中小規模組織でのプロジェクト管理システムの課題(その2)

 前回のその1に続いて解説します。
 

2. プロジェクト管理の仕組みにおける真の問題

 前回のその1で、プロジェクト管理のシステム環境について考察しましたが、問題を解決するためにシステム環境をレベルアップしてもまた新たな問題を抱えてしまうと言えるでしょう。これは、プロジェクト管理の仕組み全体についても同様です。新しい仕組みを導入しても常に問題を抱えることとなり、現場ではそれに対応するために様々な工夫を行っています。
 
 このような状況下で真の問題となるのは、仕組みの問題に対処する現場での工夫や努力が、何度も繰り返されることです。現場では、プロジェクトの最中でも、プロジェクトが変わっても、部署が変わっても、システムを含めた仕組みの足りないところを、時間と手間をかけて何度も繰り返し補っています。そして、プロジェクトのリーダーやメンバーは、ムダやムリだとわかっているその場限りの対処を何度も繰り返しやらされることにより、疲れ切ってしまうのです。MS Project の場合であれば、次のような現場の声をよく聞きます。
 
「もともと適当な日程なのに細かな入力や設定を要求される」
「自動的にタスクが動いたりして、何をやるにしても時間がかかる」
「リリースに合わせるために机上で精緻につじつま合わせしているだけ」
「作ったファイルを結合したり、分割したりするのは手作業で大変なことになる」
「進捗見たいだけなのに覚えることがたくさん」「この部分だけ見たいのに」
 
 現場では繰り返し、システムや仕組みの足りないところを手作業で(仕方なく)補っています。
 

3. プロジェクト管理の仕組みに必要な2つの思想

 このようなムダやムリになるとわかっているその場限りの対応が真の問題だととらえて、それを極力なくすための思想を仕組みに組み入れることが必要である。そのための基本思想が次の2つです。
 
 現場に合ったミニマル運用
 プロジェクト管理の資産化
 
 プロジェクト管理の資産化とは、やってことがムダにならないということです。一つひとつのプロジェクトでやったことが活用できる形で記録され、そのプロジェクト記録はプロジェクトが終わるたびに積み上がっていくのです。一つひとつが活用できる形になっているため、積み上がれば積み上がるほど、その利用価値は高くなっていきます。プロジェクトをやった結果が資産となります。
 
 そして、現場に合ったミニマル運用とは、やることにムダがないということです。たとえば、MS Project は多機能でいろいろな要求に答えることができますが、現場により暗黙的な決まりごとは数多くあり、その暗黙的な決まりごとに対応することで、必要最小限のシンプルな運用にすることが大切です。次に、それぞれについてもう少し詳しく取り上げます。
 
  
プロジェクトマネジメント
 

4. 現場に合ったミニマル運用

 暗黙的な決まりごとの1つに納期最優先というものがあります。日本でのほとんどのプロジェクトは完了日、または、リリース日は動かすことができないのです。結果的に延期になることはあっても、計画の段階でプロジェクトの終了日が変更されることは稀です。
 
 納期厳守が暗黙的な決まりごとだと、MS Project (MSP) の単位数固定におけるシミュレーション機能はほとんど意味がないのです。進捗によってプロジェクト終了日が変わるのは(遅れるのは)迷惑なだけです。また、計画は「できないことはわかっている」という状態からはじめるのが普通で、誰をプロジェクトに参加させればできるようになるのか、何人追加すればできるのかなどを問われるのです。つまり、スケジューリングとはメンバーやメンバーの負荷を分析することであり、調整することです。メンバーの負荷分析が重要なことがわかるのです。
 
 もうひとつ、ミニマル運用で考えておく必要があるポイントを紹介しておきます。進捗管理にはさまざまな視点が必要です。多様な視点が複眼思考や多面的思考を促し、プロジェクトの状態をより正確に把握することにつながります。
 
 たとえば、ある組織を考えたときでも、組織の中にはいくつかのプロジェクトが存在すると同時に、これとは別に電子制御部、機構部、ソフト部などのように機能グループ(部)が存在するでしょう。プロジェクトはさらに電源ブロック、制御ブロックなどのようにブロックに分かれ、ブロックごとに個人がアサインされます。機能グループ(部)はさらにチーム(課)に分かれ、チームごとに個人がアサインされます。たとえば、ソフト部の下が設計1課、設計2課、設計3課に分かれていて、それぞれに技術者が配属されるのです。進捗はこの構造のどこにおいても見たいという要望が出てきます。プロジェクトごと、ブロックごと、グループ(部)ごと、個人ごとのどの単位でも見たいものです。
 
 次回もこのテーマで解説を続けます。
 

この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

社会や生活を変える「ものづくり」と、そんな製品やサービスを開発する「ひとづくり」を行う組織づくりのために、日科技連石川賞を受賞した仕組み改革の実績や、オリンピック金メダルを生んだコーチング技術を活用した意識改革の実績など、持っているリソー…

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