オフィスでのカイゼン活動

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 生産現場では一般的に行われているカイゼン活動ですが、オフィス(製品開発部門等を含む)ではまだ一般的とは言えません。生産現場とは違ってオフィスでは、まず改善の対象となるモノが良く見えません。モノが良く見えないため、削減するムダも良くわかりません。さらにオフィスはカイゼン活動のための教育が行われていないことが多いので、皆はどのようにムダを把握してよいのか、またはどのようにムダを削減してよいのかが曖昧です。
 
 生産現場ではチームで仕事をするので、チームワークを主体とするカイゼン活動がやり易いのですが、個人で仕事をすることが多いオフィスでカイゼン活動を行うためには、強いリーダーシップが不可欠となります。しかしリーダーは往々にして忙しいため、カイゼン活動に加われないのが現状です。この様な理由からも、オフィスでのカイゼン活動は、多くの企業においては、まだまだ一般的ではないと思います。
 
 僕が所属する製品開発部門でも、これまでカイゼン活動は行われていませんでした。(業務プロセスに問題があった時は、問題が顕在化し、エスカレートして大問題になってからリーンシックスシグマのDMAICフレームワークを使って問題を解決していました)
 
 しかし周りを良く見てみれば、製品開発部門内でも、 DMAIC でプロジェクトを立ち上げるまでもなく、もっと早く解決したい小さな問題をたくさん見つけることができます。またマネジャーや社員の声に耳を傾ければ、色々な業務上の問題が聞こえきます。
 
 そこでそれらの小さな問題を解決して、ムダ・ムリ・ムラを削減するために、オフィスでのカイゼン活動を始めてみましたので、今回、紹介します。
 

1. 問題の把握

 
 まず第一に取り組んだことは、問題の把握です。問題の把握のために、カイゼンではよく改善ボックスを設置して、思い付いた改善内容を紙切れに買いて投稿してもらうシステムを使います。しかしこのシステムが有効なのは、カイゼン教育が行き届いている組織だけです。残念ながら、一般的なオフィスに改善ボックスを設置しても、あまり有効ではないでしょう。 改善ボックス で集めたアイデア数を、集めるのに使った時間(月日)で割れば、改善ボックス の効率が分かります。
 
 そこで改善ボックスの代わりに、どのような問題を日頃感じているのか、マネジャーや社員に直接インタビューをしてみました。そしてたった1日のインタビューでも100を超える問題を聞き取ることができました。
 

2. 問題の定型化

 
 直接インタビューでは、皆がそれぞれの言葉で問題を語ってくれたため、内容を比べることに困難を感じました。そこで次に取り組んだことは、問題の定型化です。集めた100を超える改善アイデアを、次の型に翻訳してみました。
 
  •  ____にも関わらず (今行っている努力や期待)
  •  ____において (部署やチーム)
  •  ____という問題が起きている。
  •  この問題は、 ____に悪影響を及ぼしている。(直接の不利益)
  •  考えられる原因としては
  •  ____が挙げられる。
 
 問題を定型化することで、格段に理解しやすくなりました。また定型化はエクセルの欄を使って行ったので、内容に応じた並び替えや、同じ内容のグループ化も容易になりました。
 
 改善
 

3. ムダの種類の把握

 
 次にエクセルに新しい欄(ムダの種類)を加えて、問題を解決した場合に削減できるムダの種類を、それぞれの定型化した改善アイデアに割り振りました。ムダの種類によって並び替えやグループ化を容易にするためです。
 

4. 評価項目の決定

 
 改善アイデアは100以上もあったので、すべての改善を限られた人員が限られた時間で行うことは不可能です。そのため優先順位をつけて、最も効果的な改善から順に行っていく必要がありました。
 
 そこで以下のような優先順位をつけるための評価項目を決定しました。
 

【インパクト】

 
  収益の増加
  コストの削減
  固定資産の削減
  ビジネス戦略
  納期
  調達期間
  品質
  顧客満足
 

【リソース】

 
  人材
  資本
  時間
 

【リスク】

 
  技術的リスク
  プロジェクトリスク
  相互依存におけるリスク
 
 さらにそれぞれの評価項目には、重要度に応じて重み付けの数値を割り振りました(数値はAHPを使って決定)
 

5. 優先順位の決定

 
 チームのメンバーと一緒に、それぞれの改善アイデアをそれぞれの評価項目に従って数値評価しました。目的は優先順位の決定なので、絶対的な数値を考える必要はありません。基準となる改善アイデア...
 
 生産現場では一般的に行われているカイゼン活動ですが、オフィス(製品開発部門等を含む)ではまだ一般的とは言えません。生産現場とは違ってオフィスでは、まず改善の対象となるモノが良く見えません。モノが良く見えないため、削減するムダも良くわかりません。さらにオフィスはカイゼン活動のための教育が行われていないことが多いので、皆はどのようにムダを把握してよいのか、またはどのようにムダを削減してよいのかが曖昧です。
 
 生産現場ではチームで仕事をするので、チームワークを主体とするカイゼン活動がやり易いのですが、個人で仕事をすることが多いオフィスでカイゼン活動を行うためには、強いリーダーシップが不可欠となります。しかしリーダーは往々にして忙しいため、カイゼン活動に加われないのが現状です。この様な理由からも、オフィスでのカイゼン活動は、多くの企業においては、まだまだ一般的ではないと思います。
 
 僕が所属する製品開発部門でも、これまでカイゼン活動は行われていませんでした。(業務プロセスに問題があった時は、問題が顕在化し、エスカレートして大問題になってからリーンシックスシグマのDMAICフレームワークを使って問題を解決していました)
 
 しかし周りを良く見てみれば、製品開発部門内でも、 DMAIC でプロジェクトを立ち上げるまでもなく、もっと早く解決したい小さな問題をたくさん見つけることができます。またマネジャーや社員の声に耳を傾ければ、色々な業務上の問題が聞こえきます。
 
 そこでそれらの小さな問題を解決して、ムダ・ムリ・ムラを削減するために、オフィスでのカイゼン活動を始めてみましたので、今回、紹介します。
 

1. 問題の把握

 
 まず第一に取り組んだことは、問題の把握です。問題の把握のために、カイゼンではよく改善ボックスを設置して、思い付いた改善内容を紙切れに買いて投稿してもらうシステムを使います。しかしこのシステムが有効なのは、カイゼン教育が行き届いている組織だけです。残念ながら、一般的なオフィスに改善ボックスを設置しても、あまり有効ではないでしょう。 改善ボックス で集めたアイデア数を、集めるのに使った時間(月日)で割れば、改善ボックス の効率が分かります。
 
 そこで改善ボックスの代わりに、どのような問題を日頃感じているのか、マネジャーや社員に直接インタビューをしてみました。そしてたった1日のインタビューでも100を超える問題を聞き取ることができました。
 

2. 問題の定型化

 
 直接インタビューでは、皆がそれぞれの言葉で問題を語ってくれたため、内容を比べることに困難を感じました。そこで次に取り組んだことは、問題の定型化です。集めた100を超える改善アイデアを、次の型に翻訳してみました。
 
  •  ____にも関わらず (今行っている努力や期待)
  •  ____において (部署やチーム)
  •  ____という問題が起きている。
  •  この問題は、 ____に悪影響を及ぼしている。(直接の不利益)
  •  考えられる原因としては
  •  ____が挙げられる。
 
 問題を定型化することで、格段に理解しやすくなりました。また定型化はエクセルの欄を使って行ったので、内容に応じた並び替えや、同じ内容のグループ化も容易になりました。
 
 改善
 

3. ムダの種類の把握

 
 次にエクセルに新しい欄(ムダの種類)を加えて、問題を解決した場合に削減できるムダの種類を、それぞれの定型化した改善アイデアに割り振りました。ムダの種類によって並び替えやグループ化を容易にするためです。
 

4. 評価項目の決定

 
 改善アイデアは100以上もあったので、すべての改善を限られた人員が限られた時間で行うことは不可能です。そのため優先順位をつけて、最も効果的な改善から順に行っていく必要がありました。
 
 そこで以下のような優先順位をつけるための評価項目を決定しました。
 

【インパクト】

 
  収益の増加
  コストの削減
  固定資産の削減
  ビジネス戦略
  納期
  調達期間
  品質
  顧客満足
 

【リソース】

 
  人材
  資本
  時間
 

【リスク】

 
  技術的リスク
  プロジェクトリスク
  相互依存におけるリスク
 
 さらにそれぞれの評価項目には、重要度に応じて重み付けの数値を割り振りました(数値はAHPを使って決定)
 

5. 優先順位の決定

 
 チームのメンバーと一緒に、それぞれの改善アイデアをそれぞれの評価項目に従って数値評価しました。目的は優先順位の決定なので、絶対的な数値を考える必要はありません。基準となる改善アイデアをまず決めておいて、以下の値を使ってその基準となった改善アイデアとの相対的評価を行いました。
 
 0:  インパクト無
 1:  インパクト小
 3: インパクト中
 9:  インパクト大
 
 すべての改善アイデアを数値評価し、数値の大きい方から高い優先順位をつけ、トップ10を選び、今回の改善項目としました。
 

6. 改善の実施

 
 100以上あった改善アイデアの中から優先順位の高いものだけを選んだ後、それらについて詳細な改善計画を立てました。そしてそれらを一つずつ実行に移していきました。
 

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この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

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