スペック追及は技術開発の目標ではない

更新日

投稿日

 スペック技術開発には必ず目標があります。すなわち、いつまでに何を達成するかを決めて技術開発プロジェクトは進められます。技術開発前の探索プロジェクト以外は、できるだけ明確に目標を設定して進めるということがプロジェクトマネジメントの基本とされています。そこで、多くのプロジェクトでは定量的な目標が設定されます。
 
 例えば、従来比効率◯◯%向上とか、◯◯%小型化とか、◯◯%原価削減などです。すなわち、製品のスペックを向上させるための目標です。
 
 明確な定量目標を設定することが重要であることは明らかです。明確な目標は、プロジェクトチームのメンバーのベクトルを揃え、一体感を高めます。また、知恵を集めてブレークスルーすべき課題を具体化し、力を集中させることに繋がります。また、プロジェクトチーム周辺の関係者や上位のマネジャーの理解を得やすくなります。
 

1.その目標は、顧客価値に貢献しているのか

 
 問題なのは、それが製品スペックだけでいいのか、ということです。私が日頃コンサル現場で目にする技術開発プロジェクトでは、「目標とするスペックを達成することで、どのような顧客価値を生み出すのか」という最も重要な技術開発の目標が曖昧なまま、スペック目標だけが設定されて進められているケースが多くあります。
 
 スペック目標の多くは、「他社の動きと今後の技術トレンドから考えて、◯◯年後に、◯◯のスペックを実現しなければならない」といったロジックにもとづいて設定されており、「どのお客様に対して、どのような価値を提供し、その価値は他社に対してどのような優位性・差別性を持つのか」というロジックでは語られていません。すなわち、顧客価値が目標になっていないのです。
 

2.顧客価値の創造という目標

 
  技術開発の目標として徹底的に議論し、明確にしなければならないのは、技術トレンドの予測や競合他社との比較から設定するスペック目標ではありません。「我々は誰をお客様として設定するのか」「そのお客様に提供する価値は何か」「その提供価値は競合他社に対してどのような優位性・差別性を持つのか」という顧客価値の創造という目標です。
 
 そして、顧客価値目標を具体化したうえで、達成すべきスペックは何かが明確にされる必要があります。市場がダイ...
 スペック技術開発には必ず目標があります。すなわち、いつまでに何を達成するかを決めて技術開発プロジェクトは進められます。技術開発前の探索プロジェクト以外は、できるだけ明確に目標を設定して進めるということがプロジェクトマネジメントの基本とされています。そこで、多くのプロジェクトでは定量的な目標が設定されます。
 
 例えば、従来比効率◯◯%向上とか、◯◯%小型化とか、◯◯%原価削減などです。すなわち、製品のスペックを向上させるための目標です。
 
 明確な定量目標を設定することが重要であることは明らかです。明確な目標は、プロジェクトチームのメンバーのベクトルを揃え、一体感を高めます。また、知恵を集めてブレークスルーすべき課題を具体化し、力を集中させることに繋がります。また、プロジェクトチーム周辺の関係者や上位のマネジャーの理解を得やすくなります。
 

1.その目標は、顧客価値に貢献しているのか

 
 問題なのは、それが製品スペックだけでいいのか、ということです。私が日頃コンサル現場で目にする技術開発プロジェクトでは、「目標とするスペックを達成することで、どのような顧客価値を生み出すのか」という最も重要な技術開発の目標が曖昧なまま、スペック目標だけが設定されて進められているケースが多くあります。
 
 スペック目標の多くは、「他社の動きと今後の技術トレンドから考えて、◯◯年後に、◯◯のスペックを実現しなければならない」といったロジックにもとづいて設定されており、「どのお客様に対して、どのような価値を提供し、その価値は他社に対してどのような優位性・差別性を持つのか」というロジックでは語られていません。すなわち、顧客価値が目標になっていないのです。
 

2.顧客価値の創造という目標

 
  技術開発の目標として徹底的に議論し、明確にしなければならないのは、技術トレンドの予測や競合他社との比較から設定するスペック目標ではありません。「我々は誰をお客様として設定するのか」「そのお客様に提供する価値は何か」「その提供価値は競合他社に対してどのような優位性・差別性を持つのか」という顧客価値の創造という目標です。
 
 そして、顧客価値目標を具体化したうえで、達成すべきスペックは何かが明確にされる必要があります。市場がダイナミックに変化し、コスト競争力の強い新興国企業が興隆するなかで、日本企業が横並びでスペック競争を繰り広げ、大量生産によるコスト競争で勝負するというビジネスで生きていける時代は終わりかけていると思います。顧客価値を起点に、他社とは異なる軸で技術開発の目標を生み出せるか、これからのR&Dが磨いていくべき重要な技術力であると考えます。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

平木 肇

『テクノロジストの知恵を新たな価値を生み出す力に変える』社会を変える新たな価値創造へ向けて、技術の進化と人材の開発に挑戦するものづくり企業を全力で支援します。

『テクノロジストの知恵を新たな価値を生み出す力に変える』社会を変える新たな価値創造へ向けて、技術の進化と人材の開発に挑戦するものづくり企業を全力で支援します。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
オープンイノベーションの戦略性  研究テーマの多様な情報源(その16)

    1.オープンイノベーションが実行されない理由 ◆関連解説『技術マネジメントとは』  前回のその15に続いて、解説し...

    1.オープンイノベーションが実行されない理由 ◆関連解説『技術マネジメントとは』  前回のその15に続いて、解説し...


関係性の種類、並列とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その96)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記(5)の並列について解説します。 ◆関連...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記(5)の並列について解説します。 ◆関連...


影響を当える関係とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その93)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記の「関係性の種類」の中の「(3)包含」につ...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回は、下記の「関係性の種類」の中の「(3)包含」につ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ピンチをチャンスに変えるアイディアを模索する

1. 自粛ムード漂う経済環境  2020年3月、新型コロナウイルスの感染が拡大し、鉄道各社によるマスクと咳エチケットの呼び掛けが随時車内アナウンスさ...

1. 自粛ムード漂う経済環境  2020年3月、新型コロナウイルスの感染が拡大し、鉄道各社によるマスクと咳エチケットの呼び掛けが随時車内アナウンスさ...


開発生産性とは プロジェクト管理の仕組み (その17)

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...


「調整」の仕組み 擦り合わせ型開発 基本の仕組み (その1)

       【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わ...

       【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わ...