プラスチック製品の不具合事例 (その1)

更新日

投稿日

 不具合事例を見る前に、設計者が担保すべき製品の安全性について説明したいと思います。製造物責任法においては、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」は、損害賠償の責任を負うと定められています。すなわち、設計者は欠陥のない製品を設計しなければなりません。欠陥とは以下のように定められています。

【プラスチック製品の不具合事例 連載記事】

 
【欠陥(製造物責任法第二条第2項の要約)】
 
 通常予見される使用形態において、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること。したがって、設計者は「通常予見される使用形態」と「通常有すべき安全性」の二つを理解する必要があります。
 

(1)通常予見される使用形態

 
 一般的に、通常予見される使用形態とは以下の図1のように考えられています。
 
                       製品設計
図1.製品の使用形態と安全確保の必要性
 
 すなわち、「意図される使用」と「予見可能な誤使用」が「通常予見される使用形態」であると考えられています。設計者はこの「通常予見される使用形態」時において、安全性を確保した製品を設計しなければなりません。ただし、それぞれの使用形態の境界線はあいまいであり、時代や社会情勢などによって変化することには注意が必要です。
 

(2)通常有すべき安全性

 
 社会や消費者が期待しているレベルの安全性のこと。非常に抽象的な概念ですが、設計者は自分が設計する製品が、社会や消費者からどの程度の安全性を求められているのかを常に意識する必要があります。
 

(3)プラスチック製品の不具合事例 (その1)

 
事例① 【玩具の破片(1)】
 
                       製品安全
図2.玩具の破片(1)出所:消費者庁HP
 
<不具合内容>
 
玩具にセットされている「トースト」をかじったり、落としたりすると「トースト」自体が割れ、割れた破片を幼児が誤飲する恐れがある。事業者はリコールを実施。
 
<事例から学べること>
 
・乳幼児用玩具は壊れて破片になると誤飲のリスクがあり、リコールに直結する。
 
・乳幼児に使い方を説明することは困難であるため、かじる、踏む、落とす、投げつけるなどの乱暴な行
   為も「予見される誤使用」と判断し、それに耐えうる強度設計や評価を行うべきである。 
 
...

 不具合事例を見る前に、設計者が担保すべき製品の安全性について説明したいと思います。製造物責任法においては、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」は、損害賠償の責任を負うと定められています。すなわち、設計者は欠陥のない製品を設計しなければなりません。欠陥とは以下のように定められています。

【プラスチック製品の不具合事例 連載記事】

 
【欠陥(製造物責任法第二条第2項の要約)】
 
 通常予見される使用形態において、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること。したがって、設計者は「通常予見される使用形態」と「通常有すべき安全性」の二つを理解する必要があります。
 

(1)通常予見される使用形態

 
 一般的に、通常予見される使用形態とは以下の図1のように考えられています。
 
                       製品設計
図1.製品の使用形態と安全確保の必要性
 
 すなわち、「意図される使用」と「予見可能な誤使用」が「通常予見される使用形態」であると考えられています。設計者はこの「通常予見される使用形態」時において、安全性を確保した製品を設計しなければなりません。ただし、それぞれの使用形態の境界線はあいまいであり、時代や社会情勢などによって変化することには注意が必要です。
 

(2)通常有すべき安全性

 
 社会や消費者が期待しているレベルの安全性のこと。非常に抽象的な概念ですが、設計者は自分が設計する製品が、社会や消費者からどの程度の安全性を求められているのかを常に意識する必要があります。
 

(3)プラスチック製品の不具合事例 (その1)

 
事例① 【玩具の破片(1)】
 
                       製品安全
図2.玩具の破片(1)出所:消費者庁HP
 
<不具合内容>
 
玩具にセットされている「トースト」をかじったり、落としたりすると「トースト」自体が割れ、割れた破片を幼児が誤飲する恐れがある。事業者はリコールを実施。
 
<事例から学べること>
 
・乳幼児用玩具は壊れて破片になると誤飲のリスクがあり、リコールに直結する。
 
・乳幼児に使い方を説明することは困難であるため、かじる、踏む、落とす、投げつけるなどの乱暴な行
   為も「予見される誤使用」と判断し、それに耐えうる強度設計や評価を行うべきである。 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

田口 宏之

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。


「安全工学一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
プラスチック製品設計における安全率設定の考え方 安全設計手法 (その9)

  【安全設計手法 連載目次】 1. フェールセーフ 2. フールプルーフ 3. プラスチックのクリープ特性1 4. プラスチック...

  【安全設計手法 連載目次】 1. フェールセーフ 2. フールプルーフ 3. プラスチックのクリープ特性1 4. プラスチック...


日本における安全設計 機能安全(その2)

       【安全設計手法 連載目次】 1. 機能安全(その1)機能安全とは何か 2. 機能安全(...

       【安全設計手法 連載目次】 1. 機能安全(その1)機能安全とは何か 2. 機能安全(...


設計プロセスの中に組み込む リスクアセスメント(その7)

 前回のその6に続いて解説します。リスクアセスメントを設計プロセスに組み込むことについて解説します。   1.リスクアセスメントを設計プロセスに組み込...

 前回のその6に続いて解説します。リスクアセスメントを設計プロセスに組み込むことについて解説します。   1.リスクアセスメントを設計プロセスに組み込...


「安全工学一般」の活用事例

もっと見る
静電気事故防止事例: 作業台はアースをしましょう

♦ ビスから放電 ~ 静電気対策の基本はアース ちょっとの工夫で快適な作業空間に  ある会社さんの作業台で静電気の電撃を感じました。おやっ...

♦ ビスから放電 ~ 静電気対策の基本はアース ちょっとの工夫で快適な作業空間に  ある会社さんの作業台で静電気の電撃を感じました。おやっ...


危険源から生じる労働安全衛生リスク

 建設・工事現場の落下物による事故防止についてですが、ISO 45001:2018(労働安全衛生マネジメントシステム)において「6.1.2.1 危険源...

 建設・工事現場の落下物による事故防止についてですが、ISO 45001:2018(労働安全衛生マネジメントシステム)において「6.1.2.1 危険源...


プラスチック製品の不具合事例 (最終回)

  【プラスチック製品の不具合事例 連載記事】 1. 欠陥とは 2. プラスチックメッキの剥がれ 3. 不具合事例から知る製品安全の...

  【プラスチック製品の不具合事例 連載記事】 1. 欠陥とは 2. プラスチックメッキの剥がれ 3. 不具合事例から知る製品安全の...