見積精度を向上させる 荷主と物流事業者の関係(その4)

投稿日

 
  SCM
 
 物流事業者は見積もりを作成する際に、やや大雑把すぎる気がします。それで十分な利益が出ればよいのですが、下手すると赤字で受注してしまうことがあります。同じ距離の輸送であっても条件次第で価格は変えるべきです。時刻指定なしでその日の内に到着すればよい場合と、時刻指定で運ぶ場合とでは明らかにコストに差が出ます。
 
 倉庫内作業も同様です。一日に同じ物量を出荷する場合でも、パレット単位での出庫で出荷する場合と、ケースやピースで出庫して出荷する場合とではコストが大きく異なります。作業単位に時間値を設定して見積につなげていればよいのですが、そこを手を抜いてしまうと後で痛い目に会います。
 
 荷主も物流事業者と取引を開始する際には、できるだけ詳細な物流仕様書を作成するべきでしょう。どこからどこまでおおよそどれくらいの物流を運ぶという、粗い仕様書では満足いく物流価格を提示されることはないと思われます。
 
 荷主からの物流仕様提示がラフなものであれば、物流事業者は次のように考えます。後からもっと付加的な作業が出てくるのではないか。後から物量が大きく変動するのではないか。後から分割輸送が増えるのではないか。
 
 このように物流事業者側が疑心暗鬼になるのも無理ありません。今までの取引も粗々の条件提示で痛い目に会っているからです。だとすると物流事業者側はどのような対応をするのでしょうか。それは「盛った見積金額」を提示するということです。
 
 この「盛り」はリスク対応の盛りです。後から考えられなかったような条件変更があると大変なので、一定のリスク分を価格に乗せるのです。もちろん、荷主の提示した条件に疑問な点があれば、それを質問してクリアにしておくことは...
 
  SCM
 
 物流事業者は見積もりを作成する際に、やや大雑把すぎる気がします。それで十分な利益が出ればよいのですが、下手すると赤字で受注してしまうことがあります。同じ距離の輸送であっても条件次第で価格は変えるべきです。時刻指定なしでその日の内に到着すればよい場合と、時刻指定で運ぶ場合とでは明らかにコストに差が出ます。
 
 倉庫内作業も同様です。一日に同じ物量を出荷する場合でも、パレット単位での出庫で出荷する場合と、ケースやピースで出庫して出荷する場合とではコストが大きく異なります。作業単位に時間値を設定して見積につなげていればよいのですが、そこを手を抜いてしまうと後で痛い目に会います。
 
 荷主も物流事業者と取引を開始する際には、できるだけ詳細な物流仕様書を作成するべきでしょう。どこからどこまでおおよそどれくらいの物流を運ぶという、粗い仕様書では満足いく物流価格を提示されることはないと思われます。
 
 荷主からの物流仕様提示がラフなものであれば、物流事業者は次のように考えます。後からもっと付加的な作業が出てくるのではないか。後から物量が大きく変動するのではないか。後から分割輸送が増えるのではないか。
 
 このように物流事業者側が疑心暗鬼になるのも無理ありません。今までの取引も粗々の条件提示で痛い目に会っているからです。だとすると物流事業者側はどのような対応をするのでしょうか。それは「盛った見積金額」を提示するということです。
 
 この「盛り」はリスク対応の盛りです。後から考えられなかったような条件変更があると大変なので、一定のリスク分を価格に乗せるのです。もちろん、荷主の提示した条件に疑問な点があれば、それを質問してクリアにしておくことは物流事業者の義務だと思います。
 
 ただし、質問しても荷主から明確な答が返ってこない場合は一定のリスク分を乗せるのはやむを得ない措置であると考えられます。荷主側は物流のプロではありませんので、物流事業者から自分たちの欲しい情報をリストにして荷主に渡すことも一つの方策です。見積精度を向上させるためにはお互い一定の努力が必要になるということです。
 
 次回に続きます。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
SCMにおけるブルウィップ効果、需要の変動が川上の工程へ増幅する

1. ブルウィップ効果とは  ブルウィップ効果は、川下の需要変動が川上にいくほど増幅していく需要変動増幅現象です。この現象は、フォレスター効果として19...

1. ブルウィップ効果とは  ブルウィップ効果は、川下の需要変動が川上にいくほど増幅していく需要変動増幅現象です。この現象は、フォレスター効果として19...


サプライチェーンマネジメントにおけるERP -ソフトウェアの本質的な方向性-

 ERP(エンタープライズ・リソース・プラニング)を直訳すると、経営資源計画システムとなります。しかし日本では、統合業務パッケージと訳された言葉が使われて...

 ERP(エンタープライズ・リソース・プラニング)を直訳すると、経営資源計画システムとなります。しかし日本では、統合業務パッケージと訳された言葉が使われて...


輸送改善はなぜ『おいしい』のか 儲ける輸送改善 (その1)

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流現場に出かけよう 物流問題の解決は3現主義で(その1)

        物流現場の問題は物流現場で改善していくことは当たり前のことだと思います。物流現場で発生している問題を事務所で検討することはあまり意味...

        物流現場の問題は物流現場で改善していくことは当たり前のことだと思います。物流現場で発生している問題を事務所で検討することはあまり意味...


もの・人・お金の管理 物流センターマネジメント(その1)

◆ WMS(Warehouse management system)のカバー領域  物流センターで必要となるマネジメントとは何でしょうか。顧客の製品...

◆ WMS(Warehouse management system)のカバー領域  物流センターで必要となるマネジメントとは何でしょうか。顧客の製品...


物流仕様書 物流会社と荷主会社の関係性(その2)

       (1) 物流仕様書の重要性  荷主会社は自社が欲する物流サービスについてしっかりと物流会社に伝えることが求められます。伝えていな...

       (1) 物流仕様書の重要性  荷主会社は自社が欲する物流サービスについてしっかりと物流会社に伝えることが求められます。伝えていな...