◆水素エネルギー社会 連載目次
- 1. 燃料電池自動車開発
- 2. 船舶の次世代エネルギー源
- 3. 燃料電池自動車開発競争
- 4. 東レ ~ FCV用CF増産、航空機からシフト
- 5. 炭素繊維の地域ごとにおける消費用途の差
- 6. 水素協議会
- 7. JR東日本、水素燃料車両の開発・試験
- 8. ドイツの燃料電池鉄道車両とは
- 9. 低炭素社会とは
- 10. 水素の安全性 1
- 11. 水素の安全性 2
- 12. 水素社会への潮流
今回から水素エネルギー社会についての連載します。第1回は、FCV開発についてです。
1、次世代産業の覇権争い
2020年8月7日の日経朝刊に、EUが水素で世界TOPを狙うという記事がありました。
燃料電池自動車(FCV)に関連した仕事をしてきた関係で、今後の次世代車の普及や背景にある地球環境問題なども継続してウォッチングするようになりました。温暖化抑止のための低炭素、さらには脱炭素社会をにらんだ時、水素エネルギーもその有望な選択肢となります。
FCVは、水素エネルギー実用化として最も現実性が高いところですが、その普及推進の裏には、水素エネルギー社会があります。コスト等の課題はまだまだ大きいものの、完全な脱炭素が実現できるという意味で価値があります。日本政府としては、東京オリンピックでFCVを世界的にPRする算段だったのですが、ご存知の状況です。
FCV推進国としては、世界で最も早く商用普及を始めたトヨタ・ホンダの日本、トヨタとの合弁会社をいくつか設立した中国が目につくところですが、実は韓国も日本以上の性能ともいわれ、おそらくは国策的に力を入れているようです。
EU内各社は当初FCVに力を入れていましたが、EVにシフトしているようで、アジアに比べて燃料電池開発は遅れつつあるとの印象を持っていました。
しかしこの日経の記事によると、EUは戦略的に動いているようです。FCVとしてではなく、もっと大きな水素エネルギー社会という動きです。次世代産業の覇権争いの様相です。
トヨタ自動車が計画している東富士工場跡地を利用したスマートシティは当然、都市エネルギーインフラにおける水素エネルギーの実用実験場となるのでしょう。企業頼みでなく、国家戦略的に取り組むべきところですが、今一つ見えてこないように感じています。
水素協議会 Hydrogen Council という国際組織があります。この活動をみると面白いことがみえてきます。
2、中国政府 FCV開発に奨励金
中国政府が水素燃料自動車(FCV)開発企業に奨励金制度を導入すると報道されています。
中国は従来、EV普及を後押ししており、購入補助金をドライビングフォースとしていたところですが、補助金削減とともに普及も伸び悩んでいます。一方昨年来、トヨタ自動車は中国の国策的自動車メーカはじめ、複数の企業との連携を深めています。
2019年にトヨタ自動車と政府系の大手自動車メーカー2社とのFCV連携に関...