PDPCの効用 新QC七つ道具: PDPC法の使い方(その8)

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【目次】
序論   ←掲載済
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方←今回
第10章 PDCA-TC法の使い方
 

第9章 PDPC法の使い方

 

9.4 挑戦管理のためのPDPC法の基本ステップ

 
 

9.4.2. 不測事態への対応計画立案のためのPDPC法(D型)の基本ステップ

 
 前回のStep4に続いて解説します。
 

【Step 5 PDPC(Ⅰ)の内容チェック】

 
 このステップの狙いは、PDPC(Ⅰ)の作成を通じて、リーダーと開発者が共有した、夢、成功の見通し、リスクの数と大きさ、成功のために打つべき先行実施事項、などをメンバーたちも同じレベルで共有し、それをベースにそれぞれのさらなる充実を図ることにあります。
 
 したがって、このステップでは、全員参加が必須です。しかも、このケースのように、先行き先行手配や、盛り込み技術のレベルダウンも視野にあるような場合は、トップのジャッジが勝負となるのでトップの参画が望ましいでしょう。チェック内容のポイントは次の通りです。
 

【ポイント1】評価試験、試験の内容、判断内容の漏れ、甘さ

 
 開発者のRM(リスクマネジメント)は、信頼性設計、すなわち図9-1におけるSP、DP両ゾーンが主眼となりやすいので、RMのチェックは、それぞれ、“設計者”は過去の失敗経験を参考に、“試験関係者”は認証責任の観点から、“製造関係者”は作り込み責任の点から、“品証・検査関係者”は対顧客保証責任の観点から、ネガティブに、特にDNゾーンに重きを置いて実施します。
 

【ポイント2】評価用サンプルの内容

 
 開発者の評価計画は、往々にして機能面しか念頭にないので、サンプルの工法、材料、バラツキに関する評価の要・不要についてチェックします。
 

【ポイント3】各節目ボックスに必要なものの抽出

 
 Step 3で抽出した内容、すなわち、評価試験のための「サンプル」「確認装置」「確認要員」「判定のための情報」など、なかでも、準備に時間を要したり、プロジェクトチームだけでは処理しきれない内容のものは特に漏れないように注意します。
 

【Step 6 PDPC(Ⅱ)の作成】

 
 前ステップで、各メンバーから入手した情報を客観的、総合的な目でチェックしなおし、場合によっては内容を確認した上で修正するなど、PDPC(Ⅰ)をベースにリーダーが加筆修正して作成します。
 

【ポイント】総合的な観点から、トップと相談し意向を反映する

 
 総合的というのは、挑戦計画全体、さらに、その先を視野に入れた観点という意味であり、トップの意向反映は重要です。
 

【Step 7 PDPC(Ⅱ)の内容チェック】

 
 作成したPDPC(Ⅱ)をコピーして事前に配布し、各職場で事前にチェックした上で、全メンバーが一堂に会し、内容の最終確認を行います。ポイントは、トップの意向も反映して注力した、総合的・客観的側面からの加筆修正点の説明とその内容に対する共通認識の確立です。
 

【Step 8 PDPC (Ⅲ)の作成】

 
 N7活用上のポイントの6番目「N7は最低3回描く」の3回目に当たるステップです。実用上は、見にくくなければPDPCはそのままでもよいのですが、清書する段階で総合的確認がなされるので極力清書するのがよいでしょう。それ以外のポイントは、下記内容の記入です。
 
  1. 最新の挑戦計画アロー・ダイヤグラムからくる制約日程。
  2. 好結果へ誘導するために各職場が実施すべきことの内容と期限。
  3. 実施結果のうち、リーダーへの要報告事項とタイミング。
 

【Step 9 PDPC(Ⅲ)の最終確認】

 
 全メンバーによる、上記記入事項の内容確認とアクションに対する合意がポイントですが、挑戦計画の成功を左右する不測事態対応計画の最終確認なので、トップの同席が望まれます。
 

(4) PDPCの効用

 
 かなり詳細な記述としましたが、趣旨とノウハウを読み取った後は、PDPC法の持つ柔軟性と奔放性を駆使し、独自の工夫を交えて具体的なニーズに対応してもらえばよいでしょう。最後に、この基本ステップのベースとなった事例の概要です。
 
 5年かけたプロジェクトの最終判断を3カ月後に控え、最後の問題点の見通しをリーダーに聞いたところ「やってみなければ分からない」の一点ばりでした。そこで、「今のテストが終わるまで何も分からないのか?」との問いに「そんなことはない」というので「じゃあ……」とPDPCを一緒に描いてみ...
 
  PDPC
 
【目次】
序論   ←掲載済
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方←今回
第10章 PDCA-TC法の使い方
 

第9章 PDPC法の使い方

 

9.4 挑戦管理のためのPDPC法の基本ステップ

 
 

9.4.2. 不測事態への対応計画立案のためのPDPC法(D型)の基本ステップ

 
 前回のStep4に続いて解説します。
 

【Step 5 PDPC(Ⅰ)の内容チェック】

 
 このステップの狙いは、PDPC(Ⅰ)の作成を通じて、リーダーと開発者が共有した、夢、成功の見通し、リスクの数と大きさ、成功のために打つべき先行実施事項、などをメンバーたちも同じレベルで共有し、それをベースにそれぞれのさらなる充実を図ることにあります。
 
 したがって、このステップでは、全員参加が必須です。しかも、このケースのように、先行き先行手配や、盛り込み技術のレベルダウンも視野にあるような場合は、トップのジャッジが勝負となるのでトップの参画が望ましいでしょう。チェック内容のポイントは次の通りです。
 

【ポイント1】評価試験、試験の内容、判断内容の漏れ、甘さ

 
 開発者のRM(リスクマネジメント)は、信頼性設計、すなわち図9-1におけるSP、DP両ゾーンが主眼となりやすいので、RMのチェックは、それぞれ、“設計者”は過去の失敗経験を参考に、“試験関係者”は認証責任の観点から、“製造関係者”は作り込み責任の点から、“品証・検査関係者”は対顧客保証責任の観点から、ネガティブに、特にDNゾーンに重きを置いて実施します。
 

【ポイント2】評価用サンプルの内容

 
 開発者の評価計画は、往々にして機能面しか念頭にないので、サンプルの工法、材料、バラツキに関する評価の要・不要についてチェックします。
 

【ポイント3】各節目ボックスに必要なものの抽出

 
 Step 3で抽出した内容、すなわち、評価試験のための「サンプル」「確認装置」「確認要員」「判定のための情報」など、なかでも、準備に時間を要したり、プロジェクトチームだけでは処理しきれない内容のものは特に漏れないように注意します。
 

【Step 6 PDPC(Ⅱ)の作成】

 
 前ステップで、各メンバーから入手した情報を客観的、総合的な目でチェックしなおし、場合によっては内容を確認した上で修正するなど、PDPC(Ⅰ)をベースにリーダーが加筆修正して作成します。
 

【ポイント】総合的な観点から、トップと相談し意向を反映する

 
 総合的というのは、挑戦計画全体、さらに、その先を視野に入れた観点という意味であり、トップの意向反映は重要です。
 

【Step 7 PDPC(Ⅱ)の内容チェック】

 
 作成したPDPC(Ⅱ)をコピーして事前に配布し、各職場で事前にチェックした上で、全メンバーが一堂に会し、内容の最終確認を行います。ポイントは、トップの意向も反映して注力した、総合的・客観的側面からの加筆修正点の説明とその内容に対する共通認識の確立です。
 

【Step 8 PDPC (Ⅲ)の作成】

 
 N7活用上のポイントの6番目「N7は最低3回描く」の3回目に当たるステップです。実用上は、見にくくなければPDPCはそのままでもよいのですが、清書する段階で総合的確認がなされるので極力清書するのがよいでしょう。それ以外のポイントは、下記内容の記入です。
 
  1. 最新の挑戦計画アロー・ダイヤグラムからくる制約日程。
  2. 好結果へ誘導するために各職場が実施すべきことの内容と期限。
  3. 実施結果のうち、リーダーへの要報告事項とタイミング。
 

【Step 9 PDPC(Ⅲ)の最終確認】

 
 全メンバーによる、上記記入事項の内容確認とアクションに対する合意がポイントですが、挑戦計画の成功を左右する不測事態対応計画の最終確認なので、トップの同席が望まれます。
 

(4) PDPCの効用

 
 かなり詳細な記述としましたが、趣旨とノウハウを読み取った後は、PDPC法の持つ柔軟性と奔放性を駆使し、独自の工夫を交えて具体的なニーズに対応してもらえばよいでしょう。最後に、この基本ステップのベースとなった事例の概要です。
 
 5年かけたプロジェクトの最終判断を3カ月後に控え、最後の問題点の見通しをリーダーに聞いたところ「やってみなければ分からない」の一点ばりでした。そこで、「今のテストが終わるまで何も分からないのか?」との問いに「そんなことはない」というので「じゃあ……」とPDPCを一緒に描いてみたところ、なんと彼は、A3のコピー用紙が真っ黒になるくらいの見通しを持っていたのです。しかも、その中に、納期2カ月の金型が必要な事態に至る可能性が見つかり、空振り覚悟で先行手配したおかげで手待ちを免れたのです。
 
 要するに、彼の頭にある見通しは、優れて十分でしたが、あまりに複雑・多岐多様で表現のしようがなかったわけで、PDPCの効用の一端をご理解願えたことと思います。
 
 次回は、9.4.3 不測事態への対応計画立案のためのPDPC法(タイプC)の基本ステップから解説を続けます。
 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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