物流費値上げは最高の改善チャンス(その3)

投稿日

SCM

 

◆倉庫内作業の値上げ対応

どの会社でも同様ですが、組織間で人の流動性が低いと柔軟度が低くなります。すべての工程で不足していれば別ですが、余裕のある部門からそうでない部門へ人を動かすことは必要なことです。ですから皆さんの会社でもこのような人の融通ができるように「技能向上」を進め、多能工化を図っていただきたいと思います。

 

多くの会社では輸送事業で倉庫事業についても取り組んでいますが、倉庫内作業でも人材不足の影響を受けています。しかし輸送事業と倉庫事業間には壁があり、お互い人の融通は行っていないようです。最近物流事業に進出し、急に株価が上昇した会社がありますが、この会社は人の行き来を行っています。それによって人材不足を緩和しているとのことです。

【関連連載記事】・物流改善ネタ出し講座

【関連連載記事】・儲ける輸送改善とは

【関連連載記事】・物流人財育成

 

さて倉庫内作業をアウトソースし、その会社から値上げ要請が来たとします。その時にどのような対応をしていったらよいでしょうか。

 

あくまでも「その会社のマネジメント」ですから人不足について皆さんと考え方は異なるかもしれません。しかしユーザーとしてここはその作業をじっくりと観察する必要がありそうです。いつも申し上げていることですが、倉庫作業では往々にして作業ペースを個々の作業者任せにしています。

 

指示の出し方が「今日中にこれをやって」というラフなやりからが多いことも事実です。そうなると人間ですから楽な方向に流れがちなのです。例を挙げると「仕事の量に関わらず」作業者は「同じ時間で」仕事を実施します。ある日は仕事が多かったので8時間かけてこなしたとします。別の日は仮に仕事量が半減したとします。その日も作業者はその半減した仕事を8時間かけて実施します。

 

つまり仕事に対する人の配置が固定になっているのです。空いた時間を他の仕事を行うのではなく、スピードを落として実施するのです。

 

あと個々の作業の時間も製造業の4倍程度のゆったりとしたスピードになっています。これは標準時間が定められていないことも大きく影響しています。ユーザーである皆さんはこのような問題点を物流現場に行って見抜いていただきたいのです。このような点に気づいたとしたら皆さんは値上げ要請を受け入れるでしょうか。

 

そしてアウトソース先とは現場を見た感想と共に改善案を提示しながら話し合ってみるとよいと思います。人材不足と言いつつ、実際には人材余剰かもしれないのです。これは何もアウトソースだけの話ではありません。自社物流についても同様な視点で見てみることをお勧めします。

 


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
面積原価(その1)

 SCMの生産性を計るKPIとして、『面積原価』の概念とそれに基づくSCMのPDCAサイクルを実現する手法『面積原価管理』について解説します。 &nbs...

 SCMの生産性を計るKPIとして、『面積原価』の概念とそれに基づくSCMのPDCAサイクルを実現する手法『面積原価管理』について解説します。 &nbs...


SCM効率を評価するKPIの新提案 SCM最前線 (その15)

 前回のその14に続いて解説します。   4. 面積原価を導入すると何が変わるか   (1) 資源効率視点での製品の正しい利益...

 前回のその14に続いて解説します。   4. 面積原価を導入すると何が変わるか   (1) 資源効率視点での製品の正しい利益...


儲ける輸送改善とは 【連載記事紹介】おすすめセミナーもご紹介

       儲ける輸送改善の記事が無料でお読みいただけます!   ◆とってもおいしい輸送改善...

       儲ける輸送改善の記事が無料でお読みいただけます!   ◆とってもおいしい輸送改善...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
実力把握は物流ベンチマーク活動で、物流サービスと物流コスト

  1. ベンチマーク活動 ベンチマーク活動というものがあります。物流でいえばたとえば自社の物流コストが業界の中で競争力があるのかどうか...

  1. ベンチマーク活動 ベンチマーク活動というものがあります。物流でいえばたとえば自社の物流コストが業界の中で競争力があるのかどうか...


輸送改善 今後の物流に向けて荷主が取り組むべきこと(その3)

◆ トラック積載率向上  ドライバー不足で輸送能力が低下することへの対応として荷主が取り組むべきことは、効率の悪い輸送を改め積載率を向上する、実車率...

◆ トラック積載率向上  ドライバー不足で輸送能力が低下することへの対応として荷主が取り組むべきことは、効率の悪い輸送を改め積載率を向上する、実車率...


財務的安定性:購買業務の要点(その12)

  ◆財務的安定性   サプライヤーの財務諸表、購買担当者であれば見る機会もあると思います。取引先に関する財務的な安定性の確...

  ◆財務的安定性   サプライヤーの財務諸表、購買担当者であれば見る機会もあると思います。取引先に関する財務的な安定性の確...