小さなことでも徹底的に形にしてみる 現場改善:発想の転換(その11)

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げて、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第11回目となります。

 

◆ 小さなことでも徹底的に行動してみる

1. 考えているだけでなく、まず形にしてみる

 形にして初めて分かり、納得することが実に多いものです。知っているからとか、分かっていると思っても、できることとはまったく次元が違います。また聞いただけや見ただけでなく、実際にできることで体験となり、手を使って形をつくることで、体に浸み込むようにしていけば、相手は納得しやすく、しかも忘れにくいものです。

 社内ですぐにできる整理、整頓、そして清掃の5S活動でも、やれることはすぐにやってみるべきです。これで綺麗(きれい)に片付いてスッキリしたことも納得できますが、それはあくまでもあったものを整理して廃棄したり、片付けたりしているものであって、何かを形として作り上げるといったものではないので、達成感はあっても納得感はもう一つかと思います。

 

 形ある物の事例として最近良く効果を上げているのが「生産管理板」です。これは最低今日と明日の生産計画が見えるようにしたもので、付け加えるならば段取り替えがいつ発生するかどうか、またその時間がどれくらいなのかが一目で理解できるようにしたものです。一つのことを徹底して活用し始めて、社員がいつもそれを見て作業を順番通り行うようになれば、仕掛は減り、しかもリードタイムは安定してきます。負荷状況を見えるようにして、段取り替え中、計画停止、故障、メンテ中、生産中などの稼働状況が見えるようになれば、それらに連動して管理監督者の動きに迷いがなくなり、異常が少しずつ減っていくのが分かってきます。

 形をつくり、そこに魂と入れるという言葉がありますが、ルールを作成して毎日その場に関係者が集まり、短時間でも顔を合わせて合意を取り、さらに何か伝え合い、顔と顔を合わせて目配せすることが肝心なのです。さらに「人員配置板」もできると、今日の欠勤者、誰がどの生産現場に配置されているか、応援は誰がいつどこに行けばよいかなどの組み合わせが良く分かるようになり、社員も関心を持って見るようになります。

 また「段取り替え台車」も効果がある形づくりです。これがあると外段取り時間を簡単に3割以上も削減できますので一気に効果が見えます。また内段取り時間の削減に「オカモチ」といって、工具類をお膳のように並べて設備内に持ち込んで、振り向き作業をなくして時間短縮するものを用います。また、この「オカモチ」を設備の上に取り付けて、2軸や3軸のアームに付けて自在に折り曲げることで、簡単に出し入れできるようにした改善も、非常に安価でしかも効果の出る事例です。

 安価で簡単に製作できることが横展開を容易にしています。これらを上手く起爆剤にして活用するのが今回のヒントになります。形として見えるようにし、それを使うことでアイデアがさらに生まれ、アイデアがアイデアを呼ぶようになり、改善の意識が変わっていくのです。

 

2. 職場から部門、フロア、そして工場に横展開していく

 簡単にできるもので、まず一つでよいので自ら手を汚して作り上げることです。それを職場において、本当に活用できるまで検証してみます。1~3週間もすれば良さが分かってくるものです。大切なことは後戻しをしないために3日、3週間、3ケ月というキーワード「3」を意識して、区切りを付けてチームや職場で検証していきます。良く「三日坊主」という例えがありますが、その通りなのです。逆にその「3」の付く期間にビシッと決めると、皆さんの意識も継続していくものです。

 そして社員の意識を変えていくには、多くの人に知ってもらう必要があり、横展開が不可欠です。

 一部の職場だけに留めていても、何が変わったかも分かりませんので、やはり一目で変わったというくらい変化が必要です。その職場でよかったと感じたら、その前後の行程から始めて、その部門さらにフロア全体に広げていけば、変わってきたことが認識できるようになってきます。そして狙った良さも少しずつ社員の間で納得できるようになっていきます。

 1つのことを徹底してやっていくと、例えばレーザーのように一点集中することで突破口が開けてきます。自分の工場でこの中に効果がありそうなものを選んでもらい、その一点を工場全体に展開していくと見た目にも変わるので、意識も変わっていきます。これは既に何度も経験していますので、ぜひ皆さんの工場でも実施してほしいと思います。これらの製作は、いずれもお金を掛けずにできることばかりです。

 

3. やがて改善の加速度がついてくる

 ある程度の横展開が進んできますと、どこからともなく賛成者が現れてくるものです。「実は私もこのようなことをやりたかったが、そのきっかけがなく悶々(もんもん)としていた」という隠れ改善ファンが必ずいるものです。今までの経験ですが、100人に1人はいます。つまり1%の人は潜在的な存在がいるものです。50人の工場なら誰もいない勘定になりますが、逆にその中から該当者を探すことの方が容易だと思います。マイナス思考ではなく、プラス思考でやれば“この指とまれ式”で誰か出て来るものです。その仕掛けやきっかけづくりは、やはりトップの仕事だと考えます。

 世の中の出来事も事例...

があるように、テレビなどの家電製品をはじめ、流行り出した始めの頃は小さな変化であっても、ある程度大きく広がると一気に展開した例は、特に押しボタンのないガラス板の携帯電話(スマホといいますね)がそうです。この数年で一気に広がったのは記憶に新しいことです。

 今度はそのやる気のある人を推進役にして、トップの直轄で工場全体の展開も任せるように仕向けると、改善の横展開も一気に加速度が増してきます。さらに兼任ではなく専任にして、今までの業務は他の人に任せ、市場の環境変化に追従することが重要です。

 でもやるぞと言って社員の前で宣言し行動を起こし、工場内に何らかの変化の起爆剤や組織変更などを実際に行ったという経営者は少ないと思います。これらをやってもお金を掛けることは少ないのでリスクも少ないものです。ただ人材(この場合は人財でしょう)は、先行投資です。専任化をして結果を出し、継続して結果を出し続ける人財の育成を図ってはどうでしょうか。

 

 次回は、現場改善:「発想の転換(その12)調整しないで当てるという発想 」から解説を続けます。

◆関連解説『生産マネジメントとは』

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

 

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