中国での人材採用

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1. 部門責任者の採用・口だけでなく手を動かしてくれるか

  新しく工場を建設するのに伴い体制強化の支援をしている中国企業で、工場主要部門の責任者を募集し、応募してきた人の採用面接をやる機会がありました。募集するにあたっては人材に求める要件は事前に擦り合せをして決めていました。その求める要件に近い人が応募してきたので、実際に会ってみることになったのです。
 
 面接でその人のすべてを理解する、実力を図るのは正直難しいと思います。まして中国人は、面接で何でもできると言います。それでも少しでもその人の本質に迫れるような質問を事前に考えて本番に臨みました。今回会ったのは品管部長の候補者で、年齢的には30代半ばでした。大学を卒業後、大手日系メーカーの品質部門で約8年勤務。その後規模の小さい日系メーカーで4年勤務。そして現在の勤務先に移っていました。
 
 彼の履歴で疑問に思ったのは、現在の勤務先への転職では給料が下がっていたことです。その理由を尋ねました。
 
 彼が言うには、現在の勤務先はISOの認証機関で、そこで審査員の資格を取ることが転職の目的だったので、給料が下がるのはわかっていたが自分のキャリアアップを優先した。そして資格を取ったので次の転職を考えたとのこと。
 
 このクラスの中国人は給料がすべてではなく、自分の専門領域のスキルを習得することで、自分自身のキャリアアップを図ることを考えているのですね。ですから、こういう人を採用するには、この会社で仕事をすることであなた自身が成長できることを示すことが必要になると考えてください。
 
 話をしていて感じたのは、品質管理畑の仕事をずっとやってきているので、品質管理に関する知識を持っているのはわかりましたが、頭でっかちで自分の手を動かして改善していくことはしないのではないかという懸念を持ちました。審査機関にいたこともその懸念を大きくしました。
 
 この会社の工場は、品管部門が整備されてなく一から作る必要があること。検査員のレベルが低く教育が必要だから、あなたが教育する必要があること。そして、検査に必要な標準書類も不十分なので、当初はそれらを品管部長が作らなければならないこともあることを話して、これらをやってくれますか?と聞きました。
 
 要するに、指示するだけではなく自分自身が手を動かしてやる必要があり大変ですよ。それをやる覚悟がありますかと聞いた訳です。それをやることで、組織の構築や運営管理の能力が付き、さらに大きな組織を任せられるようになるとも伝えました。それに対して彼は、やってもよいと答えてくれました。
  
 人材採用
 

2. 中国人採用面接・履歴書を読み込め

 過去に「中国人採用面接」に関するアンケートを行いました。その結果は次の通りでした。

 【質問:あなたは中国人の採用面接の経験がありますか。その結果はどうでしたか】

 【回答】

 ・面接したことがあり、狙い通りの人を採用できた      52%
 ・面接したことはあるが、はずれ人材を採用してしまった   21%
 ・面接したが、可もなく不可もない人だった         14%
 ・面接したことがない                   14%
 
 この結果を見ると、半数以上の人が狙い通りの人を採用できたと言っています。はずれ人材を採用してしまったという人は21%でした。もっとはずれ人材を採用している割合が多いのではと予想していました。それだけみなさん人を見る目があるか、十分な準備をして面接に臨んでいるのでしょう。すごいです。
 
 中国人採用と面接について、北京の工場で総経理をやっていた知人がメールでコメントを送ってくれましたので、紹介したいと思います。長文でいただいたので、ポイントをまとめました。
 
◆人材を採用する際に考えるべき前提として、日本型のOJTは中国では通用しないということ。日本でそれができるのは、均質な人材の確保ができるからです。中国でできないのは、中国ではよい人材とダメな人材の差が非常に大きいからで、ダメ人材をいくら鍛えてもよくならないということです。
 
◆ですからダメ人材は、ずっとダメ、そう中国では割り切って人材の選択/育成をする必要があります。ダメ人材はそれを採用しないのが一番です。ですので、採用するときが非常に重要になるのです。中途採用の面接でのポイントは、履歴書を読み込むことです。
 
◆中途社員の採用面接に際して、特に留意すべきは、前もって提出された履歴書...

1. 部門責任者の採用・口だけでなく手を動かしてくれるか

  新しく工場を建設するのに伴い体制強化の支援をしている中国企業で、工場主要部門の責任者を募集し、応募してきた人の採用面接をやる機会がありました。募集するにあたっては人材に求める要件は事前に擦り合せをして決めていました。その求める要件に近い人が応募してきたので、実際に会ってみることになったのです。
 
 面接でその人のすべてを理解する、実力を図るのは正直難しいと思います。まして中国人は、面接で何でもできると言います。それでも少しでもその人の本質に迫れるような質問を事前に考えて本番に臨みました。今回会ったのは品管部長の候補者で、年齢的には30代半ばでした。大学を卒業後、大手日系メーカーの品質部門で約8年勤務。その後規模の小さい日系メーカーで4年勤務。そして現在の勤務先に移っていました。
 
 彼の履歴で疑問に思ったのは、現在の勤務先への転職では給料が下がっていたことです。その理由を尋ねました。
 
 彼が言うには、現在の勤務先はISOの認証機関で、そこで審査員の資格を取ることが転職の目的だったので、給料が下がるのはわかっていたが自分のキャリアアップを優先した。そして資格を取ったので次の転職を考えたとのこと。
 
 このクラスの中国人は給料がすべてではなく、自分の専門領域のスキルを習得することで、自分自身のキャリアアップを図ることを考えているのですね。ですから、こういう人を採用するには、この会社で仕事をすることであなた自身が成長できることを示すことが必要になると考えてください。
 
 話をしていて感じたのは、品質管理畑の仕事をずっとやってきているので、品質管理に関する知識を持っているのはわかりましたが、頭でっかちで自分の手を動かして改善していくことはしないのではないかという懸念を持ちました。審査機関にいたこともその懸念を大きくしました。
 
 この会社の工場は、品管部門が整備されてなく一から作る必要があること。検査員のレベルが低く教育が必要だから、あなたが教育する必要があること。そして、検査に必要な標準書類も不十分なので、当初はそれらを品管部長が作らなければならないこともあることを話して、これらをやってくれますか?と聞きました。
 
 要するに、指示するだけではなく自分自身が手を動かしてやる必要があり大変ですよ。それをやる覚悟がありますかと聞いた訳です。それをやることで、組織の構築や運営管理の能力が付き、さらに大きな組織を任せられるようになるとも伝えました。それに対して彼は、やってもよいと答えてくれました。
  
 人材採用
 

2. 中国人採用面接・履歴書を読み込め

 過去に「中国人採用面接」に関するアンケートを行いました。その結果は次の通りでした。

 【質問:あなたは中国人の採用面接の経験がありますか。その結果はどうでしたか】

 【回答】

 ・面接したことがあり、狙い通りの人を採用できた      52%
 ・面接したことはあるが、はずれ人材を採用してしまった   21%
 ・面接したが、可もなく不可もない人だった         14%
 ・面接したことがない                   14%
 
 この結果を見ると、半数以上の人が狙い通りの人を採用できたと言っています。はずれ人材を採用してしまったという人は21%でした。もっとはずれ人材を採用している割合が多いのではと予想していました。それだけみなさん人を見る目があるか、十分な準備をして面接に臨んでいるのでしょう。すごいです。
 
 中国人採用と面接について、北京の工場で総経理をやっていた知人がメールでコメントを送ってくれましたので、紹介したいと思います。長文でいただいたので、ポイントをまとめました。
 
◆人材を採用する際に考えるべき前提として、日本型のOJTは中国では通用しないということ。日本でそれができるのは、均質な人材の確保ができるからです。中国でできないのは、中国ではよい人材とダメな人材の差が非常に大きいからで、ダメ人材をいくら鍛えてもよくならないということです。
 
◆ですからダメ人材は、ずっとダメ、そう中国では割り切って人材の選択/育成をする必要があります。ダメ人材はそれを採用しないのが一番です。ですので、採用するときが非常に重要になるのです。中途採用の面接でのポイントは、履歴書を読み込むことです。
 
◆中途社員の採用面接に際して、特に留意すべきは、前もって提出された履歴書を徹底して読み込むことです。学歴/職歴等の虚偽の申告や、能力の誇張はないかなど、面接で確認すべきところを整理します。
 
◆私の失敗談ですが、取引先を退職した社員を採用した時のこと。彼女の履歴書に日本語が少し出来ると書いていたのを見落としました。「こんにちわ」等2-3語を話すだけなのに、堂々と履歴書に書いて日本企業に応募してきた。大胆というよりも世間知らず。でも、この誇張した能力の確認を怠りました。
 
◆取引先への問い合わせを採用後に回してしまい、取引先の社長からは「弊社がクビにするレベルの社員を採用するとは、あなたの会社を見損なった」とお叱りを受けました。
 
 中国人は少しでも知っていれば、履歴書に出来ると書くのは、よく言われることです。それを見抜くには、面接でしっかりチェックするしかありません。学歴や職歴詐称についても、履歴書をしっかり見て確認すれば、多くは見抜くことが出来るでしょう。ただし、そのためには、しっかり履歴書を読み込むという準備が欠かせません。ダメ人材を採らないためには、こちら側も工数を掛けることが必要だということです。
 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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