人的資源マネジメント:脳を活性化する技術(その2)

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2. フローアライブ

 
 フローアライブとは、五感を最大限に使ってある特定の状況をありありと再現する技術です。時間と空間を越えてトリップすることです。このように書くと、ちょっとアブナイ感じになってしまいますね。先ほどのドメインモデリングではその対象になりきることです。そのイメージは人それぞれなのですが、一例としてどんな感じになるのか紹介しましょう。
 
 この部屋は新しく開発する腕時計型の歩数計。周りを見渡すと、アンテナ、加速度センサー、GPS、温度センサー、湿度センサー、脈拍センサー、電池、表示パネルなど、何人もの人がいる。私は、その中のひとりWi-Fi だ。
 
 Wi-Fi の電波を探しているのだけど、使えそうな電波は見えないし聞こえない。加速度センサーに聞いてみると時速5km で移動しているらしいので、電池に続けても大丈夫かを確認してもう少し電波を探してみる。
 
 今、使えそうな電波が見つかったのでデータ通信を開始した。体力の消耗(消費電力)が激しくなる。でも、データ通信に問題はない。突然、電池からスリープしろという指示がきた。でも、今は通信中なのでスリープするわけにはいかない。データ通信は続けると返答した。
 
 モニターしていたデータ通信速度が落ちてきた。アンテナに確認すると電波強度が落ちてきていることがわかった。通信を中断することをMPUに知らせ、他のWi-Fi電波を探してみるが使える電波がない。さっきのスリープ指示は解除されていないので、このままスリープすることを電池に知らせた。
 
 これはスリープ要求があったという1シーンですが、こんな感じで、徹底的に臨場感を出して、何が起きるのか、どういう行動が必要になるのかを自分の言動として具体化します。このとき、実際に部屋を動き回ったり、顔の向きを変えて指示したり、あるいは、指示を聞いたりするのです。こうやって臨場感を出すことが脳の働きを活性化させ、机について考えているだけでは気づかなかったことや、想定していなかったシチュエーションを気づかせてくれるのです。バカバカしいと思うかもしれませんが、創造性や想像力を強化するのには脳の働きを活性化することが大切なのです。
 
 脳の働きを活性化させるというのは「意識」レベルを上げることを意味します。意識とは、脳の働きが活発化し、五感に対する刺激を感じ取ることが可能な状態のことです。詳しい解説は別の機会にしたいと思いますが、五感すべてが鋭敏になっているときが最も意識レベルが高い状態であり、脳ももっとも活性化している状態なのです。 
 
意識レベルの説明図42.意識レベル
 
 図 42は意識レベルを分類したものです。もっとも意識レベルが低いのは眠っているときですが、その上のレベルは「自己集中レベル」です。これは自分だけの世界で思考している状態で、机についてひとり設計しているときもそうですし、人の話を聞いていても上の空だったり、人の表情や態度を気にすることなく話をしているときなどもこのレベルです。
 
 その上のレベルは「刺激受容レベル」で、外部の存在を認識できていて外部とのやりとりができている状態です。同僚などに質問されたり、話をしていたりすると、思いもよらないヒントがあったり、考えていなかったことに気づいたりすることがありますが、そんな自分の狭い思考から一歩外に出た思考ができる状態です。
 
 さらに上のレベルが「五感レベル」です。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感をできるだけたくさん、かつ、できるだけ深く働かせることができて...
 

2. フローアライブ

 
 フローアライブとは、五感を最大限に使ってある特定の状況をありありと再現する技術です。時間と空間を越えてトリップすることです。このように書くと、ちょっとアブナイ感じになってしまいますね。先ほどのドメインモデリングではその対象になりきることです。そのイメージは人それぞれなのですが、一例としてどんな感じになるのか紹介しましょう。
 
 この部屋は新しく開発する腕時計型の歩数計。周りを見渡すと、アンテナ、加速度センサー、GPS、温度センサー、湿度センサー、脈拍センサー、電池、表示パネルなど、何人もの人がいる。私は、その中のひとりWi-Fi だ。
 
 Wi-Fi の電波を探しているのだけど、使えそうな電波は見えないし聞こえない。加速度センサーに聞いてみると時速5km で移動しているらしいので、電池に続けても大丈夫かを確認してもう少し電波を探してみる。
 
 今、使えそうな電波が見つかったのでデータ通信を開始した。体力の消耗(消費電力)が激しくなる。でも、データ通信に問題はない。突然、電池からスリープしろという指示がきた。でも、今は通信中なのでスリープするわけにはいかない。データ通信は続けると返答した。
 
 モニターしていたデータ通信速度が落ちてきた。アンテナに確認すると電波強度が落ちてきていることがわかった。通信を中断することをMPUに知らせ、他のWi-Fi電波を探してみるが使える電波がない。さっきのスリープ指示は解除されていないので、このままスリープすることを電池に知らせた。
 
 これはスリープ要求があったという1シーンですが、こんな感じで、徹底的に臨場感を出して、何が起きるのか、どういう行動が必要になるのかを自分の言動として具体化します。このとき、実際に部屋を動き回ったり、顔の向きを変えて指示したり、あるいは、指示を聞いたりするのです。こうやって臨場感を出すことが脳の働きを活性化させ、机について考えているだけでは気づかなかったことや、想定していなかったシチュエーションを気づかせてくれるのです。バカバカしいと思うかもしれませんが、創造性や想像力を強化するのには脳の働きを活性化することが大切なのです。
 
 脳の働きを活性化させるというのは「意識」レベルを上げることを意味します。意識とは、脳の働きが活発化し、五感に対する刺激を感じ取ることが可能な状態のことです。詳しい解説は別の機会にしたいと思いますが、五感すべてが鋭敏になっているときが最も意識レベルが高い状態であり、脳ももっとも活性化している状態なのです。 
 
意識レベルの説明図42.意識レベル
 
 図 42は意識レベルを分類したものです。もっとも意識レベルが低いのは眠っているときですが、その上のレベルは「自己集中レベル」です。これは自分だけの世界で思考している状態で、机についてひとり設計しているときもそうですし、人の話を聞いていても上の空だったり、人の表情や態度を気にすることなく話をしているときなどもこのレベルです。
 
 その上のレベルは「刺激受容レベル」で、外部の存在を認識できていて外部とのやりとりができている状態です。同僚などに質問されたり、話をしていたりすると、思いもよらないヒントがあったり、考えていなかったことに気づいたりすることがありますが、そんな自分の狭い思考から一歩外に出た思考ができる状態です。
 
 さらに上のレベルが「五感レベル」です。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感をできるだけたくさん、かつ、できるだけ深く働かせることができている状態です。軽く運動をしたときや、お風呂に入ってゆったりしたときや、テンションが高かったりするときに、驚くような発見や気づきがあることがありますよね。脳を活性化させるには、五感すべてを総動員することです。
 
 そして、もっとも高い意識レベルが「フローレベル」です。完全にその場面に入ってしまっている状態で、外部のことは認知できていながらも完全に独自の世界に入ることができます。フロー状態については、「フロー状態が最高のパフォーマンスをもたらす」でも解説しています。
 
 次回は、スイッチを入れるための優位感覚を解説します。
 
  

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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