「A3報告書」の活用とは

  

1. 社会人基礎力の必要性

 解説記事「ものづくりで求められる『考え抜く力』とは」の中で、「考え抜く力」と「メタ認知」の重要性について解説しました。今回は、ビジネスの中で、それらの力を効果的に高めるための具体的な方法の一つとして、有名な「A3報告書」を取り上げ、その効果について解説します。
 

2.「A3報告書」(トヨタ式報告書)とは

 「A3報告書」は、トヨタの社内で使われている、A3用紙1枚に目的、現状、課題分析、対策、スケージュールなど必要な報告内容をすべてまとめて記述する資料作成フォーマットです。報告以外に、提案書・企画書、問題解決手段として使用され、様々な種類があります。
 
 例えば、問題解決のためのA3報告書は、図1に示すような形となり、左上からテーマ名→ ①背景→②現状→③目標→④分析→⑤解決策→⑥実行計画→⑦結果検証の順に書き込んでいきます。 見て分かる通り、一覧性、ロジック・構造、課題認識と分析が重視されており、
 
  •  上司を納得させる効果的な資料が作れる
  •  ビジネス判断のスピードが上がる
  •  「本質思考」「論理的思考力」「表現力」が向上する
  •  作業をこなすのが仕事ではなく、自ら課題を見つけて解決することが仕事であるという意識が身に着く
 
 といった様々な効用があると言われています。
 
  
トヨタ式報告書
 図1. 問題解決のためのA3報告書(例)
 

3. トヨタ式報告書:メタ認知の意味での「A3報告書」

 筆者は、上記効用に加えて、このフォーマットを使うことで常に目的と方法の関係性が意識されるというメタ認知が働き、しばしば作業効率低減につながることの多い「作業自体が目的となっている仕事の進め方」が改善される点に着目しています。
 
 「この目的に沿って業務を進めてください。」と指示すると、相手から「要するに何をしたら良いですか?」と質問される。
 
 部下の活動成果報告が、「〇〇作業が完了しました。」で終わる。目的達成度合いを尋ねると、「分かりません。(〇〇作業をするのが仕事です。)」との返事。
 
 業務の中で問題が発見されても、「原因が分からないので、とりあえず今の作業を続けてみよう。」と問題を先送りする。
 

4. トヨタ式報告書:実際に使ってみて

 ある組織改善活動の中で、メンバーが効果を理解しやすいように、明示的に課題を設定して計画・実行を行う必要のある課題に対してA3報告書を使ってもらったところ、当初 「できて当然だろう」という顔をしていたメンバーが、実際に報告書の作成を始めた途端に、
 
  •  背景や前提が分からない
  •  目的が特定できない
  •  課題の分析ができない
 
 など、かなり作成に難渋していました。これは、「分かった気になっていても、実際には目的や、作業の必然性が、クリアには理解さていない」ことの表れで、メンバーがこの点についての気付きを得られたことが、とても大きな成果でした。その結果として、常に目的と方法に対する意識が働き、作業を進めることに集中している状況から、「成果を出すこと」を目的として、活動中に作業の効果をフィードバックして活動自体を改善するところまで変化し、徐々に成果が積み重ねられるようになりました。 
 

5. トヨタ式報告書:意識・考え方そのものを改善することができるツール

 目的と方法の混同は様々な場面で見られ、成果の品質や活動のスピードが大きく損なわれる原因になっています。今回、説明したA3報告書は、そうした進め方のベースとなる意識・考え方そのものを改善することができるツールの一つであり、またメンバーの論理的思考力が高まり、ビジネスの意思決定スピードが向上する等の効用も期待できます。皆さんもお試しください。(気を付けないと、「A3報告書を作ること」が目的になってしまいますので、その点はご注意ください。)
 
【参考文献】
・稲垣公夫:「マンガでわかる!トヨタ式資料作成術」(株)宝島社(2016)
 

この記事の著者

山本 裕之

企業の開発生産性向上のための「人づくり」「組織づくり」「技術基盤づくり」に、長年の技術開発経験と技術力・論理的思考力を総動員して、取り組んでまいります。

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