動作分析を通じた現場作業標準化のポイント

投稿日

動作解析

 今回は改善の基本、「標準化」に取り組んでいる現場で、うまくいっている事例とそうでない事例を解説します。

動作解析

 図1.「OTRS」コンセプト

 OTRSは、生産現場における作業の効率化や業務改善をすすめるソフトウェアです。「OTRS」は現場からもマネージメントからも改善できる標準ツールです。多くの企業様が「OTRS」で取り組まれていることに、コスト削減への取り組みがあります。

 コスト削減にはさまざまなアプローチ手法がありますが、重要な要素であり、取り組んでいる現場の多いアプローチ手法に「標準化」があります。

 標準化と聞くと、どのようなイメージがありますか?

  • 「人は機械ではないので、標準化に抵抗がある。」
  • 「標準化はうちの現場では無理。人が動く以上ばらつきが発生するのは仕方ない。」
  • 「重要なのは分かるケド……そんなのやっている内に作るものが変わってしまう。」

 など耳にすることもあります。

 ここでお伝えしたい標準化は、マニュアルでがんじがらめにして窮屈な作業環境を作るというものではなく、むしろ改定することを前提とした標準を作り続ける環境を作るということです。
また、その改定に時間をかけない点もポイントです。

 一度決めた標準を改定するのは大変だといわれる現場もあれば、当然に標準を改定し続けている現場もあります。筆者が訪問するクライアント様の中で標準の改定がうまくいっている現場は、概ね次の5つのポイントを押さえています。

  •  標準表を作成(現場を観測し、記録する)
  •  標準表を共有し、実行(現場教育し、理解に努める)
  •  標準と実作業とを比較(課題の「見える化」、有効方法の発見)
  •  仮想標準の策定(課題解消する方法、環境)
  •  標準の改定(1に戻る)

 「OTRS」の使われ方としては次のようになります。

  •  ビデオ撮影し、「OTRS」分析する。(要素分割する。カン・コツコメントを入力する。)
  •  分析結果を再生し、作業教育を行う。
  •  現状動作と作成標準とを比較再生し、課題抽出を行う。(課題動作、改善動作のコメントを入力する)
  •  ムダ取り、要素組み替えシミュレーションを行う。(改善動作コメントを参考にする)
  •  シミュレーション結果を現場で試行し、撮影・分析する。

 では、うまくいかない現場はどこに問題があるのでしょうか。

 ポイントや取り組みは間違っていない(むしろしっかりしている)が、「時間がかかりすぎている」点にあります。

 標準表を作成するために表計算ソフトを使って写真や文字を入れたり、プレゼンテーションソフトでカラフルに分かりやすく行われていたりする現場もありますが、うまくいっている会社のほとんどが「OTRS」からボタン一つで出力されています。

動作解析

図2.出力した標準表の例(動画・コメント表示タイプ)

 分かりやすい表現だと「標準表を作りこまない」ということです。

 要点を押さえた標準表を短い時間で作ることが、現場での継続的な標準改定のコツと考えます。

 このように、標準を改定し続ける理由はなんでしょうか?

 コスト削減は大前提ですが、標準の改定を続けるうちにほとんどの現場から「作業が楽になった」という声が出てきています。当たり前の話かもしれませんが、どのような現場でも作業は肉体的な疲労(作業動作)と精神的な疲労(集中、注意、緊張)とを伴います。標準の改定(すなわちカイゼン)はこのような疲...

動作解析

 今回は改善の基本、「標準化」に取り組んでいる現場で、うまくいっている事例とそうでない事例を解説します。

動作解析

 図1.「OTRS」コンセプト

 OTRSは、生産現場における作業の効率化や業務改善をすすめるソフトウェアです。「OTRS」は現場からもマネージメントからも改善できる標準ツールです。多くの企業様が「OTRS」で取り組まれていることに、コスト削減への取り組みがあります。

 コスト削減にはさまざまなアプローチ手法がありますが、重要な要素であり、取り組んでいる現場の多いアプローチ手法に「標準化」があります。

 標準化と聞くと、どのようなイメージがありますか?

  • 「人は機械ではないので、標準化に抵抗がある。」
  • 「標準化はうちの現場では無理。人が動く以上ばらつきが発生するのは仕方ない。」
  • 「重要なのは分かるケド……そんなのやっている内に作るものが変わってしまう。」

 など耳にすることもあります。

 ここでお伝えしたい標準化は、マニュアルでがんじがらめにして窮屈な作業環境を作るというものではなく、むしろ改定することを前提とした標準を作り続ける環境を作るということです。
また、その改定に時間をかけない点もポイントです。

 一度決めた標準を改定するのは大変だといわれる現場もあれば、当然に標準を改定し続けている現場もあります。筆者が訪問するクライアント様の中で標準の改定がうまくいっている現場は、概ね次の5つのポイントを押さえています。

  •  標準表を作成(現場を観測し、記録する)
  •  標準表を共有し、実行(現場教育し、理解に努める)
  •  標準と実作業とを比較(課題の「見える化」、有効方法の発見)
  •  仮想標準の策定(課題解消する方法、環境)
  •  標準の改定(1に戻る)

 「OTRS」の使われ方としては次のようになります。

  •  ビデオ撮影し、「OTRS」分析する。(要素分割する。カン・コツコメントを入力する。)
  •  分析結果を再生し、作業教育を行う。
  •  現状動作と作成標準とを比較再生し、課題抽出を行う。(課題動作、改善動作のコメントを入力する)
  •  ムダ取り、要素組み替えシミュレーションを行う。(改善動作コメントを参考にする)
  •  シミュレーション結果を現場で試行し、撮影・分析する。

 では、うまくいかない現場はどこに問題があるのでしょうか。

 ポイントや取り組みは間違っていない(むしろしっかりしている)が、「時間がかかりすぎている」点にあります。

 標準表を作成するために表計算ソフトを使って写真や文字を入れたり、プレゼンテーションソフトでカラフルに分かりやすく行われていたりする現場もありますが、うまくいっている会社のほとんどが「OTRS」からボタン一つで出力されています。

動作解析

図2.出力した標準表の例(動画・コメント表示タイプ)

 分かりやすい表現だと「標準表を作りこまない」ということです。

 要点を押さえた標準表を短い時間で作ることが、現場での継続的な標準改定のコツと考えます。

 このように、標準を改定し続ける理由はなんでしょうか?

 コスト削減は大前提ですが、標準の改定を続けるうちにほとんどの現場から「作業が楽になった」という声が出てきています。当たり前の話かもしれませんが、どのような現場でも作業は肉体的な疲労(作業動作)と精神的な疲労(集中、注意、緊張)とを伴います。標準の改定(すなわちカイゼン)はこのような疲労を低減させることに直結していますし、疲労が少なくなれば「作業が楽になった」ということにもうなずけます。

 また、標準を定めることで標準から外れた作業要素を「見える化」できますので、問題の早期発見ができ、監督者によるポイントを押さえた指導ができることも作業を楽にする要素となっています。

 このことは技術伝承をスムーズにすることにもつながりますし、生産技術のナレッジ化(資産化)にもつながることです。

 標準化と聞くと大変そうですが、現場作業の“現在の”基準ととらえてみてはいかがでしょうか?今回紹介したケースを参考に、みなさまの現場改善が進むことを願っています。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


「生産工学」の他のキーワード解説記事

もっと見る
論より知恵、知恵は図面へ メカトロ設計(その2)

【連載目次】 1. メカトロ設計(その1) 一寸先で擦り合わせ 2. メカトロ設計(その2) 論より知恵、知恵は図面へ ...

【連載目次】 1. メカトロ設計(その1) 一寸先で擦り合わせ 2. メカトロ設計(その2) 論より知恵、知恵は図面へ ...


ロボット導入のメリット、デメリット

   作業の大半を手作業で行っている工場で、人手不足対応として、ロボットの導入を検討した場合、ロボットを導入すると、どのようなメリットがあるの...

   作業の大半を手作業で行っている工場で、人手不足対応として、ロボットの導入を検討した場合、ロボットを導入すると、どのようなメリットがあるの...


ロボットSIerとは ロボットシステム構築の流れとは(その1)

 今回は、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを対象にした同システム構築の流れを解説します。 1. 経営者から導入に向けた事前検討を始め、実...

 今回は、自社工場にロボットシステムを導入し、稼働することを対象にした同システム構築の流れを解説します。 1. 経営者から導入に向けた事前検討を始め、実...


「生産工学」の活用事例

もっと見る
国際プラスチックフェアー(IPF JAPAN 2017)展示会レポート(その4)

 前回のその3に続いて解説します。   5. 後付け式射出ユニットと多材成形  通常の成形機に乗せた金型に第二の射出ユニットを取り付けて多色成形...

 前回のその3に続いて解説します。   5. 後付け式射出ユニットと多材成形  通常の成形機に乗せた金型に第二の射出ユニットを取り付けて多色成形...


最終回 国際プラスチックフェアー(IPF JAPAN 2017)展示会レポート(その9)

 前回のその8に続いて解説します。   8. 加飾技術(その2) (3) スパッタ  東芝機械エンジニアリングのブースでは射出成形機の横に...

 前回のその8に続いて解説します。   8. 加飾技術(その2) (3) スパッタ  東芝機械エンジニアリングのブースでは射出成形機の横に...


動作解析事例「混流生産組み立てラインでの作業改善」

   今回は価値のない作業の排除「ムダとり」の事例を、結果だけではなく取り組み方も含めて紹介します。現場は、自動車メーカー(国内:混流生産組み...

   今回は価値のない作業の排除「ムダとり」の事例を、結果だけではなく取り組み方も含めて紹介します。現場は、自動車メーカー(国内:混流生産組み...