金型・部品加工メーカーの5S (その1)

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 今回から、私がコンサルティングの際によく行う、クライアント企業の工場現場や事務所を見て回る「5Sパトロール」を、記事上で仮想的に行い、5Sの解説とします。実際にコンサルティングの際には、具体的に良くないところを指摘し、なぜ良くないのかセオリーからアドバイスし、あるべき状態はどのようにするのか指導しています。金型メーカーや機械加工メーカーで実際によく見かける事例をいくつか取り上げ、5Sの基本に触れてみます。早速、仮想的に工場を見て回り、5Sが出来ていないところを見ていきましょう。では、最初の事例から見ていきます。
 

1. 安全面から見た事例

 
   5S
 
 まず、金型・部品加工メーカーの工場における5Sの基本中の基本です。これらは何が良くないのでしょうか?
 
 問題点は2つあります。一つは、工場の床に鉄の材料を直置きしている点です。これにより、二度と消えないコンクリートへの掘り込みキズが発生してしまいます。過去のコンサルティングでは、床のキズを埋める修復を一緒にしたこともありますが、修復したとしても色の違いでどうしてもキズがあった箇所は目立ちますし、直すのに手間もかかります。やはり、材料の下に木の角材をひくなどをして、直置きは絶対にやらないことです(下図参照)。
 
   5S
 
 もう一点は何でしょうか?
 
 それは、重たい鉄の材料を、斜めに立てかけていることです。これにより、もし足で蹴ってしまったり、ひっかけたりすると、自分の方に倒れてきてケガの原因になります。置いた本人は、完全に寝かせた状態にすると後で運びにくくなるため、立てかけていると思われますが、工場の安全管理面から見ると、非常に危険な状態です。どうしても立てた状態にしたい場合は、本棚にある本立てを使って立てるようなイメージで、絶対に倒れない状態にして保管しましょう。
 

2. 品質面からの事例

 
 5S
 
 どちらもツッコミどころは満載ではありますが、このWEB企画は、「金型・部品加工メーカーの5S基礎のキソ」ですので、まずは基本中の基本から見ていきましょう。どちらも共通して良くないのは、金属という硬いものどうしが触れ合っている状態になっていることで、キズがつきやすい状態になっていることです。しかも一枚目の写真では、フライス加工機のテーブル上に、工具やツールを直置きしており、テーブルにキズがつきやすく、非常に良くない状態です。
 
 また、2枚目の写真では、精度の保持が必要なコレットどうしが、キャビネットの上で揺れるたびに、こすれ合う状態になっていて、これも非常に良くない保管状態になっています。また、ドリルそのものも、ドリルどうしで接触する状態で保管されており、すぐにキズが付いてしまう状態になっています。
 
 したがって、硬いものどうしが直接触れ合うことがない状態で保管することが望ましく、例えば、ミーリングチャックにチャッキ...
 
 今回から、私がコンサルティングの際によく行う、クライアント企業の工場現場や事務所を見て回る「5Sパトロール」を、記事上で仮想的に行い、5Sの解説とします。実際にコンサルティングの際には、具体的に良くないところを指摘し、なぜ良くないのかセオリーからアドバイスし、あるべき状態はどのようにするのか指導しています。金型メーカーや機械加工メーカーで実際によく見かける事例をいくつか取り上げ、5Sの基本に触れてみます。早速、仮想的に工場を見て回り、5Sが出来ていないところを見ていきましょう。では、最初の事例から見ていきます。
 

1. 安全面から見た事例

 
   5S
 
 まず、金型・部品加工メーカーの工場における5Sの基本中の基本です。これらは何が良くないのでしょうか?
 
 問題点は2つあります。一つは、工場の床に鉄の材料を直置きしている点です。これにより、二度と消えないコンクリートへの掘り込みキズが発生してしまいます。過去のコンサルティングでは、床のキズを埋める修復を一緒にしたこともありますが、修復したとしても色の違いでどうしてもキズがあった箇所は目立ちますし、直すのに手間もかかります。やはり、材料の下に木の角材をひくなどをして、直置きは絶対にやらないことです(下図参照)。
 
   5S
 
 もう一点は何でしょうか?
 
 それは、重たい鉄の材料を、斜めに立てかけていることです。これにより、もし足で蹴ってしまったり、ひっかけたりすると、自分の方に倒れてきてケガの原因になります。置いた本人は、完全に寝かせた状態にすると後で運びにくくなるため、立てかけていると思われますが、工場の安全管理面から見ると、非常に危険な状態です。どうしても立てた状態にしたい場合は、本棚にある本立てを使って立てるようなイメージで、絶対に倒れない状態にして保管しましょう。
 

2. 品質面からの事例

 
 5S
 
 どちらもツッコミどころは満載ではありますが、このWEB企画は、「金型・部品加工メーカーの5S基礎のキソ」ですので、まずは基本中の基本から見ていきましょう。どちらも共通して良くないのは、金属という硬いものどうしが触れ合っている状態になっていることで、キズがつきやすい状態になっていることです。しかも一枚目の写真では、フライス加工機のテーブル上に、工具やツールを直置きしており、テーブルにキズがつきやすく、非常に良くない状態です。
 
 また、2枚目の写真では、精度の保持が必要なコレットどうしが、キャビネットの上で揺れるたびに、こすれ合う状態になっていて、これも非常に良くない保管状態になっています。また、ドリルそのものも、ドリルどうしで接触する状態で保管されており、すぐにキズが付いてしまう状態になっています。
 
 したがって、硬いものどうしが直接触れ合うことがない状態で保管することが望ましく、例えば、ミーリングチャックにチャッキングされた工具はツールワゴンに入れて保管する(下図参照)チャッキングされていない単体でのドリルやエンドミルの保管については、キャビネットの中でプラスチックの波板の上に並べるなどの保管方法が良いです。
 
   5S
 
 今回、2つの事例を見てもらいました。次回からはおさらいも含め、他の事例を見ていきながら、そこで必要となるセオリーにも触れていきます。
 

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この記事の著者

村上 英樹

金型・部品加工業専門コンサルティングです!販路開拓・生産改善・外注費削減の3つを支援するトライアングル支援パッケージ、技術を起点とする新しい経営コンサルタント

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