余裕時間 PERT(その4)

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【PERTの連載目次】

1.スケジュール管理に使われる工程表
2.基本用語と基本ルール
3.作業時刻
4.余裕時間
5.クリティカルパス
6.日程短縮
7.フォローアップ
8.配員計画
9.最小費用による日程計画
10.まとめ及び用語の意味

4. 余裕時間(フロート)

 
 結合点に2つ以上の作業が集まる場合、それぞれの作業の所要時間に差があるのが一般的です。したがって、それらの作業の中で最も遅く完了する作業以外のものは時間的余裕が存在することになります。それを余裕時間(フロート)と呼びます。図4.1の最早開始時刻を計算していくと、結合点⑤では15となり、工事全体を完成させるのに要する時間は15となります。その経路として①→②→④→⑤と①→②→③→④→⑤の2通りがあります。経路②→③→④は5日、②→④は8日かかるので前者は3日延びて、8日になっても工期に影響しません。5日でやれば、開始を3日遅らせても間に合うため8日の経路に対して3日の余裕があることになります。
 
PERT
図4.1 最早開始時刻の計算モデル
 

(1)最大余裕時間(トータルフロート)

 
 任意の作業◯i→◯j内で取り得る最大余裕時間をトータルフロートと呼びます。例えば、図4.2で作業②→④の作業は3日に開始して3日間かかるので6日には完了します。しかし、④の最遅終了時刻は11日であるため11日までに完了していれば工期16日に影響を与えないので11―6=5日間の余裕になります。同様に、④→⑤では13―10=3日間の余裕になります。ここで、②→④の最大余裕時間を全部この作業で使い果たし8日かかったとすれば④の最早開始時刻は11日となり、後続の④→⑤の作業の最大余裕時間が無くなります。このように先行作業では、余裕時間を使うと後続作業の余裕時間に影響を与えます。[ ]内の数字が余裕時間を示してします。最大余裕時間は、各々の作業に含まれる後述する自由余裕時間(フリーフロート)と干渉余裕時間(デペンデントフロート)を合計したものから成り立っています。
 
PERT
図4.2 余裕時間:[ ]内の数字
 
 図4.3に図4.2の計算例を示しました。余裕時間の特徴は次の通りです。
 
① 最大余裕時間=0の作業をクリティカル作業と言う。
② 最大余裕時間=0ならば他の余裕時間も0となる。
③ 最大余裕時間はその作業のみでなく前後の作業に関係があり、1つの経路上では最大余裕時間に含まれ
 るデペンデントフロートは共有されているもの。各作業の最大余裕時間は、それを加えた分だけその
 経路に余裕時間があ るわけではない。先行作業で最大余裕時間を使い切れば、その中のデペンデント
 フロート分だけ後続作業の最大余裕時間は少なくなる。
 
PERT
図4.3 最大余裕時間の計算例
 

(2)自由余裕時間(フリーフロート)

 
 最大余裕時間をもつ先行作業がその一部または全部を使うと、後続する作業は最早開始時刻で始められなくなります。作業の中で自由に使っても、後続する作業に影響を及ぼさない余裕時間を自由余裕時間(フリーフロート)と呼びます。例えば図4.4の②→④の作業が完了するのが6日で、④の最早開始時刻は8日であるため 8-6=2日間は自由に使っても後続する作業④→⑤の余裕時間には影響しません。自由余裕時間の計算では作業の最早終了時刻と後続する結合点の最早開始時刻との差を求めればよいのです。
 
PERT
 図4.4 自由余裕時間の計算例
 
 自由余裕時間の特徴は次の通りです。
 
①自由余裕時間は必ず最大余裕時間と等しいか小さい。
②クリティカルイベントを終点とする作業の自由余裕時間は最大余裕時間に等しい。
③自由余裕時間はこれを使用しても、後続する作業には何ら影響を与えず、後続する作業は、最早開始時
 刻でスタートできる。(図4.3の計算例を参照)
 

(3)干渉余裕時間(デペンデントフロート)

 
 後続作業の持つ最大余裕時間に影響する余裕時間のことを干渉余裕時間(デペンデントフロート)と呼びます。図4.5の①→③の最大余裕時間8日には、(8日の最大余裕時間)-(6日の自由余裕時間)=2日の干渉余裕時間が含まれています。この場合、①→③で8日間の最大余裕時間を全部使用すると、後続...
 

【PERTの連載目次】

1.スケジュール管理に使われる工程表
2.基本用語と基本ルール
3.作業時刻
4.余裕時間
5.クリティカルパス
6.日程短縮
7.フォローアップ
8.配員計画
9.最小費用による日程計画
10.まとめ及び用語の意味

4. 余裕時間(フロート)

 
 結合点に2つ以上の作業が集まる場合、それぞれの作業の所要時間に差があるのが一般的です。したがって、それらの作業の中で最も遅く完了する作業以外のものは時間的余裕が存在することになります。それを余裕時間(フロート)と呼びます。図4.1の最早開始時刻を計算していくと、結合点⑤では15となり、工事全体を完成させるのに要する時間は15となります。その経路として①→②→④→⑤と①→②→③→④→⑤の2通りがあります。経路②→③→④は5日、②→④は8日かかるので前者は3日延びて、8日になっても工期に影響しません。5日でやれば、開始を3日遅らせても間に合うため8日の経路に対して3日の余裕があることになります。
 
PERT
図4.1 最早開始時刻の計算モデル
 

(1)最大余裕時間(トータルフロート)

 
 任意の作業◯i→◯j内で取り得る最大余裕時間をトータルフロートと呼びます。例えば、図4.2で作業②→④の作業は3日に開始して3日間かかるので6日には完了します。しかし、④の最遅終了時刻は11日であるため11日までに完了していれば工期16日に影響を与えないので11―6=5日間の余裕になります。同様に、④→⑤では13―10=3日間の余裕になります。ここで、②→④の最大余裕時間を全部この作業で使い果たし8日かかったとすれば④の最早開始時刻は11日となり、後続の④→⑤の作業の最大余裕時間が無くなります。このように先行作業では、余裕時間を使うと後続作業の余裕時間に影響を与えます。[ ]内の数字が余裕時間を示してします。最大余裕時間は、各々の作業に含まれる後述する自由余裕時間(フリーフロート)と干渉余裕時間(デペンデントフロート)を合計したものから成り立っています。
 
PERT
図4.2 余裕時間:[ ]内の数字
 
 図4.3に図4.2の計算例を示しました。余裕時間の特徴は次の通りです。
 
① 最大余裕時間=0の作業をクリティカル作業と言う。
② 最大余裕時間=0ならば他の余裕時間も0となる。
③ 最大余裕時間はその作業のみでなく前後の作業に関係があり、1つの経路上では最大余裕時間に含まれ
 るデペンデントフロートは共有されているもの。各作業の最大余裕時間は、それを加えた分だけその
 経路に余裕時間があ るわけではない。先行作業で最大余裕時間を使い切れば、その中のデペンデント
 フロート分だけ後続作業の最大余裕時間は少なくなる。
 
PERT
図4.3 最大余裕時間の計算例
 

(2)自由余裕時間(フリーフロート)

 
 最大余裕時間をもつ先行作業がその一部または全部を使うと、後続する作業は最早開始時刻で始められなくなります。作業の中で自由に使っても、後続する作業に影響を及ぼさない余裕時間を自由余裕時間(フリーフロート)と呼びます。例えば図4.4の②→④の作業が完了するのが6日で、④の最早開始時刻は8日であるため 8-6=2日間は自由に使っても後続する作業④→⑤の余裕時間には影響しません。自由余裕時間の計算では作業の最早終了時刻と後続する結合点の最早開始時刻との差を求めればよいのです。
 
PERT
 図4.4 自由余裕時間の計算例
 
 自由余裕時間の特徴は次の通りです。
 
①自由余裕時間は必ず最大余裕時間と等しいか小さい。
②クリティカルイベントを終点とする作業の自由余裕時間は最大余裕時間に等しい。
③自由余裕時間はこれを使用しても、後続する作業には何ら影響を与えず、後続する作業は、最早開始時
 刻でスタートできる。(図4.3の計算例を参照)
 

(3)干渉余裕時間(デペンデントフロート)

 
 後続作業の持つ最大余裕時間に影響する余裕時間のことを干渉余裕時間(デペンデントフロート)と呼びます。図4.5の①→③の最大余裕時間8日には、(8日の最大余裕時間)-(6日の自由余裕時間)=2日の干渉余裕時間が含まれています。この場合、①→③で8日間の最大余裕時間を全部使用すると、後続工程の最大余裕時間は全て2日ずつ減少します。同じように③→⑤の作業がもつ7日の最大余裕時間は、この作業の自由余裕時間が0であるため全部が干渉余裕時間になります。ここで使った自由時間は全て後続する工程に影響を与えます。
 
 言い換えれば、干渉余裕時間は使わずにとっておけば、後続する他の工程でその分を使用できる自由時間になります。自由余裕時間はその作業についてだけしか使えない余裕時間で、貯めておくことはできません。
 
PERT
 図4.5 干渉余裕時間の計算例
 
  

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この記事の著者

粕谷 茂

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