生産管理システム導入の基本 (その1) 考え方

 ITという言葉が一般的になった昨今では、多くの企業が業務効率向上の為に社内の様々な業務にシステムを導入しています。適切にシステム化が行われれば、企業にもたらす効果は多大なものとなりますが、逆に適切に行われていない場合は負の資産となり、企業活動そのものを揺がす問題となります。
 小中規模の生産管理システム導入において、それも初めての業務全体を網羅するシステムの導入は自社での経験がなく、プロ(コンサルタントやSIベンダー)に任せることもあるでしょう。しかし、その結果に充分満足できない事が少なからずあるのも事実です。
 今回は、今まで多くの経営者や現場で見聞きした疑問や不満を集約し、それらを解決する手法などを説明します。

1.小中規模の生産管理システムを導入する際の考え方

 最初に確認すべきこととして、生産管理システム導入は企業の目標達成の手段であり、システム自体が目的ではありません。この事を常に頭の片隅に置いてください。

 小中規模の会社の場合、社長の戦略や実行力がイコールその会社の成長となります。システムを導入していない会社がシステム化するメリットとは、会社を継続的に発展させるために、社長は社長の仕事をしてもらう、社長業に専念することです。決まりきった作業、任せられる作業をシステムにさせる、特定の作業を属人化させない仕組みを作る、必要な情報に必要な人が必要な時に手に入れられるようにすることがポイントになります。

1.1 システム化の目的を絞り込む

 生産管理システムを導入するからには、あれもこれもやりたい気持ちは判りますが、最初から欲張ってしまうと、最終的に作られたものが当初の思惑からブレてしまいます。優先順位を決めて、その順番でできるところからシステム化していきましょう。

 優先順位の高いものとは何でしょうか? 

(1)まずは会社である以上、最優先で利益を考える事が重要です。生産で利益の確保のためにも、製品原価の把握は重要となります。経理屋さんの言う原価管理とは少し違いがあるかもしれません。次のような管理は、レベルの違いはあれ実現しなくてはなりません。

   ・外部支払(材料費、外注加工費…)
   ・工場内経費(労務費、間接費…)
   ・固定費(設備等の減価償却…)
   ・製品原価(標準原価、個別原価)

(2)お客様、取引先様(外部利害関係者)との約束を守る

   ・期日を守る

どんなにいい技術があっても納期を守れないようではリピートに繋がりません。

   ・契約(請求、支払)

毎回請求書の金額を間違えているようでは信用されません。

 現場が楽になるのは、これらの後でもよいのです。現場が楽になっても費用は減りません。パートさんとはいえ一日の就業時間は決まっています。8時間の作業が7時間になったとしても、パートさんの時短は簡単にはできません。8人のパートさんを7人に減らせますか。もちろん残業が多い場合は残業が減ることによる残業代を減らす効果はあります。

 最優先すべきは経営からです。

1.2 単純化し標準化する

 生産管理のシステム化前に業務の見直しを行い、単純化と標準化を行いましょう。管理対象を最小にして、システムの管理ポイントを減少し、管理のための管理になってしまわないよう注視が必要です。現場の方が良かれと思ってやっている管理は本当に意味のある事なのか、鳥瞰的に見て再考の必要があります。

 基本を追及し、生産の基本 調達、保管、加工、組立、完成品の各プロセスでインプットしたものを如何にアウトプットするか、そのプロセスをシステムで表現できるようにします。例外的な扱いはシステムの実装を捨てる勇気も必要です。

 経験した例では、年二回実棚をおこなっている会社で、棚卸時の例外処理をどうしてもといわれてお金をかけてカスタマイズしました。しかし、それから3年間使いませんでした。4年目で初めて使う機会がでましたが、だれも使い方を覚えてなかったのです。対応策として、伝票を2,3枚起こすという別の方法で対応しました。なんでもシステムでやるのは非効率なのです。

 電話やFAXも立派な情報伝達手段です。オーダ入力時に営業から工場へいろいろとコメントをしたい時もあり、伝票入力時にコメントや指示内容を入力するようにカスタマイズした結果、伝票が複雑になって、9割以上の通常時のオーダ入力が手間になってしまいました。システム化をしたら関係者同士で直接の会話は不要でしょうか? アナログな人と人とのコミュニケーションは、依然重要です。 

 生産管理システムは、モノづくりの標準化システムです。職人的で属人的な製造では、安定した製品を長期間作り続けることは不可能です。技術を標準化して伝承できるシステムとし、モノの流れと情報の流れを一致させるようにします。

 逐次システムの性能を高めていく、つまり小さく生んで大きく育てるようにします。将来にわたりシステムは業務と一緒に変わり、大きく成長してくものです。第一歩は確実に実績を上げていくことが大切です。

 社内業務の標準化については、誰にでもできる事を社長はやらないで人に任せられる仕組みを作りましょう。例えば社長が請求書を書いている会社がありました。経理担当者に理由を尋ねたところ、社長にしかできないからとの回答でした。社長が価格決定していたのです。これもシステムに入れて、できる人に任せましょう。

 シンプルイズベストです。

1.3 パッケージを有効利用する

 生産管理システム導入に際し、パッケージ利用と独自開発のどちらが良いかという質問を良く受けます。もちろんケースバイケースですが、よほどのことがない限りゼロから独自開発しても、主要機能の8割程度は経験的にどこでも一緒です。生産のプロセスは枝葉を除けば同じ事が多いのです。在庫を1つ払い出せば棚か経験的にら1つ減り、要求と在庫から判断して10個必要なら10個発注します。それらの処理をゼロから作れば、開発を請け負うベンダーを喜ばせるだけです。

 特に小中規模に特化したパッケージは、比較的安価でカスタマイズも容易な物がいくつか出回っています。長年使い続けられ多くの企業の経験を基に成長してきたパッケージの中から、貴社に合ったものをチョイスし有効に使う事がシステム化の近道です。

1.4 自社の強みを活かす点、標準に合わせる点を明確に決める

 生産管理システムパッケージを使うに当たり、カスタマイズをどうするかという問題に必ず当たります。ベンダー側はノーカスタマイズでやるべきだと言い、生産現場はカスタマイズして自分たちがやってきたやり方でないとダメと言うからです。結論から言うと、両方とも間違いです。パッケージの何を変え、何を変えないかは、必ずトップが判断しましょう。その際の判断基準が三点あります。

(1)独自性を追求するモノづくり、自社の技術強みを活かす
(2)管理技術は標準システムに委ねる
(3)お客様の要望は、客観的に検討する

 どこまで標準に合わせ、どこからがカスタマイズする境界線でしょうか。現場から、どうしても現状でないと使えないと言われる事は多々あります。この場合に客観的に判断できる人が必要です。何がダメなのか客観的に判断、分析しましょう。分類方法は、業務プロセスが合っていない場合、入出力が合っていない場合、部門などで閉じた処理、他部門、他社が係る処理で、下図のようなマトリクスを作ります。

生産システム導入の考え方

 このようにA領域とB領域に分けたとき、優先度が高いのはA領域です。実際には境界線をはっきり引けるものではありませんが、簡略化した図でイメージをつかんでください。実際には、処理の頻度や業務の与える影響度などを検討に加えます。部門で閉じた処理はカスタマイズせずに外だしする事も検討しましょう。データをシステムから入手し、表計算で処理を行うのも1つの方法です。

 生産管理システムをどこまでカスタマイズすべきか、これはトップが鳥瞰的な視点で客観的に判断してください。カスタマイズは膨大な予算超過の第一原因です。

 次回のその2では、システム構築における課題を考えます。


この記事の著者

関 龍彦

利益の出る生産管理を提案/実現します。投資効果を考えた貴社の生産の最適解を導き出し,現場の改善と経営戦略を効率的な導入手法で,真に意味のあるシステムを実現します。小中規模の生産管理はお任せください。

30年に渡る経験と実績で現場(ミクロ)の視点/経営(マクロ)の視点,双方のバランスをとり現場の改善提案及び効果的なシステムの提案/導入を行います。「IT投資」という言葉がありますが,コンピュータを購入しただけでは,会計上の費用です。多くの…

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