設計部門の課題と原因分析(その2)

更新日

投稿日

【設計部門の課題と原因分析 連載目次】

 前回のその1に続いて解説します。工数分析により大きく4つの課題を抱えていることを把握できたので、この設計部門の現状が明確になりました。次のステップは、このような課題を抱えているスタート地点からの登山ルートを決めることです。そのためには、まず、観測できた課題一つひとつを分析して課題の根本原因を明らかにし、次に、その原因を除去するための対策を検討することになります。

 最初の課題、「(a) 繰り返し実施する試作が同時作業となっており、設計の時期に直前の試作の評価を並行して実施している」をとりあげ、実際にやってみましょう。ポイントは、計画の問題なのか、実績(進捗上)の問題なのかを切り分けることです。

 図21は「アクティビティ重心」の推移を示したものです。アクティビティ重心とは、プロジェクト(プロジェクトの中の任意のチームでもかまいません)の活動の重心が開発工程上のどこにあるのかを示したもので、図21は、その時間推移をあらわしたものです。縦軸は開発工程になっており、構想から、設計、試作製造、評価を経て、最終的に製造移管で設計部門の開発業務は完了です。
 
                R&D
                    図21.計画と実績のアクティビティ重心推移
 
 このグラフを見ると、計画では、設計から評価のサイクルを大きな波のように試作のたびに繰り返し、最終的に製造移管が完了することがわかります。大きな波になっているのは、試作ごとに設計、試作製造、評価を逐次的に実施する計画になっているということです。

 しかし、実績は、計画に較べて波打っていないことがわかります。これは、設計、試作製造、評価が重なってしまい、試作の切れ目がはっきりしない開発になっていることをあらわしています。課題 (a) がこのグラフでも確認できます。したがって、計画の問題ではなく、進捗上の問題であることがわかります。このような分析をしなくても、開発日程表(スケジ...

【設計部門の課題と原因分析 連載目次】

 前回のその1に続いて解説します。工数分析により大きく4つの課題を抱えていることを把握できたので、この設計部門の現状が明確になりました。次のステップは、このような課題を抱えているスタート地点からの登山ルートを決めることです。そのためには、まず、観測できた課題一つひとつを分析して課題の根本原因を明らかにし、次に、その原因を除去するための対策を検討することになります。

 最初の課題、「(a) 繰り返し実施する試作が同時作業となっており、設計の時期に直前の試作の評価を並行して実施している」をとりあげ、実際にやってみましょう。ポイントは、計画の問題なのか、実績(進捗上)の問題なのかを切り分けることです。

 図21は「アクティビティ重心」の推移を示したものです。アクティビティ重心とは、プロジェクト(プロジェクトの中の任意のチームでもかまいません)の活動の重心が開発工程上のどこにあるのかを示したもので、図21は、その時間推移をあらわしたものです。縦軸は開発工程になっており、構想から、設計、試作製造、評価を経て、最終的に製造移管で設計部門の開発業務は完了です。
 
                R&D
                    図21.計画と実績のアクティビティ重心推移
 
 このグラフを見ると、計画では、設計から評価のサイクルを大きな波のように試作のたびに繰り返し、最終的に製造移管が完了することがわかります。大きな波になっているのは、試作ごとに設計、試作製造、評価を逐次的に実施する計画になっているということです。

 しかし、実績は、計画に較べて波打っていないことがわかります。これは、設計、試作製造、評価が重なってしまい、試作の切れ目がはっきりしない開発になっていることをあらわしています。課題 (a) がこのグラフでも確認できます。したがって、計画の問題ではなく、進捗上の問題であることがわかります。このような分析をしなくても、開発日程表(スケジュール)を確認すればわかることなのですが、図21のような進捗管理をしていれば、簡単に計画と実績の乖離を把握することができます。
 
 次回、その3では、進捗上の問題の原因分析を解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術企業の高収益化: 技術マーケティングとは

◆ 技術マーケティング  技術マーケティングとは、単なる営業を指すのではありません。「技術プラットフォーム」に関する記事では、顧客からスペックを引き...

◆ 技術マーケティング  技術マーケティングとは、単なる営業を指すのではありません。「技術プラットフォーム」に関する記事では、顧客からスペックを引き...


目指すべき開発体制とは【連載記事紹介】

  目指すべき開発体制の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆目指すべき開発体制 「擦り合わせ型」の文化は、日本企業...

  目指すべき開発体制の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆目指すべき開発体制 「擦り合わせ型」の文化は、日本企業...


「そのSTOP判断、本当に必要ですか?」~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その36)

   【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「...

   【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ソフト開発計画の作成方法 プロジェクト管理の仕組み (その5)

 前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...

 前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...


作業要素の進捗分析1 プロジェクト管理の仕組み (その18)

 連載で、進捗管理に利用する基本メトリクスセット(図41)について解説を続けています。前回はソフトウェア開発における成果物メトリクスについて解説しました。...

 連載で、進捗管理に利用する基本メトリクスセット(図41)について解説を続けています。前回はソフトウェア開発における成果物メトリクスについて解説しました。...


‐顧客の難しい要求に取り組む ‐  製品・技術開発力強化策の事例(その2)

 前回の事例その1に続いて解説します。顧客から難しい要求や相談があったとき、意欲的にその問題に取り組む企業がある。その取組みから他社では出来ないよ...

 前回の事例その1に続いて解説します。顧客から難しい要求や相談があったとき、意欲的にその問題に取り組む企業がある。その取組みから他社では出来ないよ...