はじめに「本質」、次に「基礎」 メカトロ設計(その3)

更新日

投稿日

生産工学

【連載目次】

 設計は、さまざまな事柄に対して意識的な作業をする行為ですが、意識し過ぎると余計なことを考えてしまい空回りしてしまいます。

 その時は一呼吸して、モノの本質について考えると良いでしょう。本質が見えると、すぐさま解決とはいかないまでも何かヒントのようなものを感じ、そこから新たな価値を見出すことができます。

 “本質”は色眼鏡を外し、シンプル(素直)に見ないと見えてこないのです。

 そのポイントは、モノ独自の性格や姿をとらえることで、それ無しでは、そのモノが存在し得ない要素(核心部分)を探ることと説明できます。例えば、水を入れるコップの本質とは何かを考えてみましょう。

 この問いは「コップがコップとして役立つ部分は何か」を考えることで、その答えは空洞にあります。水を注ぐため、空洞スペースがないとコップとしての成立はないのです。大事なのはコップの材質、取っ手や底の形状などは別なものに代える事ができるので、本質ではないというとらえ方です。

 さて、機械システムの本質は機械をどう動かすかという仕様とアプローチの仕方によって様々なので、コップのように一言で語ることは難しいでしょう。

 しかし、本質を探る手掛かりはあります。それは「本質」の対義語にある「現象」に目を向けることです。これらの現象は、設計の盲点として潜むことが多く、基礎知識がないと解決に苦しみます。まずは「本質」、それを探るための「基礎知識」をしっかりと身に付けておきましょう。

【付録】メカトロ設計のなにそれ用語:ハーモニックドライブ

 ハーモニックドライブは、歯車装置(減速機)の一種です。通常の歯車は、噛合部分に隙間(バックラッシ)を作ることで歯車をスムーズに転がすことできる一方、その隙間により精度誤差を生じる課題がありま...

生産工学

【連載目次】

 設計は、さまざまな事柄に対して意識的な作業をする行為ですが、意識し過ぎると余計なことを考えてしまい空回りしてしまいます。

 その時は一呼吸して、モノの本質について考えると良いでしょう。本質が見えると、すぐさま解決とはいかないまでも何かヒントのようなものを感じ、そこから新たな価値を見出すことができます。

 “本質”は色眼鏡を外し、シンプル(素直)に見ないと見えてこないのです。

 そのポイントは、モノ独自の性格や姿をとらえることで、それ無しでは、そのモノが存在し得ない要素(核心部分)を探ることと説明できます。例えば、水を入れるコップの本質とは何かを考えてみましょう。

 この問いは「コップがコップとして役立つ部分は何か」を考えることで、その答えは空洞にあります。水を注ぐため、空洞スペースがないとコップとしての成立はないのです。大事なのはコップの材質、取っ手や底の形状などは別なものに代える事ができるので、本質ではないというとらえ方です。

 さて、機械システムの本質は機械をどう動かすかという仕様とアプローチの仕方によって様々なので、コップのように一言で語ることは難しいでしょう。

 しかし、本質を探る手掛かりはあります。それは「本質」の対義語にある「現象」に目を向けることです。これらの現象は、設計の盲点として潜むことが多く、基礎知識がないと解決に苦しみます。まずは「本質」、それを探るための「基礎知識」をしっかりと身に付けておきましょう。

【付録】メカトロ設計のなにそれ用語:ハーモニックドライブ

 ハーモニックドライブは、歯車装置(減速機)の一種です。通常の歯車は、噛合部分に隙間(バックラッシ)を作ることで歯車をスムーズに転がすことできる一方、その隙間により精度誤差を生じる課題があります。ハーモニックは、それがないため、高精度な位置決めができるという特徴を持ってます。特に産業用ロボットでは、長いアーム(腕)の先端の振動が問題になります。振動の主な原因は関節駆動部の減速機の回転ムラで、これは歯車誤差に起因しています。ハーモニックドライブは大きな減速比もとれるので、高出力・高精度な動きが要求される多くのロボットに採用されています。

 次回、メカトロ設計(その4) 「ニゲ」を設けずしてトラブルは減らずに続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

西田 麻実

ロボット、AI(人工知能)、自動化システムを支えるメカトロニクス (機械+電気+情報)技術の向上とものづくりへの興味関心を育む人財育成をサポートいたします。

ロボット、AI(人工知能)、自動化システムを支えるメカトロニクス (機械+電気+情報)技術の向上とものづくりへの興味関心を育む人財育成をサポートいたします。


「生産工学」の他のキーワード解説記事

もっと見る
スマートファクトリー、目的と課題とは

    インダストリー4.0のキーワードであるスマートファクトリーを受けて、製造業を中心に、最新技術を使って今までの業務をカイ...

    インダストリー4.0のキーワードであるスマートファクトリーを受けて、製造業を中心に、最新技術を使って今までの業務をカイ...


受注生産工場のボトルネック工程基準の生産管理手法

 自動車部品などの製造工場では親工場からの受注は典型的な多品種少量生産を強いられています。背景として、海外生産・調達の増加により、国内で生産するものは、次...

 自動車部品などの製造工場では親工場からの受注は典型的な多品種少量生産を強いられています。背景として、海外生産・調達の増加により、国内で生産するものは、次...


計測条件の影響 計測の精度と不確かさとは(その2)

【計測の精度と不確かさとは 連載目次】 「精度」とは 計測条件の影響 計測信頼性の評価全般の課題 不確かさの定義 不確かさの具体的な計算...

【計測の精度と不確かさとは 連載目次】 「精度」とは 計測条件の影響 計測信頼性の評価全般の課題 不確かさの定義 不確かさの具体的な計算...


「生産工学」の活用事例

もっと見る
国際プラスチックフェアー(IPF JAPAN 2017)展示会レポート(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   4.発泡成形の2  東洋機械金属は成形機のノズル部分に多孔質金属を用いて、超臨界二酸化炭素を導入して発泡...

 前回のその2に続いて解説します。   4.発泡成形の2  東洋機械金属は成形機のノズル部分に多孔質金属を用いて、超臨界二酸化炭素を導入して発泡...


金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例(その2)

        前回のその1に続いて解説します。   3. 取り組み指針に沿ったCAM機能の選...

        前回のその1に続いて解説します。   3. 取り組み指針に沿ったCAM機能の選...


3次元データ加工の手順のセオリーとは (その1)

  1. 教科書がない3次元データ加工    当事務所が金型メーカーや部品加工メーカーを診断させていただく際、3次元データ加工の...

  1. 教科書がない3次元データ加工    当事務所が金型メーカーや部品加工メーカーを診断させていただく際、3次元データ加工の...