人的資源マネジメント:幸せは何からできている(その2)

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 今回は、充実感、満足感、幸福感を実感できるよりよい日常を過ごすためのポジティブ心理学を、その理論やデータとともに紹介したいと思います。前回のその1に続いて解説します。
 

【ポジティブ感情(Positive Emotions)】

 
 楽しみ、歓喜、快感、ぬくもり、心地よさなど自分が感じるプラスの感情です。人生の満足度を含む主観的ウェルビーイングはこの要素に含まれます。ポジティブ感情を重視する人は「快の人生」を過ごしたい人ということができます。
 

【エンゲージメント(Engagement)】

 
 音楽や芸術などとの一体感や、没頭して時が経つのを忘れてしまう状態のことです。この状態を「フロー状態」とよび、その最中には思考や感情は存在せず、振り返ったときに「あれはすばらしかった/楽しかった」と感じます。エンゲージメントを重視する人は「充実した人生」を送りたい人ということができます。
 

【関係性(Relationships)】

 
 他者とのポジティブな人間関係のことです。関係性を重視する人は、人生における素晴らしい出来事はすべて、他者がいることで起きると考え、他者を頼れる存在として人生を送る人です。
 

【意味・意義(Meaning)】

 
 使命など自分よりも大きな存在を信じたり、人生に意味や意義を求めることです。意味や意義を重視する人は「有意義な人生」を送りたい人ということができます。
 

【達成(Accomplishments)】

 
 一時的な「達成」や、達成のために達成を求めることです。達成を重視する人は、自分がやっていることに没頭し、夢中になって快を求め、勝負に勝つことでポジティブ感情を得るような人生を送る人です。勝利を得ることを人生における使命のように考えることもあります。
 

4. ウェルビーイング尺度

 
 ウェルビーイングの構成要素 PERMA はそれぞれ独立して計測できるものになっています。以下(図196)のウェルビーイング尺度を使うと自分が PERMA のどの要素を重視しているのか、もしくは、今の自分にとって幸せに強く関係する要素が何かを知ることができます。
 
人的資源マネジメント:図196 ウェルビーイング尺度
 
 図197は私の計測結果です。この計測結果では、ポジティブ感情と達成が 7.5 以上の高い点数で、関係性と意味・意義が相対的に低い結果となっています。普段の行動や考え方を振り返ってみると、できるだけ気分良く取り組むことを意識していて、そのために好き嫌いを優先しがちになり、やることの意義や高い志にもとづいた判断が少ないように思います。目標をクリアすることやゲームの勝ち負けにはこだわりがちで、集中、没頭することも多いところ、内向性なところなども、計測結果にあらわれているように思います。
 
 人的資源マネジメント:図197 ウェルビーイング計測結果
 
 このようにウェルビーイングの傾向を計測することで、普段から点数の高い要素に結びつくような行動や考え方をしていることが多いことや、反対に、点数が低い要素についてはあまり重きを置いていないことに気づくのではないかと思います。幸福感を得ることができるように考え、行動している傾向が強いと言えるでしょう。
 
 さらに、人とウェルビーイングの計測結果を比較すると、同じような出来事や状況に対するとらえ方や行動に違いが生まれるのがよくわかるはずです。低い要素があって高くしたいとき、その要素が高い点数となっている人の考え方や行動は参考になると思いますし、相手のウェルビーイングの傾向を知ることはよりよいコミュニケーションにつながります。
 

5. 持続する幸福(Flourish)

 
 人によって幸福の感じ方やとらえ方は違いますが、PERMA というメトリクス(尺度)を使うことで、総合的、かつ、シンプルに幸福(ウェルビーイング)の傾向、志向性を知ることができることがわかったと思います。
 
 人によってウェルビーイングの志向性は様々ですが、PERMA のひとつだけが高いよりも全体的に高い方がより幸福な人生を送ることにつながります。たとえば、エンゲージメントだけが高い場合、熱中できる対象や没頭できる環境があれば幸福を感じることができますが、そういう対象や環境が手に入らないこともあります。そんなときは幸福を感じることができなくなってしまいます。生きている間にはいろいろな出来事があり、様々な状況下に身を置くことがあるわけですが、より多くの要素を高くすることができれば、より多くの状況下で幸せを感じることができます。
 
 持続する幸福(Flourish)を手に入れるためには、ウェルビーイングの5つの要素をバランス良く高めることが大切だということを忘れないでください。そして、そのためには自分の強みの徳性を把握し、各要素を高めることに活用することを意識する必要があります。自分の強みの徳性を知って、自分に合わせた取り組みをすることが効果的だからです。強みの徳性や、PERMA のそれぞれの要素についての詳細は、第3回以降でひとつずつ紹介したいと思います。
 
 このように、自分のウェルビーイングの傾向を知ることで、よりよい日常や人...
 今回は、充実感、満足感、幸福感を実感できるよりよい日常を過ごすためのポジティブ心理学を、その理論やデータとともに紹介したいと思います。前回のその1に続いて解説します。
 

【ポジティブ感情(Positive Emotions)】

 
 楽しみ、歓喜、快感、ぬくもり、心地よさなど自分が感じるプラスの感情です。人生の満足度を含む主観的ウェルビーイングはこの要素に含まれます。ポジティブ感情を重視する人は「快の人生」を過ごしたい人ということができます。
 

【エンゲージメント(Engagement)】

 
 音楽や芸術などとの一体感や、没頭して時が経つのを忘れてしまう状態のことです。この状態を「フロー状態」とよび、その最中には思考や感情は存在せず、振り返ったときに「あれはすばらしかった/楽しかった」と感じます。エンゲージメントを重視する人は「充実した人生」を送りたい人ということができます。
 

【関係性(Relationships)】

 
 他者とのポジティブな人間関係のことです。関係性を重視する人は、人生における素晴らしい出来事はすべて、他者がいることで起きると考え、他者を頼れる存在として人生を送る人です。
 

【意味・意義(Meaning)】

 
 使命など自分よりも大きな存在を信じたり、人生に意味や意義を求めることです。意味や意義を重視する人は「有意義な人生」を送りたい人ということができます。
 

【達成(Accomplishments)】

 
 一時的な「達成」や、達成のために達成を求めることです。達成を重視する人は、自分がやっていることに没頭し、夢中になって快を求め、勝負に勝つことでポジティブ感情を得るような人生を送る人です。勝利を得ることを人生における使命のように考えることもあります。
 

4. ウェルビーイング尺度

 
 ウェルビーイングの構成要素 PERMA はそれぞれ独立して計測できるものになっています。以下(図196)のウェルビーイング尺度を使うと自分が PERMA のどの要素を重視しているのか、もしくは、今の自分にとって幸せに強く関係する要素が何かを知ることができます。
 
人的資源マネジメント:図196 ウェルビーイング尺度
 
 図197は私の計測結果です。この計測結果では、ポジティブ感情と達成が 7.5 以上の高い点数で、関係性と意味・意義が相対的に低い結果となっています。普段の行動や考え方を振り返ってみると、できるだけ気分良く取り組むことを意識していて、そのために好き嫌いを優先しがちになり、やることの意義や高い志にもとづいた判断が少ないように思います。目標をクリアすることやゲームの勝ち負けにはこだわりがちで、集中、没頭することも多いところ、内向性なところなども、計測結果にあらわれているように思います。
 
 人的資源マネジメント:図197 ウェルビーイング計測結果
 
 このようにウェルビーイングの傾向を計測することで、普段から点数の高い要素に結びつくような行動や考え方をしていることが多いことや、反対に、点数が低い要素についてはあまり重きを置いていないことに気づくのではないかと思います。幸福感を得ることができるように考え、行動している傾向が強いと言えるでしょう。
 
 さらに、人とウェルビーイングの計測結果を比較すると、同じような出来事や状況に対するとらえ方や行動に違いが生まれるのがよくわかるはずです。低い要素があって高くしたいとき、その要素が高い点数となっている人の考え方や行動は参考になると思いますし、相手のウェルビーイングの傾向を知ることはよりよいコミュニケーションにつながります。
 

5. 持続する幸福(Flourish)

 
 人によって幸福の感じ方やとらえ方は違いますが、PERMA というメトリクス(尺度)を使うことで、総合的、かつ、シンプルに幸福(ウェルビーイング)の傾向、志向性を知ることができることがわかったと思います。
 
 人によってウェルビーイングの志向性は様々ですが、PERMA のひとつだけが高いよりも全体的に高い方がより幸福な人生を送ることにつながります。たとえば、エンゲージメントだけが高い場合、熱中できる対象や没頭できる環境があれば幸福を感じることができますが、そういう対象や環境が手に入らないこともあります。そんなときは幸福を感じることができなくなってしまいます。生きている間にはいろいろな出来事があり、様々な状況下に身を置くことがあるわけですが、より多くの要素を高くすることができれば、より多くの状況下で幸せを感じることができます。
 
 持続する幸福(Flourish)を手に入れるためには、ウェルビーイングの5つの要素をバランス良く高めることが大切だということを忘れないでください。そして、そのためには自分の強みの徳性を把握し、各要素を高めることに活用することを意識する必要があります。自分の強みの徳性を知って、自分に合わせた取り組みをすることが効果的だからです。強みの徳性や、PERMA のそれぞれの要素についての詳細は、第3回以降でひとつずつ紹介したいと思います。
 
 このように、自分のウェルビーイングの傾向を知ることで、よりよい日常や人生を続けるにはどのような取り組みをすればいいのかが考えやすくなるはずです。
 
 今回は、幸福理論に変わる新しいポジティブ心理学の理論であるウェルビーイング理論を紹介しました。ウェルビーイングとは、ポジティブ感情、エンゲージメント、意味・意義、良好な関係性、達成という5つの構成要素(PERMA)の組み合わせであり、これら5つの要素すべての最大化を目指すことが持続する幸福(Flourish)につながることをお伝えしました。
 
 そして、PERMA を計測することで、人によって違う幸福の形を可視化でき、一人ひとりがどうすればより幸福になれるのか、よりよい日常や人生を続けるにはどのような取り組みをすればいいのかを総合的に考えることができることをお伝えしました。実際に5つの要素それぞれを高めるためには自分の強みの徳性を活かすことが大切です。その強みの徳性については次回解説したいと思います。
  

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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