グローバル化の限界、現場技術者の犠牲とは

 
国際
電気や機械に代表される日本の製造業は 1980年代からグローバル化(国際化)を進めてきました。ただ、2000年頃を境にその中身は大きく変化しています。1980年代は欧米との貿易摩擦に対応するのが目的で消極的な姿勢だったのですが、2000年頃からは世界経済の一体化が進む中で国際競争が厳しくなり、生き残りのために積極的にグローバル化を進めるようになりました。グローバル化は、生産性や効率を追求して他社に対する競争優位性を確保する必要があるということです。
 
 グローバル化は大企業だけではなく、中小企業においても避けては通れない潮流です。取引先の大企業に引っ張られて海外に出る場合もあれば、自らがコスト低減やマーケット拡大を目指して海外に出る場合もありますが、いずれにしても、生産性や効率、つまり、利益を追求した攻めのグローバル化を目指さざるをえない状況です。
 
 図1をご覧ください。製造業における海外事業規模の推移を示しているグラフです。海外事業の売上高は 2000年度以降伸びており、毎年約10% 増加していることがわかります。そして驚くべきことに、海外事業の経常利益は毎年20 %近くも伸びているのです。利益を重視した攻めのグローバル化が進展していることがわかります。
 
                               
国際化
                           図1.製造業海外現地法人事業実績
 
 利益重視の攻めのグローバル化には、開発・生産・販売・調達・物流などの幅広い領域で従来の国内中心業務を変革することが要求されるため、製造業各社はその要求に応えるべく、あらゆる分野で仕組み改革を実施しています。しかしながら、開発現場にコンサルタントとして入って感じるのは、「開発」はグローバル化の仕組みがもっとも遅れているということです。
 
 開発現場では常に開発生産性や開発効率の向上に取り組んでいますが、それが、新しい仕組みを構築するのではなく、技術者個人に対する負担を増やしているだけになっているのです。
 
 技術者は優秀で素直ですから、個人の力でその要求に応えていますが、技術者に同じ期待をするのはそろそろ限界ではないかと感じます。実際、開発現場では精神的、肉体的に疲弊した技術者が増えています。メンタルヘルスの取り組みが活発になっていることもその現れだと思います。
 
 しかし、グローバル化の流れは変わることはないでしょう。したがって、これからのグローバル化に必要なのは、優秀な技術者個人に負担をかけるのではなく、きちんとした開発の仕組みを構築することです。そうしなければ、今後、攻めのグローバル化を進化・進展させることは難しいと思います。繰り返しますが、技術者に負担をかけるのは限界に近づいています。
 
 新しい開発の仕組み構築には、開発(とくに設計)の現状を正しく把握する必要があります。しかし、大量の専門用語や技術者の独善的な姿勢が製品開発をブラックボックスにしているため、開発(設計)の実態把握を難しくしているのが現実です。少々言い過ぎかもしれませんが。
 
 そこで私は、製造移管(工場引継)を詳しく調査することをお勧めします。製造移管(工場引継)は、設計したものを工場で生産するために、製造に必要な設計データ一式を引き渡す作業です。そして、設計部門(技術)と製造部門(工場)の両方が関わりますから、設計データだけでなくそれまでに実施した設計業務の良否を第三者的に観測できるイベントです。また、製造移管は業務規定や手順書がしっかりと文書化されていますから、計画(規定)と実際の差異を把握しやすいのです。
 
 次回は、製造移管の現状を整理して、グローバル化に対応した仕組みがどのようなものになるのかをご紹介したいと思います。
 

この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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