パテント・ポートフォリオの構築を進めていくことが必要です。
 
 次回のその2では、上記の二つの要件をどのように満たしていくべきかについて検討を行っていきます。
 
引用文献・参考文献
1)「知的財産情報開示指針」2004年1月、経済産業省
2)「戦略的な知的財産管理に向けて-技術経営力を高めるために-」[知財戦略事例集]2007年4月、経
   済産業省、特許庁
 
   

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この記事の著者

鶴見 隆

三位一体の特許情報活動のパイオニア、戦略的データベースの構築を通じて企業の知財力アップを支援します!

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