人的資源マネジメント:思考のクセやワナを知って強くなる(その1)

更新日

投稿日

 レジリエンスを高める方法について解説を続けていますが、今回はレジリエンスを高める4つ目の方法「心理的柔軟性(Mental Agility)」を解説します。
 
 以前、ABCモデルを紹介し「思い込みシート」を書いてみることを勧めましたが、如何でしたか。 心理的柔軟性を身につけるには、まず自分の思考のクセ(思い込み)を把握することも大切です。今からでも「思い込みシート」をやってみることをお勧めします。
 
人的資源マネジメント図129. 思い込みワークシート
 

1. 代替思考

 
 思考スタイルを知って「逆境力」を高める(その2)で使用した図129 の思い込みワークシートを書くと、A(Activating Event, 出来事)に対してB(Brief, 思考)という考え方をすることが、C(Consequences, 結果)という感情や行動に結びつくことが実感できます。BとCとがセットになっていることもわかると思います。また、思い込みシートをいくつか書いてみると、自分の思考パターンには一定の傾向があることに気づくと思います。これが「楽観性」のときに解説した「説明スタイル」とよばれるものです。
 
 ここで、図131 に示す代替思考ワークシートをやってみてください。まず、左欄に「自分は普段はそう考えないけど、こういうことも考えることができるな」というBをできるだけたくさんリストアップします。ひとりではなかなか出ないときは家族や友人に聞いてみると良いと思います。
 
 次に、リストアップしたBの一つひとつについて、そう考えるとどのような感情が生まれ、どのような行動になるのかというCを右欄に書きます。
 
人的資源マネジメント図131. 代替思考ワークシート
 
 代替思考ワークシートを書いてみると、ひとつの出来事(A)に対して、驚くほどいろいろな思考(B)があることが実感できると思います。この演習は、出来事、思考、結果(感情、行動)というように分けて考えるスキルを身につけ、Aに対していろいろなBとそれに関連するCがあることを頭に刻み込むことを目的としています。
 

2. 思考の罠

 
 次に、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みを紹介したいと思います。
 
人的資源マネジメント図132. 6つの思考の罠
 

(1) 結論にとびつく罠

 
 深く考えずに結論を出してしまうことです。たとえば、声をかけたのに返事がなかったことでその人から嫌われていると考えたり、ひとつのことをダメ出しされただけで自分にはこの仕事は向いていないと考えたりすることです。
 
 このようなときは、出来事に対して結論を出すまでの途中段階を無視していますし、極端な結論になっていることが多いものです。声をかけたのに返事がないのは、こちらの声が聞こえなかったのかもしれないですし、ダメ出しされたのは仕事に対する適性の問題ではなく、確認が足りなかっただけかもしれません。
 
 意識して、広い視野を持ってどのような可能性があるのかを考え、論理的に結論を導いているかどうかを確認することが大切です。
 

(2) 「いつも」の罠

 
 1度のことや数回同じことが続いたことで、いつも同じことになると考えてしまうことです。たとえば、後輩を一緒に飲みに行こうと誘ったのにあっさりと断られたことで、どうせまた誘っても断られるに違いないと決めつけ...
 レジリエンスを高める方法について解説を続けていますが、今回はレジリエンスを高める4つ目の方法「心理的柔軟性(Mental Agility)」を解説します。
 
 以前、ABCモデルを紹介し「思い込みシート」を書いてみることを勧めましたが、如何でしたか。 心理的柔軟性を身につけるには、まず自分の思考のクセ(思い込み)を把握することも大切です。今からでも「思い込みシート」をやってみることをお勧めします。
 
人的資源マネジメント図129. 思い込みワークシート
 

1. 代替思考

 
 思考スタイルを知って「逆境力」を高める(その2)で使用した図129 の思い込みワークシートを書くと、A(Activating Event, 出来事)に対してB(Brief, 思考)という考え方をすることが、C(Consequences, 結果)という感情や行動に結びつくことが実感できます。BとCとがセットになっていることもわかると思います。また、思い込みシートをいくつか書いてみると、自分の思考パターンには一定の傾向があることに気づくと思います。これが「楽観性」のときに解説した「説明スタイル」とよばれるものです。
 
 ここで、図131 に示す代替思考ワークシートをやってみてください。まず、左欄に「自分は普段はそう考えないけど、こういうことも考えることができるな」というBをできるだけたくさんリストアップします。ひとりではなかなか出ないときは家族や友人に聞いてみると良いと思います。
 
 次に、リストアップしたBの一つひとつについて、そう考えるとどのような感情が生まれ、どのような行動になるのかというCを右欄に書きます。
 
人的資源マネジメント図131. 代替思考ワークシート
 
 代替思考ワークシートを書いてみると、ひとつの出来事(A)に対して、驚くほどいろいろな思考(B)があることが実感できると思います。この演習は、出来事、思考、結果(感情、行動)というように分けて考えるスキルを身につけ、Aに対していろいろなBとそれに関連するCがあることを頭に刻み込むことを目的としています。
 

2. 思考の罠

 
 次に、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みを紹介したいと思います。
 
人的資源マネジメント図132. 6つの思考の罠
 

(1) 結論にとびつく罠

 
 深く考えずに結論を出してしまうことです。たとえば、声をかけたのに返事がなかったことでその人から嫌われていると考えたり、ひとつのことをダメ出しされただけで自分にはこの仕事は向いていないと考えたりすることです。
 
 このようなときは、出来事に対して結論を出すまでの途中段階を無視していますし、極端な結論になっていることが多いものです。声をかけたのに返事がないのは、こちらの声が聞こえなかったのかもしれないですし、ダメ出しされたのは仕事に対する適性の問題ではなく、確認が足りなかっただけかもしれません。
 
 意識して、広い視野を持ってどのような可能性があるのかを考え、論理的に結論を導いているかどうかを確認することが大切です。
 

(2) 「いつも」の罠

 
 1度のことや数回同じことが続いたことで、いつも同じことになると考えてしまうことです。たとえば、後輩を一緒に飲みに行こうと誘ったのにあっさりと断られたことで、どうせまた誘っても断られるに違いないと決めつけるようなことです。
 
 永久に同じことを繰り返すに違いないと考えてしまうわけですが、相手にも事情があるわけで、いつも同じ状況だとは限りません。その後輩は、断る理由を言いづらくてついそっけない態度になっただけで、別の日には快く誘いに乗るかもしれません。
 
 「いつも」と一般化できるほど事例や証拠は十分なのか、別の可能性もあるのではないかと、意識して考えることが大切です。
 
 次回も、思考のクセやワナを知って強くなるの解説を続けます。
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


関連する他の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:思考のクセやワナを知って強くなる(その2)

 前回のその1に続いて、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みの解説、3項からです。   図132. 6つの思考の罠 &nb...

 前回のその1に続いて、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みの解説、3項からです。   図132. 6つの思考の罠 &nb...


研修効果が低いベテラン管理職

 人材育成の相談を受け、面談をしたり、社内セミナーを受講してもらう時に抵抗感のような壁を感じるのは主にベテランの管理職の方々からです。この方々は大きく二つ...

 人材育成の相談を受け、面談をしたり、社内セミナーを受講してもらう時に抵抗感のような壁を感じるのは主にベテランの管理職の方々からです。この方々は大きく二つ...


『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その7)

   『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場...

   『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場...